1
2024.12.06
Contents
Lawyers Column
2024.12.16
海外旅行前にチェック
【 目次 】
Index
長期休みや修学旅行などで海外に行かれる場合に注意いただきたいのが、医薬品の持出しと持込みです。飛行機の持込みにルールがあったり、渡航先によっては医師の診断書が必要な場合や数量制限や使用が禁止されていたりすることがあります。せっかくの海外を存分に楽しむためにも、どのような準備が必要か確認しておきましょう。
特に、飛行機内への持込みは問題なくても、渡航先での持込みが禁止されているケースもあります。所持したままでいると最悪の場合、懲役刑に課せられてしまうこともあるので、事前に渡航先の情報を確認しておくとよいでしょう。
今回は、市販薬と処方箋医薬品の飛行機内持込みと入出国前に必要な手続きについて紹介します。
「手元に薬が無いと心配」「調子に合わせて飲む薬だから持っていたい」と思われる方もいらっしゃるかと思います。飛行機内への持ち込みとお預け手荷物での注意点を確認してみましょう。
機内持込みとお預け手荷物のいずれも注意が必要なものとしては「引火性液体・高圧ガス(スプレー缶)」と「液体(目薬・点鼻薬など)」の2点です。
特に注意が必要なものは危険物として考えられる「引火性液体・高圧ガス(スプレー缶)」です。令和3年に国土交通省が作成した「機内持込み・お預け手荷物」における危険物の代表例に「消炎鎮痛剤、虫刺され・痒み止め薬、殺菌・消毒剤」が記載されています。ガスが充填されたスプレーの場合は、誤噴射の際に中身が漏れるのを防ぐためキャップ又は適切な方法で保護するようにと記載があるので注意してください。また「液体(目薬・点鼻薬など)」に関しては、医薬品の液体物としての量的制限適応外となるようですが、検査員に「医薬品」として申し出る必要があります。
「粉薬」に関しても注意が必要となります。出荷時から小分けされており、外観から名称が分かるものであれば特段注意する必要はありませんが、病院や薬局で透明のビニールに分包されているものは注意が必要です。錠剤に変更してもらう必要はないかと思いますが、薬剤情報提供書等と一緒にしておくことをオススメします。
また、航空会社によりますが「国内線・国際線」で必要な対応が異なる場合があります。国内線の場合は1容器0.5kgまたは0.5L以下のものを、1人あたり2kgまたは2Lまでと量の制限があります。国際線の場合には100ml以下の容器に入れて、縦横の合計が40cm以内の透明な袋(ジップロック等)に入れることで機内持ち込み可能となります。すべての液体物を1つの袋にまとめて入れるようにしましょう。
飛行機で移動するにあたって注意したい2点について紹介します。
1つ目は「小分けにしない」ことです。簡単に服用できるようにピルケースに入れたり、持ち運ぶために別容器に分けたりしないようにしてください。そのため、ドラッグストアや薬局で受け取った状態のまま保管・使用するようにしてください。現地についてからピルケースに分けるのであれば問題ありませんが、万が一に備え、薬剤情報提供書等は携帯するようにしてください。
2つ目は「医薬品情報が分かるものを一緒に」しておくようにしましょう。海外の場合は「日本語・英語」の2部用意すると安心です。お薬手帳や薬品のラベル、処方箋の写しや医師の診断書等が必要となることがあります。国内線・国際線で異なることもあるので、事前に利用予定の航空会社と渡航先の情報を確認しておきましょう。
例えば米国(アメリカ合衆国)の場合、規制されている医薬品に関しては「処方時の元の容器に入っていること」「容器に薬剤名または科学名と記載物質分類記号が記載されていること。記載がない場合は当該物質を処方した薬局または医師の名前・住所および処方せん番号が記載されていること」「英語で記載された、または、翻訳者署名のある英訳を付した処方箋または診断書を携行すること」とされていますので、注意してください。各渡航先の情報は厚生労働省HPの「海外渡航先への医薬品の携帯による持ち込み・持ち出しの手続きについて」にPDFとしてまとまっていますので一度確認してみてください。
処方箋医薬品以外にも、市販の風邪薬や目薬等を普段から使用されている方もいらっしゃるかと思います。ご自身で使用する量の市販薬に関しては事前申請の必要はありませんが、処方箋医薬品と同様の対応が必要となります。ピルケースへの小分けはしないようにしましょう。購入時の外箱に保管するか、説明書と一緒に携帯することをオススメします。
市販薬の場合「第1類~第3類医薬品」のいずれかがパッケージに明記されているものが「医薬品」です。それ以外は「医薬部外品」や「化粧品」等に分類されるので注意してください。
出入国の際に事前の手続きが必要になる医薬品があることをご存じでしょうか?医師に処方され、日常的に使用している医薬品でも例外ではありません。「麻薬」「覚醒剤原料」「向精神薬」に分類される医薬品の場合は事前に手続きが必要となる場合があります。
