Lawyers Column

2025.06.24

相続手続きの期間は?期限別スケジュールと放置リスク、必要書類まで解説

相続って何するの?

大切なご家族が亡くなられた後、残されたご遺族には様々な相続手続きが待っています。
「相続手続きって、いつまでに何をすればいいの?」
「もし期限を過ぎたらどうなるの?」
そんな疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、相続手続きにかかる期間の目安と、期限を過ぎた場合のリスク、具体的な手続きのスケジュール、必要書類、そして手続きを進める上での注意点について、分かりやすく解説します。

相続手続きを放置するとどうなる?主なリスク

相続手続きは面倒に感じられるかもしれませんが、放置は禁物です。あとになって、より大きな問題につながる可能性があります。相続を放置すると起こりうるリスクについて解説します。

1.借金も引き継いでしまうリスク

相続ではプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぎます。そのため、相続手続きを怠ってしまうと、亡くなった方の借金を返済する義務が生じることもあります。

借金などの負債を引き継がないようにするには、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で「相続放棄」(全ての財産を放棄)または「限定承認」(プラスの財産の範囲内でマイナス財産を相続する)の手続きが必要になりますが、期間を過ぎてしまうと、原則として全ての財産を引き継ぐ「単純承認」とみなされます。

相続放棄についてはこちらの記事でも解説!👇

2.遺産分割協議が難航する

時間が経つほど相続人の状況が変化し、遺産の分け方が決まりにくくなります。

3.不動産が活用できない・過料が科せられる可能性

相続手続の一環である、不動産の名義変更(相続登記)をしなければ、その後の売却などもできません。また、2024年4月からは相続登記が義務化され、3年以内に登記申請しなければ過料《あやまちりょう》(罰金のようなもの)が科される可能性があります。

4.余計な税金がかかる

相続税の申告・納付の期限は10ヶ月以内です。遅れると延滞税などが課され、税金の特例が使えなくなることもあります。

面倒でも相続手続をしないとこんなにデメリットがあるんだホ…

【期限別】相続手続きのスケジュールと必要書類

大切なご家族や親戚が亡くなったらすぐに手続きを進めていかなければなりません。ここでは締め切り日ごとの手続きと必要書類をまとめましたので是非参考にしてみてください。

①死亡後すぐ~【3ヶ月以内】|相続の方向性を決める重要期間

最初の3ヶ月は、相続の基本方針を決める重要な時期です。手続きが多く複雑なものも多いので、対応漏れがないよう注意しましょう。

死亡届・火葬許可申請:原則、死亡後7日以内に申請 ※通常は葬儀社が代行
遺言書の有無確認:遺言書があれば原則その内容に従います。自筆証書遺言などは家庭裁判所で検認(けんにん:内容確認・偽造防止の手続き)が必要です。
・相続人の調査・確定:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本類(こせきとうほんるい)を取得し、誰が相続人か確定させます。
相続財産の調査:預貯金、不動産などのプラス財産、借金などのマイナス財産を全て調査し、財産目録(ざいさんもくろく)を作成します。宝石などは専門家の評価が必要な場合もあります。
相続放棄・限定承認の検討・申述:財産調査の結果を踏まえ、必要であれば家庭裁判所に申し立てます(期限:相続開始を知ってから3ヶ月)。

《この期間の主な必要書類例》
死亡診断書等、被相続人の戸籍謄本類・住民票除票、相続人全員の戸籍謄本・住民票、遺言書(あれば)、財産関連資料、相続放棄・限定承認申述書(該当する場合)

②【4ヶ月以内】所得税の準確定申告

相続人が確定したら、期間内に必ず納税の手続きを進めましょう。亡くなった方に所得(事業所得、不動産所得など)があった場合や、給与所得が2,000万円以上の場合、死亡日までの所得税を申告・納付します。これを準確定申告(じゅんかくていしんこく)といい、相続人が行います。

《この期間の主な必要書類例》
準確定申告書、収入や控除に関する書類(源泉徴収票、領収書等)、相続人全員の氏名等を記載した付表

生前の納税義務はきちんと果たすってことだホ!

