Lawyers Column

2025.04.30

モラハラで離婚したい…難しい状況を乗り越えるための準備と手続き

モラハラ悩んでない?

モラハラ(モラルハラスメント)による精神的苦痛や孤立、経済的依存など、離婚を決断するまでの道のりはとても困難です。しかし、正しい準備と手続きで未来を切り拓くことは可能です。

この記事では、モラハラ離婚が「難しい」と言われる理由から、証拠の収集、経済的・安全面での準備、そして協議離婚、調停離婚、裁判離婚といった各手続きの流れまで、具体的なポイントを解説します。
これから一歩踏み出すあなたが、安心して離婚に向けた準備を進められるよう、役立つ情報をお届けします。

モラハラ離婚が難しいと言われる理由

モラハラ離婚が難しいのは、精神的な支配や言葉の暴力を立証するのが困難だからと言われています。まずはモラハラがどんなものかを確認し、離婚までの第一歩を踏み出してみましょう。

どんなことがモラハラに当てはまるのか?

モラハラとは、肉体的暴力は伴わなくても、言葉や態度による精神的な虐待を指します。以下の行動は代表的なモラハラの例です。

日常的な侮辱や無視
相手の人格を否定する発言や、存在価値を否定するような言葉を繰り返し浴びせる

●過剰な批判や責任転嫁
些細なミスさえ大げさに非難し、常に自分の非を認めさせない態度を取る

相手の孤立を促す行動
家族や友人との交流を制限し、被害者を孤立させることで依存状態を作り出す

さらに、以下の【モラハラチェックリスト】を活用して、現在の状況がどの程度モラハラに該当するかを自己診断してみてください。

【モラハラチェックリスト】

✅相手から頻繁に「ダメな人間だ」と侮辱される
✅何か問題が起こるたびに、過剰な批判や非難を受ける
✅自分の意見や感情が一方的に否定される
✅友人や家族との連絡を制限され、孤立を強いられている
✅些細なミスを大げさに取り上げられる
✅自己評価が著しく下がり、何かと自分を責めるようになる
✅生活や意思決定において、相手の指示や命令が絶えない

このリストにいくつ当てはまるかを確認し、もし多くの項目に該当する場合、モラハラ被害の可能性が高いと言えます。

心当たりない…?

離婚に向かっていくためのポイント

モラハラによる被害は、被害者自身の自己評価を下げ、離婚に踏み切る決断を難しくします。加害者は「お前なしでは生きられない」と依存を煽ったり、離婚に反対する言動をとるため、実際に一歩を踏み出すのは非常に困難です。

モラハラからの離婚を検討している場合は、以下のようなアクションから始めてみましょう。

別居をして現在の状況を冷静にみてみる

モラハラによる長期間の精神的圧迫により、自己肯定感が著しく低下し「すべて自分に非がある」と思いこんでしまったり、孤立を強く感じたりします。その結果、「自分のせいだから」「ここで離婚したら一生ひとりぼっちだ…」と考えてしまい、離婚に踏み切れないケースが多く見られます。

この場合、離婚とまではいかずとも、思い切って別居をするなど相手から離れる方法をとることで、これからの生活や現在の自分の状況を冷静に見られるようになるでしょう。

専門家・支援機関への相談

モラハラに悩んでいる場合は、カウンセラー弁護士DV被害者支援団体に相談するという方法もあります。専門家や支援機関へ相談することで、状況を客観視できるようになったり、具体的な行動計画を得られたりするので一度相談してみるとよいでしょう。

【要注意!】加害者の操作と抵抗

モラハラが起きている場合、離婚を切り出したことで、加害者は懐柔策脅迫で話し合いを阻もうとすることがあります。話し合いにならないことで、被害者はさらに大きなストレスを受けてしまうこともあるでしょう。

モラハラ離婚について、被害者が一人で行動するのにはリスクが伴うため、なるべく自分一人で考え込まずに早めに弁護士などの専門家への相談を検討しましょう。

ぜひ周りを頼ってほしいホ!

