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2025.06.11
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※この記事は、彩明法律事務所 / 二之宮 健治 弁護士が監修しています。
職場のパワハラが原因でうつ病に…。そこで気になるのがパワハラが労災の対象になるのかどうか。実は、パワハラによるうつ病は、一定の条件を満たせば労災認定を受けられる可能性があります。
しかし、認定を受けるには認定の基準を理解したうえで、パワハラの証拠や診断書を揃えるなどの準備が欠かせません。この記事では、パワハラによるうつ病で労災認定を受けるための条件、休職中に利用できる補償、慰謝料の相場、そして認定を受けるための5つのステップをわかりやすく解説していきます。

厚生労働省が示す考え方や判断基準をもとに、パワハラをはじめとする「業務上のストレス」がどのように評価されるのか、具体的に見ていきましょう。
パワハラは、上司や同僚などが優越的立場を利用し、業務上必要かつ相当な範囲を超えた、労働者に精神的苦痛を与える又は就業環境を害する行為をいいます。こうした行為は職場における「業務上のストレス要因」として扱われ、精神的障害の労災認定における重要な判断材料になります。企業には、これを防止・是正する労務上の義務も課されています。
上司からの継続的な暴言、過度な叱責、孤立を強いられるなどの行為により、強い心理的ストレスが発生し、うつ病を発症した場合を想定しましょう。このとき、医師の診断書でうつ病を発症した原因が業務にあるとされ、メール・録音・日報などを通した実際のパワハラの証拠もある場合、業務との因果関係が認められやすくなります。他にも、同僚の証言や社内相談窓口への記録があれば裏付け資料となり、労災認定の可能性を高めます。
うつ病との因果関係を立証できるかどうかが鍵だホ!
客観的な証拠や第三者の証言があり、パワハラの発生状況が明確なケースは認定されやすいといえます。その一方で、証拠が不十分な場合は認定が難しくなる可能性があります。また、職場の組織体制や上司の対応の有無も、労働基準監督署の判断に影響を与える要素となります。

パワハラによるうつ病で労災認定を受けるには、一定の要件を満たす必要があります。ここでは、厚生労働省が定める精神障害の認定基準や、業務との因果関係の考え方、さらに医師の診断書の重要性について整理していきましょう。
厚生労働省は、精神障害を労災として認める際に、主に3つの視点を基準にしています。
まず1つ目は、業務による「強い心理的負荷」があったかどうかです。強い心理的負荷には、たとえば上司からの過度な叱責、無視、過大なノルマの押し付けなどがあったか、その時期は発病と近いか等により判断されます。
2つ目が、業務以外の心理的負荷による発病かどうかです。業務以外で精神的なストレスを受けていたことが原因でうつ病になってしまった場合は労災とはなりません。
3つ目が、個別的要因による発病かどうかです。精神障害の既往歴やアルコール依存等があり、それが発病の原因と判断されると労災に認定されない可能性があります。
これらの3つの観点から総合的に判断し、さらに医学的知見と合わせて、労働基準監督署が労災認定の可否を決定します。
「業務による心理的負荷」「業務上の出来事に起因しているかどうか」など、業務との因果関係が重要視されている背景には、労災が「業務上の事由によって発生した負傷または疾病」に対して適用される制度だからという点があります。そのため、上司の言動や職場環境がどのようにストレスを生み、うつ病の発症に影響を与えたかを、証拠や医師の所見をもとに明確に示すことが求められます。
ちなみに、発症の時期が業務トラブルやパワハラの発生と近い場合はより因果関係が認められやすくなります。逆に、発症時期が離れている場合などは、認定が難しくなることもあります。
あくまでも職場の出来事が原因だということを証明しよう!
医師の診断書は、うつ病の発症と業務との関連性を証明する最も有力な証拠書類です。診断書には、発症時期、症状の程度、治療経過が具体的に記載されている必要があります。さらに、医師の見解として「職場のストレスが原因の可能性が高い」と明示されていれば、労災認定での説得力が高まります。

