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2025.06.11
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※この記事は、池袋中央法律事務所 依田敏泰弁護士が監修しています。
離婚を考えたとき、「苗字はどうなるの?」「仕事や子どものために今の苗字を使い続けたい」という悩みは切実です。苗字を変更することは生活に大きな影響を与えるため、慎重な選択が求められます。
この記事では、離婚後も婚姻中の苗字を使い続けたい方に知ってもらいたい「婚氏続称」制度について解説。メリット・デメリット、手続き、子どもへの影響まで、後悔しない選択のための情報をお届けします。

まず、離婚後の苗字の基本ルールについて解説します。法律では、離婚すると婚姻時に氏を変えた側(多くは女性)は、原則として旧姓(婚姻前の氏)に戻るとされています。同時に戸籍も、婚姻前のものに戻すか、新しい戸籍を作るよう定められてます。
そのため、離婚後に何も手続きしなければ自動的に旧姓に戻ることになりますが、「離婚後も今の苗字を使い続けたい」と考える人に向け、「婚氏続称」という制度も設けられています。

「婚氏続称(こんしぞくしょう)」とは、婚姻中に名乗っていた苗字を離婚後も使い続けるための制度です。「離婚の際に称していた氏を称する届」という届け出を行うことで制度を利用できるようになります。仕事上の理由、子どもと同じ苗字でいたい、長年使った苗字への愛着など、制度を利用する理由はさまざまです。届け出を出すこと以外には特別な条件はなく、離婚する人であれば誰でも利用できます。
しかし、手続きの期限だけ要注意。「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出できるのは、離婚した日から「3か月以内」です。この期限を過ぎると家庭裁判所の許可が必要となり、手続きが複雑化します。元配偶者の同意を必要とせずご自身の意思だけで選択可能な制度なので、離婚時はなるべく早めに手続きを済ませましょう。
手続き期限には要注意だホ!

婚氏続称を選択すると、多くのメリットがあります。ここからは、仕事・日常生活・子どもの暮らしの3つの観点から、婚氏続称のメリットを紹介していきます。
長年同じ苗字で仕事をしてきた方にとって、旧姓に戻ることは大きな変化です。通常の業務に加え、名刺やメールアドレスの変更、社内システムへの登録変更、取引先への周知など、多くの手間が発生します。しかし、婚氏続称を選択することでこれらの手間が省かれ、離婚後も変わりなく仕事を続けることが可能になります。
また、苗字が変わることで、周囲の人に「なぜ苗字が変わったのか」と説明する必要が出てくることもあるでしょう。あまりプライベートな事情を話したくないという場合も、苗字を変えないという選択をすると、離婚の事実を過剰に公にすることを避けられます。
銀行口座、クレジットカード、運転免許証、パスポート、保険など、苗字が変わると膨大な数の名義変更手続きが必要になります。役所が絡む手続きの場合は平日しか受け付けてもらえないことも多く、これらの手続きには時間も労力もかかります。しかし、婚氏続称を利用するとこれらの手続きがほとんど不要になります。
離婚はただでさえ大きな生活の変化を伴います。苗字を変えないことで、少しでも身の回りに起こる変化や周囲から受けるストレスを小さくし、精神的な負担を軽減することもおすすめです。
苗字が変わったことに触れてほしくないときもあるホ…
子どもにとって、親の離婚は大きな出来事です。それに加えて自分の苗字や親の苗字が変わることは、混乱や精神的な負担を増大させる可能性があるでしょう。そのため、親が婚氏続称を選択し、子どもも同じ苗字を使い続けることで、学校生活や友人関係への影響を最小限に抑えることができます。
また、子供にとって親と同じ苗字であることは安心感につながることがあります。特に親権者となる親が婚氏続称を選ぶことは、子どもの心理的な安定に寄与する場合もあると言えるでしょう。
長年名乗ってきた苗字には、愛着や自分らしさを感じる方もいるでしょう。離婚という大きな変化の中で、慣れ親しんだ苗字を使い続けられることは、精神的な安定につながることがあります。また、苗字も自己のアイデンティティの一部と捉える人にとっては、それを維持できることが精神的な支えになることもあるでしょう。

婚氏続称にはメリットだけでなく、デメリットや注意点も存在します。両側面を理解したうえで、婚氏続称を選択するかしないかを判断しましょう。
苗字が変わらないことで、離婚したという実感が湧きにくく、気持ちの切り替えが難しくなることがあります。実際に、人によっては新しい生活へのスタートを切る上で、旧姓に戻ることが一つの区切りだと感じる方もいます。同じ苗字を使い続けることで、無意識のうちに元配偶者との繋がりを感じてしまい、精神的に辛い思いをする可能性も否定できません。
苗字が変わらないため、事情を知らない人からは離婚していないと誤解されることがあり、悪気なく配偶者に関する話をされたときに、その都度説明するのが煩わしいと感じるかもしれません。また、稀なケースですが、「離婚したのになぜ苗字を変えないの?」といった詮索を受ける可能性も考えられます。こうした誤解や偏見でストレスを感じやすくなる人もいるでしょう。
婚氏続称後、旧姓に戻るには家庭裁判所の許可が必要になるため手続きのハードルが高くなります。婚氏続称を選んだ方が再婚し、さらにその再婚相手と離婚した場合、原則として「一番最初の婚姻前の旧姓」には戻れません。 戻れるのは「直前の婚姻前の氏」(最初の離婚後に婚氏続称で使っていた苗字)などです。つまり、「本当の旧姓」に戻る道は、家庭裁判所の極めて例外的な許可がない限り、実質的に閉ざされる可能性が高いということになります。
婚氏続称の選択は慎重に…!
婚氏続称をしても、戸籍謄本には離婚の事実と婚氏続称の届出をした旨が記載されるため、自分が筆頭者となる新しい戸籍が作られることになります。
同じ苗字を名乗り続けることで、元配偶者側の親族との関係で、誤解を招いたり、意図しない形で関係が続いているように見られたりする可能性もゼロではありません。これはケースバイケースですが、念頭に置いておくとよいでしょう。

