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2025.06.11
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【 目次 】
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配偶者との離婚を決めたとき、多くの場合で争点になるのが「親権」です。父親も母親も親権を主張した場合は、どちらが親権を得るかという新たな問題に発展することも多く、親権は多くの人を悩ませる大きな課題でした。
しかし、こうした親権トラブルを解決するために、2024年に「共同親権」という新たなルールが採用されました。共同親権を導入することで、離婚時の親権トラブルが緩和されることが期待されていますが、共同親権とは具体的にどのような制度なのでしょうか。
本記事では、共同親権の概要やメリット・デメリットを解説するほか、記事の最後には「離婚問題に注力している弁護士」を紹介しています。離婚を考えている方、離婚に関するお悩みを抱えている方はぜひ最後までご覧ください。
共同親権とは、離婚後も父母の両方が引き続き「親権」を持ち続けることを認める制度です。共同親権が導入されることで、両親が協力して子どもの人生に関わり続けることが可能になるため、両親同士の負担が分散されたり、子どもの気苦労・負担が軽減されることが期待されています。
日本では2024年に共同親権の導入が決まりましたが、実は、欧米諸国ではすでに取り入れられている一般的な親権制度です。国際結婚が珍しくない時代になっているにもかかわらず、国同士で異なる親権制度が採用されているせいで、時には国を超えた親権争いに発展してしまうこともあり、2020年7月には欧州議会本会議からも日本政府に対し、共同親権を導入するよう求められていました。
共同親権の制度は、2024年5月に成立した民法改正により、2026年頃の施行が予定されています。新制度では、離婚時に父母の合意がある場合、または家庭裁判所の判断によって、共同親権を選択できるようになります。
なお、現行制度でも未成年の子がいる夫婦が離婚する場合には、協議離婚であっても親権者を一方に決める必要がありましたが、今後は親権者を「両方」とする選択肢も加わります。
これまでの日本では、離婚時はどちらか一方の親のみが親権を持つ「単独親権」が原則とされてきました。そもそも「親権」とは、子どもの監護・教育・財産管理などを行う法的権限のことを指し、これらの権利がどちらか一方の親に偏っていることで、以下のようなトラブルにも発展してしまうことが問題視されていました。
・親権を持たない親が子どもと面会できない「断絶問題」
・父母の一方が他方に無断で子どもを連れ去る「連れ去り問題」
・親権を持っていないという責任感の薄さによる「養育費の未払い」
また、実は国際的な観点で見ると共同親権のほうが主流です。国際結婚した夫婦が離婚した際に、親権制度が各国で異なることにより、どちらの制度を採用すべきかという議論も度々発生していました。
こうした議論を受け、国連子どもの権利委員会が日本に対して単独親権制度の見直しを求めたこともあり、「子どもにとっての最善の利益を実現するため」として、共同親権制度が導入される運びとなりました。
共同親権は、あくまでも “子どもの幸せのため” の制度なんだホ!
共同親権制度のもとで再婚した場合、親権そのものは実の父母に維持されます。つまり、再婚相手に自動的に親権が移るというわけではありません。ただし、再婚相手との間に子どもが生まれたり、養子縁組をしたりした場合は、別途その子どもに関する親権の扱いが発生します。
なお、再婚後に「共同親権が不適切」と判断された場合は、家庭裁判所を通じて親権の変更(単独親権への切り替え)を申し立てることも可能です。
単独親権から共同親権に切り替わった場合、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。共同親権は、子どもの利益や幸せを最優先に考えるための新たな制度ですが、もちろん離婚した夫婦それぞれにとってもメリットがたくさんあります。
まず1つ目のメリットは、親権争いがなくなることです。単独親権では、離婚時にどちらの親が親権を取るかを決める必要があるため、もし両方の親が親権を主張した場合、どちらの親が親権を獲得するかで揉めるケースが多々ありました。親権争いが話し合いで解決することもあれば、どちらかの親が子どもを無言で連れ去ってしまう場合もあり、親権を決めることによるトラブルが発生しやすい状況でした。
しかし、共同親権制度では両親がともに親権を持つため、このような離婚時の親権争いがなくなることが期待されています。
また、これまでは父親が親権を獲得するのは難しいとされてきましたが、共同親権であれば父親も親権を得られるため、子どもとの関係を継続的に保ちやすく、親としての権利や義務をより積極的に果たせるようになります。
これまでは基本的に母親が親権を持つことが多かったんだホ!