モラハラを理由に離婚するための準備

確実に離婚に向けて進めていくために下記の3つを準備していきましょう。

1.出来る限り証拠を集める

離婚において、特にモラハラを理由とする場合は、客観的な証拠が重要な役割を果たします。以下のような証拠を用意しておくと、モラハラ離婚をスムーズに進める手助けとなるでしょう。

●日記やメモの記録
いつ、どこで、どのような発言や行動があったのか、詳細に記録しましょう。日時場所具体的な内容できるだけ正確に書くことがポイントです。

●デジタルデータの保存
LINE
メールSNSでのやり取り録音・録画データは有力な証拠となります。また、データが紛失・意図的に削除されないように、バックアップも取っておくと安心です。

医師の診断書
精神的ダメージを受けた証として医師の診断書を取得しておくと、調停や裁判での説得力が高まります。

「離婚が妥当だ」と周囲にも思わせる必要があるんだホ…

2.経済的な準備

一刻も早く離婚を進めたい気持ちもわかりますが、離婚を進めると同時に、離婚後の生活を見据えた準備をしておくことも重要です。とくに専業主婦の方などは、経済的な自立といった面での準備がどれくらいできているのか把握しておきましょう。

●自分の収入源の確認
離婚後の生活費をどのように賄うか、現在の収入や貯蓄、就労状況を見直し計画を立てましょう。

●配偶者の資産把握
相手の収入や資産状況を把握することで、財産分与や養育費交渉の際の重要な材料となります。

●再就職やスキルアップ
必要に応じて、再就職支援スキルアップのための講座、セミナーなどに参加し経済的自立に向けた準備を進めましょう。

生活資金の確保は入念に!

3.安全を確保するための準備

モラハラでの離婚で多くの方が懸念されるのがこの安全の確保です。モラハラ加害者は、離婚の話が出ると態度が急変する恐れがあるため、安全面での対策は極めて重要です。

●避難先の確保
自宅に帰れない場合など、緊急時に身を寄せられる親族や友人などの協力を得ておくと安心です。もし身近に頼れる先がない場合は、市町村役場に相談して、連携しているシェルターに避難できるようにしてもらうことも考えられます。

緊急連絡先の整理
DV被害者支援団体
警察弁護士など、信頼できる相談先の連絡先をまとめ、いつでも連絡できる状態にしておくことが大切です。

デジタルセキュリティ対策
SNSやメールのパスワードを変更する、位置情報の共有を制限するなど、情報面での安全対策も怠らないようにしましょう。

モラハラ離婚の進め方

モラハラ離婚に限らず、離婚をする際は主に以下の3つの方法で手続きをすすめることが一般的です。

・協議離婚
・調停離婚
・裁判離婚

それぞれ詳しくみていきましょう。

協議離婚

協議離婚は、夫婦間で直接話し合い、全ての条件に合意して離婚届を提出する方法です。

概要
離婚に関する全ての事項(親権、養育費、財産分与、慰謝料など)を夫婦が話し合いで決定し、合意の上で手続きを進めます。

●メリット
・手続きが迅速
・費用が少なく済むことが多い

デメリット
モラハラの場合、加害者が話し合いを拒否したり、不利な条件を押し付けようとする可能性が高く、公平な合意形成が難しいケースも。

●進める際のポイント
合意内容は必ず文書に残し、弁護士などの専門家のサポートを受けながら進めることで、のちのちのトラブルを防ぐことにもつながります。

調停離婚

調停離婚は、家庭裁判所の調停委員などが間に入り、夫婦の合意形成をサポートする方法です。

●基本の流れ
家庭裁判所に調停申立てを行い、調停委員などの仲介のもとで話し合いを進めます。

●メリット
・直接対決を避けられる
・第三者の中立的な立場から話し合いが行われるため、モラハラの影響を受けにくい環境で合意形成が図られる

●デメリット
調停が成立しない場合は、最終的に裁判に移行する可能性があり、時間や労力がかかる点に注意が必要です。

●進めるポイント
十分な証拠と双方の主張を整理した上で、調停委員などに正確に状況を伝えることが合意形成への鍵です。

裁判離婚

裁判離婚は、調停が不成立の場合に家庭裁判所に訴訟を提起し、審理を経て離婚を成立させる方法です。

●概要
裁判離婚が認められるための裁判離婚原因は、法律上限定されているため、実際は裁判離婚を行うことは難しいものの、その上でモラハラが「婚姻を継続しがたい重大な事由」と認められれば裁判離婚が可能です。