③【10ヶ月以内】遺産分割と相続税の手続き

所得税の納税が完了したら、相続する遺産を分け合います。なお、遺産分割がまとまっていない場合でも、相続税の申告及び納税は、申告期限までにする必要があります。この場合、法定相続分の割合で相続税の申告・納付を行うこととなります。

・分割協議 / 協議書作成:相続人全員で遺産の分け方を話し合い(遺産分割協議)、合意内容を遺産分割協議書にまとめ、全員が署名・実印を押します。これは後の名義変更等で必要になります。
・相続税の申告・納付:相続財産が基礎控除額(3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告・納付が必要です。
・預貯金・株式等の名義変更・解約:遺産分割協議書などに基づき、金融機関等で手続きします。

《この期間の主な必要書類例》
遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、戸籍謄本類、相続税申告書(該当する場合)、金融機関所定の書類

④【1年以内】遺留分侵害額請求

遺言などで法律上保障された最低限の取り分(遺留分:いりゅうぶん)より少ない財産しか受け取れなかった場合、多く受け取った人に不足分を金銭で請求できます。この権利(遺留分侵害額請求)は、相続開始と遺留分侵害を知ってから1年で時効消滅します。

⑤【3年以内】不動産の名義変更(相続登記)

亡くなった方の名義になっている不動産は、相続人名義に変更(相続登記)する必要があります。2024年4月から義務化され、相続により不動産の所有権を取得したことを知ってから3年以内の申請が必要です。

《この期間の主な必要書類例》
登記申請書、被相続人の戸籍謄本類・住民票除票、相続人全員の戸籍謄本、不動産を相続する人の住民票、遺産分割協議書または遺言書、固定資産評価証明書

⑥【5年以内など】その他の主な手続き

その他、期限が異なる手続きもあります。

年金関連請求:未支給年金や遺族年金の請求(多くは5年以内)
生命保険金請求:多くは3年以内
自動車の名義変更:道路運送車両法では15日以内とされていますが、遺産分割協議後に行うのが一般的
その他名義変更:公共料金、クレジットカード等(カードの場合は解約手続きなども発生)

《関連する主な必要書類例》
年金証書、保険証券、車検証、戸籍謄本類、各申請書

どれも忘れないようにカレンダーなどに入れておくと便利だホ!

相続手続きを進める上での注意点

相続手続は、やることも多いうえに、それぞれ期限が決められているからこそ、スムーズに進めることが何よりも重要です。途中でトラブルにより手続きがストップしてしまわないよう、相続手続を進める際に抑えておきたい5つのポイントを紹介します。

兄弟姉妹など複数人で手続きを進める場合のポイント

リーダー(まとめ役)を決める
連絡やスケジュール管理の中心役を決めると手続がスムーズに進められます。スケジュール管理に長けた人や丁寧さを持つ人物が適任です。しかし、リーダーを決めたからといってリーダーにすべてを任せっきりにするのではなく、相続人全員で協力しながら手続きを行いましょう。

役割分担を行う
リーダー以外にも、可能であれば財産状況を調べる担当金融機関・専門家への連絡担当書類に不備がないかをチェックする担当など、各作業ごとに分担するのもおすすめです。相続手続は長期にわたっていくつもの手続きを行います。一人に負担が偏ってしまうとミスや漏れにも繋がりやすくなるので、ぜひ相続人間で役割分担をし、協力して手続きを進めましょう。

情報共有を徹底する
手続きを進めるうえで明らかになった財産状況や進捗、また手続きの際に必要になる書類など、相続に関する事柄を全員で共有しましょう。共有する際は、LINEやメールを活用し文面に残しておくとのちのトラブルを抑制することにもつながります。誰か一人が情報を知らずに損をすることなどがないよう注意しましょう。

「それ私知らない!」って人が出ないよう注意だホ!

