Lawyers Column

2025.11.18

インターンシップ制度を導入する前に|労働時間・就業規則など待遇の正しい扱い方

ルール、知ってるホ?

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※この記事は、あさがお法律事務所 岡田 晃朝 弁護士が監修しています。

「インターンを受け入れたいけど、労働時間や報酬、法律上のルールはどうなっているの?」そう思う方もいるかもしれません。実は、インターンシップ制度は“労働者性”の有無によって、企業が守るべき労働法や就業規則の適用範囲が大きく変わります。制度の種類を理解し、法的に正しい対応をとることが、トラブルを防ぎ、学生との信頼関係を築く第一歩となります。この記事では、インターンシップ制度の基本的な仕組みから、労働時間や報酬、就業規則との関係まで、企業が把握すべき待遇面のポイントを丁寧に解説していきます。

インターンシップ制度とは?基本的な種類と特徴を解説

インターンシップ制度は、学生が企業の業務を体験し将来の就職活動に備える重要な仕組みです。種類や目的を正しく理解することが制度導入の第一歩になります。

インターンシップの定義と目的とは

インターンシップとは、学生が在学中に企業での就業体験を行う活動を指します。主な目的は、学生に実際の業務や職場環境を経験してもらい、将来の進路選択キャリア形成に役立てることです。企業側にとっても、自社に関心を持つ学生と早期に接点を持ち、採用活動につなげるメリットがあります。制度を設計する際には、インターンシップの目的を明確にし、学生と企業の双方に利益のある形を意識することが大切です。

インターンシップの主な種類|短期・長期・有給・無給

インターンシップにはさまざまな種類があります。期間の長さによって「短期インターン」(1日〜数日)、「長期インターン」(数週間〜数か月)に分けられます。また、待遇面では「有給インターン」「無給インターン」に大別されます。短期型は職場見学やグループワークが中心で、主に就業体験や企業理解を目的とします。一方、長期型や有給インターンは、実務に近い業務に従事することが多く、労働者としての扱いが問題となる場合もあるため、制度設計には注意が必要です。

どんなインターンシップにするかは自由に決められるホ!

採用活動との関係性と企業メリット

インターンシップ制度は採用活動の一環として位置づけられることが増えています。実際の業務や企業文化を通じて、学生の適性や人柄を見極めやすく、採用のミスマッチを防ぐ効果があります。また、学生にとっても企業との関係性を深める機会となり、内定辞退の抑制や早期離職の防止にもつながるため、企業の利益としても注目されています。

インターンシップにおける労働時間と報酬の取り扱い

インターンシップでも実務に従事する場合は、労働時間や報酬に関する法的対応が必要です。有給・無給の違いや支払い義務を正しく理解しましょう。

労働時間の考え方|インターンでも時間管理は必要?

インターンシップにおいて、学生が明確な指揮命令のもとで業務に従事している場合は、一般のアルバイトと同様に労働時間の管理が求められます。特に、開始・終了時刻や休憩時間の取り扱いが曖昧なまま進めてしまうと、労働基準法に違反する可能性があります。また、学生側が授業などと両立しているケースでは、勤務時間の柔軟性も重要です。インターンの内容が実習・体験型にとどまるとしても、指揮命令関係がある以上は労使関係とみられるケースが多い点に注意が必要です。(補足:会社見学ではなく実習となるとより労働とみなされる可能性は高まります)

有給インターンと無給インターンの違い

インターンシップには有給・無給の2種類がありますが、これは単に報酬の有無だけでなく、法律上の扱いにも大きく影響します。学生が使用者の指示のもとで業務に従事し、企業に利益をもたらしている場合は、たとえ「インターン」という名目でも最低賃金の支払い義務が発生します。一方、企業見学や職場体験のように、実際の労働に該当しない活動であれば、無給でも問題ありません。ただし、無給であっても交通費や昼食などの補助を設けることで、学生側の参加ハードルを下げ、より良い関係性の構築にもつながるでしょう。

