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2025.06.11
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妊娠は、人生の中でも特別な期間です。新しい命を授かる喜びとともに、体調の変化や、これまで当たり前のように行っていたことへの不安がつきまといます。特に「薬」に関しては、「赤ちゃんに影響があるのではないか」「飲まない方が良いのではないか」といった心配から、症状を我慢してしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん、すべての薬が妊娠中に「絶対ダメ」というわけではありません。医師や薬剤師と相談しながら、安全に薬を使用することは可能です。むしろ、つらい症状を我慢しすぎることが、かえって母体や赤ちゃんに負担をかけるケースもあります。
今回は、妊娠中の薬に関する皆さんの不安を少しでも和らげ、正しい知識を持って安心して薬と向き合えるようなってもらえればと思っています。特に、妊娠中に服用することが見込まれやすい頭痛薬、解熱剤、花粉症の薬についても解説していきます。

妊娠中の薬物使用は、非妊娠時とは異なる特別な配慮が必要です。なぜなら、服用した薬の成分が胎盤を通じて赤ちゃんに届き、その成長や発達に影響を与える可能性があるからです。ですが、過度に恐れる必要はありません。薬が赤ちゃんに与える影響は、薬の種類、服用量、服用期間、そして最も重要な「妊娠時期」によって大きく異なります。
妊娠期間は、薬の影響に対する感受性によって「無影響期」「絶対過敏期」「相対過敏期・比較過敏期」「潜在過敏期」4つの時期に分類されます。
この時期は「All or None(全か無か)」と呼ばれる期間です。薬の影響で受精卵に大きなダメージがあれば、妊娠は継続せず流産に至るか、あるいは全く影響を受けずに成長を続けるかのどちらかであると考えられています。この時期に薬を服用して妊娠が継続している場合は、薬による奇形のリスクはほとんどないと考えられています。妊娠に気づかずに薬を飲んでしまった場合でも、過度に心配する必要がないとされています。
この時期は、赤ちゃんの脳、心臓、消化器、手足などの主要な器官が形成される最も重要な期間であり、薬の影響を最も受けやすい「絶対過敏期」と呼ばれています。この時期に、赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性のある薬を服用すると、奇形が生じるリスクが最も高まります。そのため、この時期の薬の服用は極力避け、治療上必要な場合、安全性が確認された薬を最小限の量で最短期間使用するなど、慎重な配慮が必要となります。
いちばん注意が必要な期間ってことだホ!
主要な器官の形成はほぼ完了していますが、性器の分化や口蓋の閉鎖などが行われている時期です。また、胎児によっては重要な器官形成がこの時期まで遅れていることもあります。催奇形性という意味での胎児の感受性は絶対過敏期に比べて低下しますが、催奇形性のある薬剤の使用には注意が必要です。
この時期では、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、ミソプロストールなど一部の医薬品を除いて、薬による奇形はほとんど起こらないと考えられています。しかし、薬の成分が胎盤を通じて赤ちゃんに届き、赤ちゃんの成長や機能に影響を与える「胎児毒性」や、出産後の新生児に影響を及ぼす可能性があります。
いずれにおいても、妊娠が判明してからのサプリメントや市販薬、処方箋医薬品などの使用はかかりつけの医師や薬剤師に確認してからにしましょう。
自己判断でサプリや薬を飲むのは危険だホ!
妊娠中に薬を服用する可能性がある場合、以下の3点を心がけてください。
また、もし妊娠に気づく前に薬を服用してしまった場合でも、慌てずに医師や薬剤師に相談してください。今後も継続してよいか、中止すべきか判断を仰ぎましょう。

ここからは、妊娠中に体調を崩した際に、特に服用することが見込まれやすい薬について、具体的な影響と注意点を詳しく解説していきます。体調の変化は急に起こります。かかりつけの医師・薬剤師に事前に大丈夫な対応方法を確認しておくことがベストです。
妊娠中はホルモンバランスの変化や血流の変化、ストレスなどにより、頭痛や発熱を経験することが少なくありません。特に、発熱は母体だけでなく胎児にも影響を及ぼす可能性があるため、適切な対処が必要です。しかし、市販されている多くの頭痛薬や解熱剤には、妊娠中に避けるべき成分が含まれていることがあります。
妊娠中の頭痛や発熱に対して、安全性が高いとされるのは「アセトアミノフェン」です。市販薬でも登場しており、「タイレノール」や「カロナールA」などに単独成分として配合されています。医療用医薬品としては「カロナール」や「アンヒバ坐剤」などに含まれています。ただし、1点注意してほしいのが、市販の総合感冒薬にはアセトアミノフェン以外の成分(カフェイン、抗ヒスタミン薬など)も含まれている製品もあるため、必ず単独成分のアセトアミノフェン製剤を選ぶようにしましょう。なお、肝機能障害のある方は注意が必要です。
痛み止めには様々な種類があり、イブプロフェン、ロキソプロフェン、アスピリン(低用量アスピリンを除く)、ジクロフェナクなどの「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」に関しては、妊娠中に自己判断で使用するのは避けた方がよい薬の代表例です。
これらの薬は、炎症を抑える作用も強く、頭痛や発熱、関節痛などに広く用いられますが、妊娠中の服用には重大なリスクが伴います。家に残っているからと自己判断での服用はしないようにしましょう。
ただし、妊娠期間中ずっと服用NGなわけではありません。アセトアミノフェンで効果が無い場合などには、かかりつけの医師に相談してみてください。
妊娠中に花粉症を発症したり、症状が悪化したりする方も少なくありません。つらい鼻水、くしゃみ、目のかゆみは、日常生活に大きな支障をきたし、ストレスの原因にもなります。しかし、花粉症の薬も、妊娠中の服用には注意が必要です。
妊娠中は、ホルモンバランスの変化により鼻粘膜が敏感になり、花粉症の症状が悪化することがあります。まずは薬に頼らない非薬物療法を徹底しましょう。
非薬物療法で症状が改善しない場合、薬物療法を検討することになります。妊娠中に比較的安全性が高いとされているのは、「第二世代抗ヒスタミン薬」です。「第二世代抗ヒスタミン薬」の一部は、大規模な疫学研究がおこなわれており、妊娠・授乳中における安全性が比較的高いとされています。
具体的には、ロラタジンやセチリジンが挙げられます。また、これらの薬剤と関連のあるレボセチリジン、デスロラタジンも同様と考えられます。
ただ、妊娠時期によっては飲み薬を使用せず、点鼻薬や点眼薬を使用するケースもあります。自己判断で使用せず、必ず医師や薬剤師に相談し、指示された用法・用量を守ることが重要です。
いつも飲んでる薬でも、妊娠中は特に注意が必要だホ!