冷静な話し合いを行う
相続手続きを進める中で、万が一トラブルや意見の食い違いなどが発生した場合は、感情的にならず、お互いの意見を尊重して冷静に対応することが求められます。相続は、財産や不動産、場合によっては負債など、規模の大きな話が絡むため、感情的になってしまったり周囲を言いくるめて自分だけ損をしないよう動こうとする人も出てくるかもしれません。

しかし、そうした場合でも冷静さを欠かさず、相続手続を期限内に終えることを優先に、建設的な話し合いをするよう心がけましょう。

記録を残す
話し合った内容や決定事項は記録に残し、のちの「言った・聞いてない」のトラブルを防ぎましょう。記録の残し方は、LINEやメールなどでも構いませんし、決定事項のみ別途で文書を作成し相続人全員に配布する形でもよいでしょう。

よくある相続トラブルとその回避策

相続手続を進める際は、スムーズに進むこともあればトラブルが発生してしまうこともあります。よくある相続トラブルの事例を把握し、トラブル発生を未然に防ぎましょう。

トラブル①:財産の分割方法に関する対立
財産の分け方(法定相続分、親の介護への貢献=寄与分、生前援助=特別受益など)で揉めるケースです。相続時にはすべての財産が均等に分かれるというわけではないため、人によって得られる財産額は異なるのが一般的ですが、それでもなお「自分はこれだけしかもらえないのに、なぜあの人は私より多くもらってるんだ」という言い争いに発展することがあります。

この場合は、冷静に話し合うことで合意を得ることが望ましいですが、まとまらなければ専門家や家庭裁判所の調停も視野に入れましょう。生前に遺言書を作成してもらっておくとトラブル予防にもつながります。

トラブル②:連絡不足・手続き漏れ
相続には自分の家族だけでなく、親族など複数名が関わるため、情報がうまく伝わっていなかったり、相続権がある人物の見落としといった連絡漏れが発生することもしばしばあります。また、手続きを1つ見落としていてそのまま手続き期限が過ぎてしまったなどのトラブルも起こりがちです。

こうしたトラブルを避けるためには、相続手続を開始する前にTodoリスト相続人名簿などを入念に作成し、全相続人で共有するとよいでしょう。

ひとりに全手続が偏らないよう配慮しよう

トラブル③:相続財産の把握漏れ
相続時の調査不足で、手続きが終わった後に追加の財産借金が発覚するケースも多くあります。うっかり見落としていた場合でも、相続人から「隠していたのでは?」という疑念を抱かれ不信感を与えることもあるので、相続手続を進める際は徹底的な調査財産目録の共有が重要になります。

トラブル④:遺留分に関するトラブル
遺言が特定の相続人に偏り、他の相続人の遺留分を侵害するケースも多々あります。生前の遺言作成時に配慮するよう意識してもらうことが重要です。なお、遺留分が侵害された場合は遺留分侵害額請求が可能ですが、トラブルに発展することも多いので、やはり遺言書作成時に注意することをおすすめします。

相続手続きの相談先と代行依頼の方法

相続手続は自分で進めることも可能ですが、不安な場合は専門家への相談・依頼を検討しましょう。このセクションでは、相談先としての各専門家ごとの特徴や費用等について解説します。

どこに相談すればいい?専門家の選び方

相続手続の相談先としては、以下の5つが挙げられます。ただし、専門家ごとに担当できる業務は法律で定められている(例えば、相続税申告は税理士、登記申請は司法書士など)ため、ご自身の相続の段階・状況によって適切な専門家を選びましょう。

弁護士・・・相続人間で争いがある場合、交渉代理や裁判所手続き
税理士・・・相続税申告が必要な場合、税務相談・申告代行
司法書士・・・不動産の相続登記、遺産分割協議書作成支援など
行政書士・・・ 遺産分割協議書作成、自動車名義変更など。争いのない手続き
銀行(信託銀行など)・・・遺産整理業務(包括的なサポート)

各専門家を選ぶ際は、相続手続の経験以外にも、財産・負債状況なども話すことになるので、ご自身との相性なども鑑みて決定するとよいでしょう。無料相談を活用して複数の専門家に話を聞いてみてから決めるのもおすすめです。

手続きの代行依頼は可能?費用は?