共同親権制度では、親権者である両親が子どもと生活・教育の責任を共有するため、離婚後も面会交流を活発に行いやすくなります。単独親権制度のもとでは、親権を持たない親が子どもに会うのはハードルが高く、なかなか面会交流の主張がしづらいという課題がありました。しかし、共同親権の元では両親が共に親権を持つため面会交流がしやすくなり、子どもは両親双方の愛情・サポートを受けて育つことが可能になると期待されています。
共同親権になっても、事情によっては面会拒否は可能です。基本的に面会は、一方的に拒否できるわけではなく、通常は親権者同士で話し合いをして、子どもにとって最良の環境を整えることが求められます。ただし、DVや虐待のリスクがある場合は、面会交流の制限や調整が家庭裁判所で決定されるケースもあります。
共同親権では、親権者が双方になるため、子どもの教育や生活にかかる費用の負担も分散しやすくなります。これまでは、親権を持っていないために親としての責任感が薄れてしまい、養育費などの支払いが滞ることが多くトラブルの種になっていました。
しかし共同親権のもとでは、両親が共に親権を持ち続けるため、協力して養育費を分担したり、生活面での責任を共有できるため、子どもにとって安定した環境が作りやすくなることが期待されています。
共同親権になっても養育費の支払い義務は変わりません。養育費の支払いは親に一律で課せられている義務なので、親権を持ってる・持っていないを問わず発生しています。
子どもの生活を維持しやすくすることなどを理由に導入されている共同親権ですが、もちろんメリットばかりではなくデメリットもあります。
共同親権制度は両親が引き続き親権を持つため、離婚後も元配偶者との関わりが密になる可能性があります。特に、DV(家庭内暴力)や虐待があった上での離婚の場合、離婚しても、DVをふるっていた元配偶者との関係が完全に断たれるわけではないという点で、被害者である親や子どもが心理的・物理的に不安を感じることもあるでしょう。
DVや虐待などがあった場合は、家庭裁判所に申し立てて親権の単独化や面会交流の制限を求めることも可能ですが、制度上は両親の関与が継続されてしまう点はデメリットとなり得ます。
共同親権の下では、父母双方が子どもの監護や教育に関わりますが、意見の対立が起こりやすい側面もあります。例えば、進学先の選択、生活環境の変更、医療行為の判断など、重要な決定について両親の意見が合わない場合、子どもに心理的負担がかかる恐れがあります。また、子どもにとっては、普段同居していない親から自身の進路などに突然口出しされることを面倒に感じる場合もあるでしょう。
このようなケースでは、家庭裁判所の調停や審判によって解決を図ることになりますが、離婚しても親同士の対立が継続してしまう場合は、子どもに悪影響を及ぼす可能性があります。
子どもの幸せを最優先に、がキーワードだホ
共同親権はまだ日本では新しい制度ですが、子どもの福祉や両親の権利のバランスを取るための大きな一歩となるでしょう。メリットも多い一方で、リスクや問題点もあるため、双方が子どもの利益を最優先に話し合いを進めることが不可欠です。
共同親権が目指すのは、離婚後も父母双方が親として責任を持ち、子どもの成長に寄り添える環境を作ることです。困ったときは弁護士に相談したり、公的・法的なサポートを受けたりしながら、より良い解決を目指しましょう。
https://bengoshi-net.jp/lawyer/629/
★この記事の監修も担当!
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