妊娠中の薬に関する不安や疑問は尽きないものです。ここでは、多くの妊婦さんが抱きやすい疑問について、Q&A形式で詳しく解説していきます。
A1. 妊娠が判明する前に薬を服用してしまったというケースは非常に多く、多くの妊婦さんが不安を感じるかと思いますが、過度に心配する必要はありません。無影響期(受精前~妊娠3週末)に服用した薬については、もし薬の影響で受精卵に大きなダメージがあれば、妊娠は継続せず流産に至ると考えられています。妊娠が継続している場合は、薬による奇形のリスクはほとんどない、つまり「問題なかった」と判断されます。
継続的に服用している薬であれば、今後も継続して問題ないか、医師・薬剤師に確認を取るようにしてください。
A2. 漢方薬は「自然由来だから安全」というイメージを持たれがちですが、そんなことはありません。漢方薬も医薬品であり、複数の生薬が組み合わさってできています。中には、妊娠中に注意すべき生薬(一例:大黄、桃仁、牛膝など)が含まれているものがあります。医療用漢方エキス剤については安全性が高いとされていますが、漫然とした使用は避けるべきです。また、市販の漢方薬を購入する際には、薬剤師や登録販売者に妊娠中であることを伝え相談しましょう。

妊娠中の薬との向き合い方は、決して「我慢すること」だけではありません。安心してマタニティライフを送ることができるように、妊娠中の薬との上手な付き合い方として大切なポイントを紹介します。
最も大切なことは、「自己判断で薬を服用したり、服用を中止したりしないこと」です。市販薬、サプリメント、漢方薬、そして以前処方された残りの薬であっても、必ず医師や薬剤師に相談してください。妊娠中は、非妊娠時とは体の状態が大きく異なります。以前は問題なく飲めた薬でも胎児に影響を及ぼす可能性があります。ちょっとしたことでも相談するようにしましょう。
お薬手帳は、皆さんが服用しているすべての薬の情報を一元的に管理するための非常に重要なツールです。処方薬だけでなく、市販薬、サプリメント、漢方薬など、口にするものはすべて写真に残したり、パッケージを持ち歩いたりしましょう。
正確な情報があることで、医師や薬剤師は、皆さんの薬の服用歴を正確に把握し、重複投与や飲み合わせの悪い薬のチェック、妊娠中に避けるべき薬の確認などを行うことができます。より安全で適切な薬物療法を受けるためにも、妊娠中は特に、薬やサプリの情報をまとめておくことが推奨されます。また、複数の医療機関を受診する場合でも、お薬手帳があれば情報共有がスムーズに進みます。
母子手帳とお薬手帳をセットにしておくのもおすすめだホ!
妊娠中の体調の変化や、薬に関する不安は、一人で抱え込むと大きなストレスになります。信頼できる医療従事者(産婦人科医、薬剤師、助産師など)に相談することはもちろん、パートナーや家族、友人など、身近な人に話を聞いてもらうことも大切です。
また、公的な相談窓口や、妊娠・出産に関する情報を提供するウェブサイトなども活用しましょう。例えば、厚生労働省の「妊娠と薬情報センター」では、妊娠中の薬に関する専門的な相談を受け付けています。このような窓口を事前に知っておくことで、いざという時に安心して相談することができます。
不安な気持ちを解消し、心穏やかに過ごすことが、母体と赤ちゃんの健康にとって何よりも大切です。積極的に情報を集め、サポートを求めることをためらわないでください。

今回は、「妊娠と薬」についてお伝えしました。最も重要なメッセージは、「妊娠中の薬は『絶対ダメ』ではない」ということです。妊娠中の女性が体調を崩し、薬が必要となる場面は少なくありません。頭痛や発熱、花粉症といった症状は、時に日常生活に大きな支障をきたし、母体へのストレスとなることもあります。このような状況で、適切な薬を適切に使用することは、母体の健康維持に繋がり、結果として赤ちゃんにとっても良い影響をもたらすことがあります。
しかし、その一方で、妊娠時期や薬の種類によっては、胎児に影響を与えるリスクがあることも事実です。だからこそ、「自己判断での薬の服用は避け、必ず医師や薬剤師といった専門家に相談すること」が不可欠です。
薬以外のことでも、不安なことがあれば医師、薬剤師に相談するようにしてください。
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