パワハラによるうつ病が労災に認定されるまでには、いくつかの手続きがあります。ここでは、会社への報告から休職、労働基準監督署への申請、そして調査・審査の流れを時系列で詳しく見ていきましょう。
医師からうつ病と診断された場合は、できるだけ早く会社へ報告し、病状に応じて休職等を申し出ましょう。会社には、労働者が安心して働ける職場環境を保つ、職場環境配慮義務があり、会社は社員から精神疾患等による休職を申し出られた場合、社内規定等に基づき必要な手続きを進めると同時に、労働者の病状が悪化しないよう、必要に応じて業務負荷の軽減や配置転換などの対応を検討します。
なお、うつ病で休職する場合、うつ病の原因となったパワハラがあったという事実を社内のハラスメント相談窓口に報告し、メールや報告書の形で記録を残しておくことも大切です。これらの報告履歴は後の労災認定の資料になります。
次に、労災の申請を行います。労働基準監督署に提出する主な書類は、「療養補償給付たる療養の関係書類」「休業補償等給付関係書類」などです。申請には、医師の診断書、パワハラの記録、メール・録音などの証拠、会社の証明等が必要です。もし手続きの流れや書類の書き方に不安がある場合は、労働局や弁護士、社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。提出書類に不備があると審査が長引くことがあるため、事前に確認しておくと安心です。
申請を受けた労働基準監督署は、会社や関係者への聴取、提出書類の確認などの調査を行います。また、調査には数か月かかる場合が多く、事案が複雑な場合は半年以上に及ぶこともあります。最終的に、業務上のストレスと発症の因果関係が認められれば、労災として正式に認定されます。

労災認定を受けるためには、「どのような証拠をどのように準備するか」が非常に重要です。ここでは、パワハラの記録を残す方法や、医師の診断書の取り扱い方、そして第三者の証言を活かすポイントを順に解説します。
パワハラを立証するには、日々の出来事を具体的に記録することが大切です。パワハラがあった日時、場所、発言内容、関係者をできる限り正確に記録に残しましょう。次に、メールやチャットの履歴、業務日報、指示書、録音データなどを保存しておくことで、事実の裏づけが得られます。さらに、体調の変化やストレスの度合いを日記やメモに残しておくと、発症までの経緯が明確になり、労災調査で有力な証拠として役立ちます。
医師の診断書が有力な資料となることは先述しましたが、加えて通院記録や処方履歴、カウンセリングの記録なども保存しておくことで、職場環境とうつ病の関係をより正確に証明することができます。これらの記録もまた、労働基準監督署の調査や審査で判断材料として用いられます。
最後に、同僚や産業医、社内相談窓口などの第三者による証言も大きな力になります。客観的な証拠が少ない場合でも、早期に相談し記録を残すことで、認定の可能性を高めることに繋がる場合があります。
証拠は多い方が役立つホ!

うつ病によって休職せざるを得ない場合、休職期間の経済的な不安を感じる方も多いでしょう。ここからは労災認定後に受けられる補償や給付制度について、具体的に整理していきます。休業補償や医療費補助、復職支援制度などを順に確認してみましょう。
労災認定を受けた場合、働けない期間中に「休業補償給付」を受け取ることができます。支給額は原則として休業前の賃金の8割前後が目安とされており、生活の安定を支えるための制度となっています。なお「休業補償給付」は療養が長期化する場合は「傷病補償年金」に切り替わることもあります。支給を受けるには、申請書類や医師の診断書など必要な書類を提出し、労働基準監督署の認定を受ける必要があります。
治療にかかる医療費や薬代、通院交通費などは、労災保険の「療養補償給付」として必要な費用全額が補償されます。医療機関からの領収書は必ず保管しておきましょう。
休職が長期化した場合には、産業医による面談やリワーク支援プログラムの利用が勧められます。段階的な勤務復帰を行うことで、再発リスクを抑えながら安全に職場復帰できます。会社側にも復職支援の義務があるため、労務担当者と連携しながら進めましょう。

