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2025.06.11
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※この記事は、彩明法律事務所 / 二之宮 健治 弁護士が監修しています。
暗号資産や仮想通貨などの登場により、仕組みが複雑かつ巧妙になっている特殊詐欺。近年では、犯行元が身バレを防ぐため、「受け子」と呼ばれる人物を立て、金銭の受け取りを代行させる手口も増えています。この記事では、受け子の意味や特殊詐欺における役割、知らずに関わってしまう典型パターン、怪しい依頼を見抜く方法、そして万が一巻き込まれていた場合の対処法まで詳しく解説します。

電話やSNS、ハガキなどを通じて親族や公共機関の職員等になりすました犯人が、現金や金銭をだまし取る犯罪を総称して「特殊詐欺」と呼びます。代表的なものに「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」「架空料金請求詐欺」などがあげられます。
特殊詐欺の多くは、犯人が複数名でチームを組み、役割を分担して犯行を段階的に進めます。複数名が関わることで、同じ人から繰り返し連絡が来るよりもより被害者を信じ込ませられるというメリットや、犯行を分散させることで足が付きづらくなるというメリットがあります。そのため、犯行にかかわる人を増やすために、「簡単な仕事」と称してアルバイト募集サイトやクラウドソーシングサイトなどに“求人”を掲載し、応募してきた人を犯行に加担させるケースも増えています。
こうした”求人”を通して募集される役割のうち、多くを占めるのが「受け子」と呼ばれる役割です。
受け子とは、特殊詐欺グループの一員として、被害者から現金やキャッシュカードを直接受け取る役割を担う人のことです。依頼内容は単純に見えても、犯罪への関与度は非常に強く、金銭の回収や運搬を通じて詐欺の成立を支える重要な役割を担うこととなります。受け取り後は別の犯人へ荷物を渡す段階に進み、匿名の連絡手段で次の指示を受けることが一般的です。一見「アルバイト」や「配送業務」と装われますが、その実態は詐欺の共犯で、「知らなかった」では済まされません。
受け子とよく似た言葉に「出し子」「かけ子」があります。「受け子」は現金やカードを受け取る係であるのに対し、「出し子」は口座からお金を引き出す係、さらに「かけ子」は電話で被害者をだます係を指します。「出し子」「かけ子」ももちろん犯罪成立の重要な役割となるため、受け子同様にその罪は重いものとなります。

受け子で逮捕された人の中には、知らないうちに受け子として詐欺に加担してしまっていたというケースが多くあります。受け子になってしまう典型的な入り口を知り、知らぬ間に犯罪の共犯になってしまう危険を防ぎましょう。
「日払いで高収入」「簡単作業で月50万円以上」など、現実離れした高額報酬をうたう求人には注意が必要です。こうした仕事の中には、実際には被害者から現金やカードを受け取る“受け子としての求人”が紛れていることがあります。特にSNSやインターネット掲示板、メールで突然届く求人情報は危険度が高く、仕事内容が不明確なまま契約を迫るケースもあります。金銭に困っている人ほど狙われやすく、判断を誤ると詐欺に加担してしまう可能性が高まります。
お金に困っていてもこういう誘いに乗るのは絶対NGだホ!
「荷物を受け取って指定先に届けるだけ」「依頼主の代わりにカードを回収してほしい」といった依頼は、一見普通の仕事に見えるかもしれません。しかしこれらの依頼の中には、“被害者からだまし取った現金やクレジットカードなどを運搬してもらいたい”という裏の意図が含まれる可能性があります。「中身を見てはいけない」「ただ指定された場所に運ぶだけでいい」など、仕事内容があいまいな依頼や、急かされるやり取りは特に危険です。
近年はSNSや匿名チャットアプリを使った受け子の勧誘が増えています。プロフィールを見て「稼げる仕事があります」と突然メッセージを送り、短時間での高額報酬を提示してきます。やり取りは全てオンラインで行われ、電話や対面での確認は避けられる傾向にあるのが特徴です。SNS等のアプリは匿名性が高く証拠も残りにくいため、犯罪に気づいた時には詐欺グループとの関係が深まってしまっていることもあります。見知らぬ相手からの依頼のは即座に断るべきです。