子どもがいる場合、苗字の問題はより慎重な検討が必要です。親が婚氏続称しても、子どもの苗字や戸籍は自動的には変わりません。親が離婚し、婚氏続称を選んだ側の親(多くは母親)が親権者となった場合、子どもは原則として婚姻中の戸籍(多くは父親の戸籍)に残り、苗字もそのままです。
子どもの親権者となった母親だけが新しい戸籍に移り、婚氏続称で婚姻中の苗字を名乗り、子どもは親権者とはならなかった父親の戸籍で同じ苗字を名乗る状況になります。
– 💡監修弁護士からの補足解説💡-
婚氏続称を選んで名乗る苗字と、婚姻中の苗字とは同じであるはずなのに、子どもの苗字を婚氏続称した親の苗字と同じにするために、わざわざ手続が必要になるということについて補足説明します。
例えば、あなたが「鈴木」という苗字であるとしましょう。職場に同じ「鈴木」という苗字の方がいたとします。あなたとその職場にいるもう1人の鈴木さんとは、親戚と認識してよいでしょうか。そうではありませんよね。
つまり、呼称上は同じ苗字でも、互いに親戚ではないのですから、苗字としては別のものと考えられるのです。同じことが、婚姻中の苗字と、婚氏続称を選んで名乗る苗字との間にも言えるのです。
呼称上は同じでも、婚氏続称を選んで名乗る苗字は、便宜上、婚姻中の苗字と同じ呼称にしたというだけで、あくまでも婚姻中の苗字とは異なると考えるのです。ですので、子どもの苗字を婚氏続称した親の苗字にわざわざ合わせなければならないということなのです。
子どもの苗字・戸籍を婚氏続称した親と同じにする際は、以下の2段階の手続きが必要です。
子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」をします。申立ては、子どもが15歳未満なら法定代理人(通常は親権者)、15歳以上なら子ども本人が行います。手続きの際は、父母や子どもの戸籍謄本などが必要になります。申し立てを受けると、家庭裁判所が子どもの福祉を考慮して審判します。この手続きには、数週間から1〜2か月程度かかることがあります。
家庭裁判所での審判が終わり、無事に申し立てが認められると、家庭裁判所の許可審判書謄本を受け取り、市区町村役場に「入籍届」を提出します。この手続きで子どもは母親の戸籍に入籍し、同じ姓を名乗ることができることになります。
子どもの監護養育を行う親権者が、子どもと同じ氏・戸籍であることを望むのは自然なことです。しかし、子どもの気持ちを十分に考慮し、影響を最小限に抑える配慮もまた大切です。不明な点や不安な点がある場合は、無料相談なども活用し、弁護士などの専門家や市区町村窓口に相談しましょう。
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婚氏続称の手続きには「離婚の日から3か月以内」という期限が設定されています。この期限内で、「離婚の際に称していた氏を称する届」(通称:婚氏続称届)を提出することで手続きを進めることが可能になります。婚氏続称届は、市区町村役場の窓口やウェブサイトでも入手でき、氏名、本籍地、離婚届を提出した日などを正確に記入し提出します。
《提出先》
ご自身の本籍地、または住所地(所在地)の市区町村役場
《提出時期・タイミング》
離婚届と同時に提出するのが 最もスムーズで忘れにくい方法です。離婚届を先に提出した後でも、離婚の日から3か月以内であれば、婚氏続称届を提出することができます。
《提出時に必要なもの(一般的なケース)》
・離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)
・戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地以外の役場に提出する場合など。離婚届と同時に提出し、離婚届に添付した戸籍謄本で兼ねられる場合もありますが、事前に確認しましょう。
・印鑑(認印で可、スタンプ印は不可の場合が多い)
・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
手続き自体は複雑ではありませんが、不備がないよう注意しましょう。
期限を過ぎると、婚氏続称届だけでは婚姻中の氏を名乗れません。家庭裁判所に「氏の変更許可の申立て」をすることが必要となりますが、手間と時間がかかるうえ、必ずしも許可されるとは限りません。
一般的に、家庭裁判所での手続きになると婚姻中の姓を維持することに対する「やむを得ない事由」が求められてしまいます。
婚氏続称を希望するなら、必ず「離婚の日から3か月以内」に手続きを済ませましょう。

離婚後の苗字の選択は、これからの生活に大きく関わる重要なポイントです。「婚氏続称」制度を利用すれば、離婚後も婚姻中の苗字を使い続けることができ、仕事や日常での手間の削減、子どもへの影響の軽減などのメリットがあります。
一方、デメリットは離婚の実感が湧きにくいこと、一度選ぶと旧姓に戻りにくいこと、再婚・再離婚時に本当の旧姓に戻れない可能性などです。
ご自身の状況(仕事、子ども、将来の展望など)を総合的に考え、メリット・デメリットを比較し、最善の選択をしてください。
また、婚氏続称の手続きは「離婚の日から3か月以内」という期限が設定されています。期限を過ぎると家庭裁判所での手続きが必要になり、通常より申請のハードルが高くなるため、忘れずに手続きを進めましょう。
迷ったり不安を感じたら、弁護士などの専門家や市区町村役場に相談することも有効です。無料相談窓口もあります。一人で悩まず気軽に相談してみましょう。
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