賃金支払い義務が発生する条件とは

インターン生への賃金支払い義務が発生するかどうかは、「労働者性」の有無が判断基準となります。具体的には、①企業の指揮命令下にあること②業務に実質的に従事していること、といった条件がそろうと「労働者」とみなされます。(特に①の要件が重要視されます。)

このとき、成果に対して報酬を支払っていることが労働者の要件に含まれると思われがちですが、実際には「報酬を支払っていないから労働者ではない」という評価になるわけではなく、「指揮命令が及んでおり労働者なのに、報酬が払われていない」と評価されます。なので、あくまでも「労働者性」を判断する際に重要になるのは「企業の指揮命令下にあること」となります。

企業の指揮命令下にある場合は労働基準法が適用され、最低賃金や残業代の支払いが必要になります。誤って無給で運用してしまうと、後に損害賠償請求や労務トラブルに発展するリスクがあるため注意が必要です。

制度設計に不安がある時は顧問弁護士などに相談を!

※なお、報酬支払いの有無は基本的には労働者性を判断する際の要件に含まれませんが、例えば企業の指揮命令下にある人が有給休暇の取得や過剰な労働を強いられているなどの問題が発生した場合、企業がその人に対して報酬を支払っていた事実があればそれは「労働者性を強める事情」とみなされる場合が多いです。つまり、報酬支払いの有無は、基本的には労働者性を判断する際の条件ではないですが、状況によっては労働者性を評価する材料になりうるということです。

インターン生に就業規則や労働法は適用されるのか?

インターン生にも就業規則や労働法が適用される場合があります。労働者性の判断基準や法令上の適用範囲を理解し、正しい対応を取りましょう。

就業規則を適用すべきケースと不要なケース

インターン生に対して就業規則が適用されるかどうかもまた、労働者性の有無によって異なります。たとえば、学生が短期間の職場見学や実習に参加しているだけの場合は就業規則の対象とはならないことがあります。一方で、長期の有給インターンで業務に従事している場合は、就業規則の適用が必要となるケースもあります。

特に、勤務態度や遅刻・欠勤の対応、ハラスメントへの対応など、社内ルールの明確化が求められる場面では、インターン生向けの就業ルールを明文化しておくことで、トラブルの予防にもつながります。

労働基準法や労災保険など適用範囲の整理

インターン生に対する労働基準法や労災保険の適用範囲は、その業務内容と雇用形態により異なります。労働者性が認められるインターン生には、労働時間・休憩・休日・賃金に関する労基法の規定が適用され、企業側にはそれに沿った義務が生じます。また、労働災害が起きた場合、労災保険の対象になるかどうかは、インターンの性質によって判断されます。念のため、学生が労災の対象外になるケースでは、傷害保険などの任意保険への加入を検討しておくと安心です。

学生とはいえ、労働者性が認められたら就業規則などの対象になることがあるホ!

法的トラブルを防ぐために企業がすべき対応とは?

インターンシップは法的なトラブルに発展するリスクもあります。契約書の整備やハラスメント対策など、事前に講じるべき具体的な対応を紹介します。

契約書・誓約書の作成とその内容

インターン生を受け入れる際には、契約書誓約書の取り交わしが非常に有効です。労働者性の有無にかかわらず、業務内容や活動の範囲、守秘義務、事故発生時の責任などを文書に明記することで、後の誤解やトラブルを防ぐことにつながります。特に有給インターンの場合は、雇用契約書に加え、最低賃金の遵守や勤務時間の管理に関する記載も必要です。また、大学が関与するインターンでは三者間協定書の作成も検討すると良いでしょう。

ハラスメント・労働トラブルへの事前対策

インターン生も企業の職場環境の中で活動するため、ハラスメント対策は必須です。特に学生という立場上、上下関係が強く働く場面では、無意識のうちにパワハラやセクハラにつながる行動が起きる可能性もあります。就業規則やオリエンテーションで企業の方針を明確に伝えるほか、指導担当者への研修を行うことで、トラブルを未然に防ぐことにつながります。また、問題が起きた場合に備えて、相談窓口や報告フローを明示しておくことも重要です。

手厚いフォローが学生からの信頼獲得にもつながるホ!