一般的に、受け子として逮捕された際に「犯罪とは知らなかった」と主張しても、刑事罰を免れることは極めて困難です。受け子になってしまった場合のリスクについて解説します。
受け子は、たとえ自身が詐欺グループの全容を認識していなかったとしても、現金や金銭を受け取る行為により、『未必(みひつ)の故意※1』が認められ、詐欺罪や窃盗罪の共同正犯となる可能性が高いです。また、犯行グループが複数人で役割を分担して犯行を行っていた場合は、組織犯罪処罰法の適用がされることもあります。
このように受け子は、詐欺罪等や組織犯罪処罰法などにより処罰される可能性が極めて高く、「知らなかった」で通る話ではありません。
※1 未必の故意…犯罪の結果が生じることを認識し、内心でこの結果を容認している状態を表す言葉。
受け子として逮捕され、裁判で有罪判決を受けると、当たり前ですが前科が付きます。会社によっては、前科が理由となって解雇される可能性もあります。また、前科は履歴書の賞罰欄に記載する必要があり、就職を希望する企業側が賞罰の申告を求めた場合には前科を記載する必要があります。企業側が前科があることに対して否定的に判断することは否めないため、短期間の仕事のつもりでも、今後の人生に影響することを理解しておく必要があります。
実際、「荷物を受け取って渡すだけ」という依頼を受けた学生や主婦が、受け子として逮捕された事例は多々あります。本人は割りのいいバイトのつもりでやっていただけなのに、仕事内容が受け子だったために、警察に逮捕され拘留、裁判になることもあります。おいしいバイトだと思って何度も続け、多額の報酬を受けとっていたりすると、これまでに犯罪行為をしたことがなくても執行猶予がつかず、いきなり実刑判決を受ける可能性もあります。
1回くらい…という軽い気持ちが、その後の人生を棒に振ることもあるホ

受け子への加担を防ぐには、怪しい依頼を早い段階で見抜くことが大切です。ここでは具体的な回避ポイントを紹介します。
仕事内容がはっきりせず、「とにかく簡単」や「すぐ稼げる」とだけ説明される案件は危険です。多くの場合、受け子など詐欺に加担させられる危険性や、詐欺でなくても違法な行為にまき込まれる可能性が高いでしょう。取引相手が依頼内容や取引の流れを正確に説明しない場合は、どんなに魅力的な内容であっても決して関与しないようにするのが安心です。
現金やキャッシュカードを直接受け渡しする仕事は、ほぼ確実に詐欺や金銭犯罪に関係するものだといえます。客観的に見て自分だったら、自分の現金やキャッシュカード・クレジットカードを他人に渡すことは不安ではないですか?たとえ、知人からの依頼であっても必ず断るべきでしょう。
副業やアルバイトの仕事を始める際、身分証や銀行口座の情報を渡すことは少なくありません。しかし、だからといって誰にでもすぐ渡してよいとは限りません。身分証や銀行口座を渡すことで、知らぬ間に自分が犯人に仕立て上げられたり、口座を不正利用される可能性があるため、正当な理由なく情報提供を求められたら、犯罪に加担するリスクを防ぐためにも即座に拒否しましょう。
情報共有前に使用用途を確認するのがおすすめだホ!
「今すぐやらないと損をする」「断れば迷惑をかける」など、急がせたり脅すような依頼は詐欺の典型です。冷静な判断を封じる手口であり、そのまま受け子として利用される危険があります。少しでも不安を感じたら迷わず断りましょう。
「これって大丈夫だよね…?」「これ、もしかして詐欺への第一歩だったりする…?」と少しでも迷ったときは、家族や友人、警察、弁護士など第三者に相談しましょう。外部の視点から冷静に判断することで、受け子になるリスクを防げます。特に金銭や個人情報が絡む仕事は、独断で決めず必ず相談を経てから行動することが大切です。

自分は大丈夫だと思っていても、知らぬ間に受け子として加担してしまう可能性もあります。もし受け子になっていたことに気づいた場合、バレるのを恐れて放置するとさらに状況は悪化します。受け子になっていたことに気づいた場合の対処法を紹介します。
受け子としての依頼に気づいたら、ただちに仕事を辞めて警察などの捜査機関に相談しましょう。続けてしまうと、詐欺グループとの関係が深まり、加担の度合いが大きくなり心理的にも抜けにくくなります。
また、警察等への相談の際は、依頼の内容ややり取りの記録、振込明細、荷物や現金の写真などの証拠を持参するようにしましょう。犯罪の可能性に気づいた時点で警察に相談することで「犯罪とは知らなかった」という主張の根拠になります。

受け子は特殊詐欺の重要な実行役であり、「知らなかった」という理由では処罰を免れられません。逮捕・勾留、拘禁刑といった法的リスクに加え、前科による社会的信用を失うなど、人生への影響は計り知れないものがあります。本記事で紹介した典型的なケースや回避法、対処法を日常的に意識することで、自分だけでなく家族や周囲の人をも守ることができます。怪しい依頼は断り、迷ったら必ず第三者に相談しましょう。
1.弁護士法人プロテクトスタンス / 五十部 紀英 弁護士(東京都千代田区)
2.工藤啓介法律事務所 / 工藤 啓介 弁護士(埼玉県さいたま市)
3.はびきの未来法律事務所 / 安田 弘光 弁護士(大阪府羽曳野市)
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