●必要な準備
モラハラの詳細な記録、専門家の意見書、医療機関の診断書など、強固な証拠の提出が不可欠です。

●デメリット
裁判は長期化しやすく、費用や精神的な負担が大きいため、弁護士など専門家のサポートを得ることが推奨されます

●進めるポイント
弁護士と連携し、子どもの福祉を最優先に守るとともに、適正な親権や養育費の確保を目指す戦略を立てましょう。

離婚後の生活とサポート

晴れて離婚が成立した場合、新しい生活を軌道に乗せるための経済的・精神的な支えが必要となりますよね。どのような動きが必要になるかみていきましょう。

離婚後の生活設計

離婚成立後は、新たな生活基盤の確立が急務となります。

●住まいの確保
まずは、安全で安心できる新居を手配しましょう。
親族や友人の協力を得たり、公的支援などを活用するとよりスムーズに手配することができます。

●経済的な見直し
養育費、生活費、教育費などを計算し、収支管理を行い、これからの生活に向けた財政計画を立てましょう。

●再就職やスキルアップ
経済的に自立するためには、専業主婦の方であれば再就職先を探す必要があるでしょう。また、よりよい仕事に就くためのスキルアップを行ったり、就労支援や職業訓練を受けたりして、これからの生活がより豊かになるような準備も行ってみてはいかがでしょうか。

再スタート!明るい未来が待ってるホ!

子どもがいる場合のケア

もしお子さんがいらっしゃる場合、子どものケアも重要です。「離婚」という出来事は子どもにとって大きな影響を与えることが多く、子どもの心身のケアや安定した生活環境の確保も行いましょう。

●親権の確保
子どもの最善の利益を考えて親権を取得するよう努め、安定した生活を維持できるようにします。

●心理的サポート
カウンセリング学校、地域の支援プログラムを活用して、子どもの情緒面でのケアを行います。

●養育費・教育費の計画
将来的な費用を見据えた財政計画を立て、必要な支出の確保や調整を進めます。

サポート機関を活用する

離婚やモラハラ問題に直面した際は、一人で悩まず、各種支援機関のサポートを積極的に利用しましょう。

●公的支援
女性相談センター、DV被害者支援団体、法テラスなど、無料相談窓口を利用し、専門家のアドバイスを受けることが有効です。

●地域コミュニティ
同じ経験を持つ人々との情報交換や、地域の支援グループに参加することで、精神的な支えを得られます。

●専門家の連携
弁護士、カウンセラー、社会福祉士など、各分野の専門家と連携しながら、手続きや生活設計を進めると安心です。

まとめ

モラハラ離婚は、証拠の不足、加害者の抵抗、経済的依存、そして孤立感など、さまざまな困難が伴います。しかし、具体的な証拠収集、経済面や安全面での準備、そして協議・調停・裁判といった各手続きの正しい知識を持つことで、離婚に踏み切るための大きな一歩を踏み出せます。

自分の状況を改めて確認し、必要であれば弁護士や支援団体に相談してください。あなたが安全で自立した新たな生活を築き、子どもたちにも安心した環境を提供できる未来は必ず訪れます。一人で抱え込まず、信頼できるサポートを得ながら、冷静に自分の権利と未来を守るための準備を進めましょう。

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Writer

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あみま

フルタイムで働きながらライター業もしています。ライフスタイル全般についてブログも更新中です!
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エヌティーエス総合弁護士法人札幌事務所

寺林 智栄

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