大学・学生との連携で信頼関係を築く方法

法的トラブルを防ぐうえで、大学や学生との信頼関係の構築も欠かせません。事前の説明会や同意書によって、インターンの目的や活動内容を明確に伝えることが、誤解や不信感を防ぐポイントになります。また、受け入れ後も、定期的なフィードバックや面談の機会を設けることで、学生の不安や不満を早期に把握できるでしょう。大学と連携してインターン評価を共有するなど、三者間での情報共有体制を整えると、制度運用の安定につながります。

インターンシップ制度導入前に確認すべきチェックリスト

インターン生を受け入れる前には、制度設計や社内調整など確認すべき項目が多岐にわたります。トラブルを防ぐための準備項目を整理しましょう。

制度導入時に押さえるべき社内確認項目

インターンシップ制度の導入には、社内での明確な役割分担運用ルールの策定が必要です。まず確認すべきは、以下の4つです。

  • 受け入れの目的
  • 対象学生の属性(学年・専攻など)
  • 実施期間
  • インターンシップを実施する部署(部門)

さらに、労働者性がある場合には、就業規則労働時間管理賃金支払の仕組みを整える必要があります。
また、現場社員への説明や教育も忘れてはいけません。「学生を迎え入れる側の体制が整っているか?」という視点で、社内全体の足並みを揃えることが重要です。

インターン受け入れ前の準備物一覧

制度を円滑にスタートさせるためには、受け入れ前の準備物のチェックリストを用意するのが有効です。最低限必要なものは以下の5つです。

  1. インターンの受け入れ要項(活動内容・時間・報酬など)
  2. 契約書・誓約書
  3. 業務マニュアル・研修資料
  4. 名札・PC・アカウントなどの業務ツール
  5. 緊急連絡先一覧や保険加入状況の確認

また、オリエンテーション資料や行動ルールの説明文書も重要な準備項目です。学生が安心して参加できる環境づくりを意識しましょう。

社内説明・現場対応マニュアルの整備

現場の混乱を防ぎ、インターン生が安心して活動できるようにするには、社内説明資料現場用マニュアルの整備が不可欠です。具体的には、受け入れ部署ごとに「対応責任者」を決め、業務範囲や指導方針を共有しておく必要があります。学生への指示の出し方、指導方法、注意点、トラブル時の連絡フローなどを文書化しておくことで、現場社員が迷わず対応できる状態をつくることができます。こうした準備は、法的リスクを下げるだけでなく、学生の満足度向上にも寄与するでしょう。

受け入れ体制は万全に!

まとめ|インターン生の待遇を正しく理解し、安心できる制度設計を

インターンシップ制度は正しく設計・運用すれば、学生と企業双方にとって価値ある機会になります。最後に重要なポイントを振り返ります。

法令をふまえた制度設計が企業の信頼を高める

インターンシップ制度の導入にあたっては、労働法や就業規則との関係性を正しく理解したうえで制度を設計することが求められます。法令順守を徹底することで、トラブルを防止するだけでなく、学生・大学からの信頼を得ることができます。結果として、採用ブランディングや企業イメージの向上にもつながる点が見逃せません。

学生と企業双方にとってメリットある受け入れを

インターンシップ制度は、学生にとってキャリア形成の支援であり、企業にとっては将来の人材獲得のチャンスです。制度設計の段階から相手の立場に立った視点を持ち、実施内容や待遇を丁寧に整備することで、双方にとって実りある関係を築くことができます。「受け入れてよかった」と思われる制度を目指しましょう。

インターンシップ制度の導入でお困りの場合は、弁護士への相談も検討を!!

1.琥珀法律事務所 / 川浪 芳聖 弁護士(東京都渋谷区)

2.川崎つばさ法律事務所 / 土屋 健志 弁護士(神奈川県川崎市)

3.ゆくはし総合法律事務所 / 岡 直幸 弁護士(福岡県行橋市)

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ビジネス戦略ライター |Yusuke LAULEA

大手企業で現役の管理職を務めるビジネス戦略ライター。理論だけでなく、実務レベルで役立つ情報を発信中!
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岡田 晃朝

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