「麻薬・覚醒剤原料」に関しては量や剤形によらず、許可が必要となります。「向精神薬」は総合量が一定数以上の場合や注射剤の場合は書類の携帯が必要となります。それぞれに必要な書類や提出期限は次の通りです。
「麻薬」「覚醒剤原料」に分類される医薬品の場合は事前に「地方厚生(支)局長」の許可が必要となります。許可書の発行に手数料はかかりませんが、準備にかかる費用は自己負担となりますので注意してください。
治療目的で医療用麻薬を使用している患者さんでも事前に地方厚生局長の許可を受ける必要があります。申請に必要となるものは全部で5つあります。
①携帯輸入許可申請書(日本に入国する場合)
②携帯輸出許可申請書(日本から出国する場合)
※『麻薬』『覚醒剤原料』はそれぞれ異なる法律で規制されます。そのため、申請書の様式が異なり、まとめて記載できないので注意しましょう。
③医師の診断書(日本語または英語)
→必要な項目は『患者の住所・氏名、必要とする理由、処方内容』
※『麻薬』と『覚醒剤原料』のどちらも携行する場合、診断書は『まとめて1枚』で構いません。
④携帯する麻薬・覚醒剤原料の品名が確認できる書類
→お薬手帳、薬剤情報提供書のコピー等
⑤宛先を明記した返信用封筒(※直接受け取る場合は不要)
→長3用以上の封筒(A4サイズを同封できるもの)
提出先は日本在住かそれ以外かで分かれますので注意しましょう。日本在住の場合は申請者の住所地を管轄する地方厚生(支)局麻薬取締部が提出先となり、海外在住の場合は入国予定の空港等を管轄する地方厚生(支)局麻薬取締部が提出先となります。
提出期限は出国日または入国日の「2週間前」までとなっています。医師の診断書の準備に時間が掛かる場合や申請書の記載漏れでスムーズに進まない可能性もあります。ゆとりをもって準備するようにしましょう。時間に余裕がない場合は直接電話等で相談してください。
書類に不備がなく、許可された場合には「麻薬(覚醒剤原料)携帯輸出(輸入)許可書」および「麻薬(覚醒剤原料)携帯輸出(輸入)許可証明書」が各1部ずつ交付されます。税関で提示するようにしてください。
「麻薬・覚醒剤原料」よりはハードルが下がりますが向精神薬にも書類の携帯が必要となるケースがあります。一定量以上場合や注射剤の場合は注意が必要となります。『処方箋の写し』や『医師の診断書』などの書類の携帯が必要となるケースがあります。また、入国時には『輸入確認証』が必要となる可能性もあるのでチェックしてみてください。
出国時に関しては『総合量が基準以上』『注射剤』の向精神薬を携帯する場合は『書類の所持』が必要となります。向精神薬の種類によって基準量が異なっています。基準量は関東信越厚生局HPの『医療用向精神薬を携帯して出入国する際の総量一覧表』に記載がありますので確認してみてください。
入国時は出国時にプラスして「輸入確認証」が必要な場合があるので注意してください。「輸入確認証」と「書類の所持」が必要なケースとしては「総合量が基準以上で用法・用量から1か月分以上」「注射剤」の向精神薬を携帯する場合となります。「総合量が基準以上(1か月未満)」の場合は出国時と同様に「書類の所持」のみとなります。「輸入確認証」についても関東信越厚生局HPの「医薬品等の輸入手続きについて」に説明書きとワードの原本が掲載されています。紙媒体にて申請する場合は到着後3~4営業日で発行され郵送されます。
また、「医薬品等輸入確認情報システム」でも申請が可能となっており2~3営業日で発行され、郵送等にて書類が配送されるのでゆとりをもって申請するようにしてください。
今回は、市販薬と処方箋医薬品の飛行機内持ち込みと入出国前に必要な手続きについて紹介しました。飛行機内に持ち込めても、渡航先で禁止されている医薬品の可能性もあります。また、ピルケースに小分けにしたり、説明書を捨ててしまったりする方もいらっしゃるかと思います。海外に行く予定がある場合は薬の種類を問わず「日本語・英語の薬剤情報提供書」を準備してもらうようにしてください。
最後に海外旅行の際の注意点をまとめます。
①どのような医薬品を服用しているのか、なぜ服用しているのか説明できる書類を準備
②できるだけ本来の容器、包装のまま携帯
③旅行日程に見合う量以上は準備しない
④使用する本人が持込む
⑤渡航先のルールを事前に確認して申請、薬の変更を検討
外国へ行く予定が決まった段階で早めに主治医・薬局に確認するようにしましょう。
Category記事カテゴリー
Ranking人気の記事
About
ふくろう情報局とは?
⽇常⽣活や仕事で直⾯しがちなトラブルの解決⽅法や対策を、弁護⼠ねっとのマスコットキャラクターであるふくろうとともに楽しく学べるコンテンツ。法律に詳しくない⼈も理解できる記事づくりを⽬指しています。その他にも、掲載弁護⼠へのインタビュー記事なども随時更新!弁護⼠選びの参考にしてみてください。
どんどん更新していくよ!