謄本の収集、財産調査、遺産分割協議書の作成、各種名義変更、相続税申告など、相続手続きの多くは専門家に代行を依頼することが可能です。

費用は、依頼する内容や専門家、財産の状況によって大きく異なりますが、主な費用体系としては、時間に応じて費用が発生する「タイムチャージ制」、最初に着手金を支払い、成功した場合に報酬を支払う「着手金・成功報酬制」、遺産総額の一定割合とする「報酬割合制」などがあります。必ず事前に見積もりを取り、どこまでの業務を依頼するのか、費用はいくらかかるのかを明確にしてから依頼しましょう。

相続人が遠方に住んでいる場合の進め方(代理は可能?)

郵送・オンラインを活用すれば、多くの手続きが代理手続き可能です。他の相続人へ委任することもできます。 委任状を作成することで一部手続きの代理が可能になりますが、委任した人にも進捗共有は必ず行いましょう。また、電話やオンラインで対応可能な専門家も多数います。

相続トラブルを未然に防ぐ!生前にやっておくべきこと

生前にできる限りの準備をしておくことで、相続人自身の意向も表明することができ、さらに家族や親族の負担・トラブルを減らすことにもつながります。以下の項目を参考に、早速できるところから始めてみましょう。

1.遺言書の作成
最も有効なトラブル予防策となります。「誰に何を」を明確にまとめましょう。付言事項(財産の分け方などとは異なり、遺言者の気持ちや相続人に伝えたいことを書き残すこと)で想いを伝えるのもおすすめです。

2.生前贈与
相続財産を減らし、遺産分割を容易にすることにつながります。ただし、贈与税特別受益(生前に受けた贈与のこと)など注意すべき点も多いので、事前に手続きのポイントを抑えておきましょう。

不動産の生前贈与についてはこちらの記事でも解説!👇

3.エンディングノートの活用
財産リストや相続人の希望、遺族へのメッセージなどを記録するもの。法的効力はありませんが、家族の助けになるので、作成しておくとよいでしょう。

4.家族会議
財産や相続についてオープンに話し合う場です。家族会議では相互理解を目的として、参加者全員が冷静に客観的に話し合うことがトラブル防止にもつながります。

5.生命保険の活用
受取人固有の財産となり、原則として、遺産分割の対象外となります。納税資金準備や特定の人への財産渡しの際には有効です。

まとめ

相続手続きは、期限を守ることが非常に重要です。放置すると借金相続や過料などのリスクがあります。特に相続放棄(3ヶ月)、相続税申告(10ヶ月)、遺留分侵害額請求(1年)、相続登記(3年)の期限は必ず守りましょう。

円滑に進めるには、全体の流れを把握し、計画的に書類を準備すること、そして相続人が複数いる場合は密な情報共有と冷静な話し合いが不可欠です。手続きが難しい、話し合いがこじれるといった場合は、無理せず弁護士、税理士、司法書士などの専門家に相談しましょう。そして何より、生前の準備(遺言書作成、家族との対話など)が、残される家族の負担を最も軽減します。

【相続トラブル】でお悩みの場合は弁護士への相談も検討を!!

1.竹内法律事務所 / 竹内 淳 弁護士(東京)
https://bengoshi-net.jp/lawyer/538/

2.弁護士法人 栗田勇法律事務所 / 栗田 勇 弁護士(愛知)
https://bengoshi-net.jp/lawyer/477/

3.倉敷わかば法律事務所 / 新庄 将彦 弁護士(岡山)
https://bengoshi-net.jp/lawyer/672/

こちらの記事もおすすめ!

*

Writer

*

あみま

フルタイムで働きながらライター業もしています。ライフスタイル全般についてブログも更新中です!

https://note.com/nice_camel154/n/n74555cd4687a

 

*

Supervision

*

永世綜合法律事務所

尾熊 晋大朗

About

*

⽇常⽣活や仕事で直⾯しがちなトラブルの解決⽅法や対策を、弁護⼠ねっとのマスコットキャラクターであるふくろうとともに楽しく学べるコンテンツ。法律に詳しくない⼈も理解できる記事づくりを⽬指しています。その他にも、掲載弁護⼠へのインタビュー記事なども随時更新!弁護⼠選びの参考にしてみてください。

どんどん更新していくよ!

*

*

*

*