パワハラによってうつ病を発症した場合、労災補償とは別に「慰謝料」を請求できるケースがあります。ここでは、慰謝料が認められる基準や相場、そして請求時に押さえるべきポイントを順に見ていきましょう。
慰謝料が認められるかどうかは、パワハラの内容・頻度・期間・病気の程度を総合的に判断して決まります。たとえば、上司からの暴言や人格否定が長期間にわたって続いたことでうつ病を発症したケースでは、精神的損害として慰謝料が認定されやすい傾向にあります。
慰謝料を請求できる相手は一人に限られません。加害者である上司個人への請求に加え、会社に対しても使用者責任を追求することも可能です。また、会社が相談を受けながらも十分な対応を行わなかった場合や、再発防止策を怠った場合、会社に対して、職場環境配慮義務違反を根拠に慰謝料を請求できる場合もあります。
慰謝料は、軽微なパワハラの場合は10万円〜50万円程度のケースが多いですが、悪質な場合は100万円以上になる場合もあり、加害行為の内容、被害の程度、パワハラの期間、企業の対応の内容によって大きく変動します。また、暴行等で傷害を負った場合などは、金額が大きくなる傾向にあります。パワハラで慰謝料を請求する場合は、弁護士に相談し、事例に即した適正額を把握しておくと安心です。
慰謝料も請求したいならプロに相談するのが確実だホ!

すべてのケースで労災がすぐに認定されるわけではありません。証拠が不十分だったり、業務との関係が明確でない場合は、認定が難航することもあります。ここでは、申請が通らなかったときの具体的な対応策を整理します。
労災認定が下りなかった場合には不服申立て(審査請求)することが可能です。審査請求は、労働基準監督署長を管轄する都道府県労働局の労働災害補償保険審査官が行います。この際、新しい証拠や医師の追加意見書等があると、有利に判断される可能性もあります。
審査請求を弁護士に依頼すれば、証拠整理や主張構成、書面作成を専門的にサポートしてもらえます。認定の可能性を高めるためには、法律の専門家と二人三脚で進めるのも効果的です。

労災申請や慰謝料請求は、法律や制度の理解が欠かせない専門的な手続きです。そのため、一人で悩まずに専門家へ早めに相談することが重要です。ここでは、弁護士や労働基準監督署、NPOなど、頼れる相談先とその活用方法を詳しく見ていきましょう。
弁護士に相談することで、証拠や主張の整理、書類作成などを専門的にサポートしてもらえます。また、慰謝料や損害賠償の適正額を検討したり、会社や加害者との交渉を代理してもらうことも可能です。法律事務所によっては、初回相談を無料で受け付けているところもあります。
労働基準監督署や労働局の相談窓口では、労災申請の手続き方法や書類の書き方、必要な証拠の確認など、具体的なアドバイスを受けることができます。公的機関なので、費用をかけずに安心して相談できるのが大きな利点です。
NPO法人や労働組合は、精神的なケアや伴走支援を行う団体としても心強い存在です。必要に応じて複数の機関を組み合わせ、継続的な支援体制を整えることが理想です。

ここまで、パワハラによるうつ病の労災認定について詳しく解説してきました。最後に、本記事で押さえるべき重要なポイントを整理し、今すぐ行動に移すためのチェックリストを紹介します。
パワハラによるうつ病が労災として認められるには、厚生労働省の基準に基づき「業務上のストレス」と発症の因果関係を明確にすることが重要です。診断書やメール・録音などの証拠をそろえ、相談窓口への通報記録を残すことで認定の可能性が高まります。
また、休職中は労災補償を受けながら、復職支援制度の活用も検討しましょう。さらに、慰謝料の請求では、弁護士などの専門家に相談することで、より的確な対応ができます。
最後に、行動のステップを明確にしましょう。
これらを順に実践することで、労災認定から再出発までの道筋が明確になるでしょう。
1.弁護士法人リーガルプロフェッション / 高田 英典 弁護士(宮城県仙台市)
2.南方法律事務所 / 南方 健幸 弁護士(和歌山県和歌山市)
3.あかつき法律事務所 / 林 龍太郎 弁護士(熊本県熊本市)
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