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2024.12.25
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【 目次 】
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終活を進めるにあたって、自分のネット銀行やクレジットカードなどの遺産にどのように対処すればいいのか分からない方もいるでしょう。このようなデジタル遺産の手続きは、残された遺族の負担が重く、スムーズに解約ができない可能性があります。
そこでこの記事では、相続におけるデジタル遺産のトラブル事例や手続き方法を解説します。生前対策まで解説するので、遺族に負担をかけたくないと思っている方はぜひ最後までお読みください。
デジタル遺産とは、被相続人(亡くなった方)がデジタル形式で保管していた財産のことです。デジタル遺産の例は、次の通りです。
・ネット銀行、証券会社の口座
・暗号資産
・マイレージ、ポイント
・電子マネー
・NFTアート
NFT(Non Fungible Token・非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を使って作られた、代替できないデータです。NFTアートは作者によっては高い価値が認められるため、相続でもめる恐れがあります。
被相続人が保有していた財産は、形のある不動産や現金だけでなくデジタル遺産も対象になります。相続の際には、電子マネーや暗号資産などの試算性が高いものだけをデジタル遺産ということも珍しくありません。
令和5年の総務省の調査によると、インターネットの個人の利用状況は86.2%、スマートフォンの保有者の割合は78.9%です。
デジタル端末を使ったインターネットの利用目的を金融取引と答える人は、27.0%に昇りました。令和2年度の19.3%、令和3年度の21.6%、令和4年度の24.3%との調査と比較すると、デジタル資産を持つ方が徐々に増えていることがわかります。
また日本経済新聞によると、主要ネット銀行6社の2024年3月期末時点の口座数は、4,007万口座と発表されました。2024年までの5年間で、口座数は5倍まで増加しています。
主要ネット銀行6社とは、楽天・PayPay・住信SBIネット・auじぶん・ソニー・大和ネクスト銀行のことです。
金融取引やネット銀行口座数の増加から、今後もデジタル資産の増加が予想されます。
デジタル遺産は預貯金や不動産といった遺産に比べて、相続時に気を付けておくべき点があります。デジタル遺産の相続における注意点は、以下の通りです。
・デジタル遺産を調べる方法が難しい
・複雑な相続手続きになる
それぞれの注意点を詳しく解説します。
デジタル遺産は基本的に郵送物がなく、被相続人が利用していたスマートフォン・タブレットのアプリやメールを確認しないと見つかりません。存在に気付かず、遺産分割の際にトラブルになる恐れがあります。
またデジタル遺産は、被相続人にしかわからない情報で保管されているケースがほとんどです。スマートフォンで管理されている場合にパスワードがわからず、ロック解除できないことも珍しくありません。
スマートフォンのロック解除ができても、SMSによる二段階認証が必要な場合、電話を解約していると口座にログインできない可能性があります。
デジタル遺産はサービスが多く、さまざまな相続手続きを進めないといけないため、複雑になりがちです。
デジタル遺産は相続財産にあたるか確認したうえで、複雑な算定方法によって評価額を計算する必要があります。
海外のサービスによっては、相続時の手続き方法は確定されておらず、時間がかかるかもしれません。
デジタル遺産があると、次のように残された遺族が困る可能性があります。
・相続手続き完了後にデジタル遺産が見つかった
・サブスクリプションサービスの費用を払い続けていた
・相続税の申告漏れでペナルティを受けた
それぞれのトラブル事例を見ていきましょう。
相続手続き完了後に、暗号資産が見つかることが珍しくありません。
新たに財産が見つかった場合、見つかったデジタル遺産の分のみ遺産分割協議をする必要があります。なお、遺産分割協議書に新たに見つかった財産は、誰にどのように分配するのかを決めておけば、スムーズに対応できるでしょう。
暗号資産は相続税の課税対象のため、金額が大きい場合は申告する必要があります。
デジタル遺産の調査漏れがあり、亡くなった後もサブスクリプションサービスの費用を払い続けていることもあります。
動画・音楽配信サービスやアプリは、利用者側から解約の手続きを行わなければ、自動更新となっているサービスも珍しくありません。
サブスクリプションサービスを利用している方は、あらかじめ親族に共有しておきましょう。
ネット銀行・証券口座が、相続税の申告期限後に見つかることもあるでしょう。
相続税の申告漏れにより修正申告を行い、延滞税や過少申告加算税が課される可能性があります。この場合、新たに追加された財産額に足して、追加して相続税を支払わなければなりません。
ネット銀行・証券口座は見つかりにくいため、あらかじめ親族にどの銀行・証券会社に口座を持っているのか伝えておくことをおすすめします。
デジタル遺産の評価方法で迷う代表格の一つが、暗号資産です。
ビットコインやイーサリアムといった暗号資産は、価格が常に変動しているため、相続の際は資産価値を評価しなければなりません。活発な市場で取引されている暗号資産は、代替性が確認されているために外国通貨と同様に課税時期の取引価格を参考にして計算します。
一方で、活発な市場で取引されていない暗号資産の場合には、客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していません。その暗号資産の内容や性質、取引実態等を踏まえて、個別に評価します。
なお、暗号資産の評価額は計算方法によって評価額が異なり、複雑になるため税理士に相談しましょう。
ここからは手続きに困る遺産のひとつである、暗号資産の一般的な手続きの流れを解説します。
・取引所に連絡する
・解約手続きを進める
それぞれの手続きの流れを詳しく解説します。
まず、被相続人の暗号資産がどの取引所で取引されているか調べましょう。被相続人が使用していたスマートフォンやタブレットのアプリ、メールの履歴から調べます。あるいは、クレジットカードの利用明細からわかる場合もあります。
取引所が分かったら、被相続人が亡くなったことを伝え、相続手続きを伝える旨を連絡しましょう。連絡を受けた取引所は、被相続人の死亡の確認が取れた時点で口座を凍結します。
連絡した相続人の元に、相続手続きの書類やメールが送られます。
書類やメールを確認し、相続手続きの必要書類を集めます。一般的な暗号資産の解約手続きに必要な書類は、以下の通りです。
・被相続人の出生~死亡までの連続した戸籍
・相続人の現在戸籍
・代表相続人の本人確認書類
・遺産分割協議書または遺言書
・取引所が定めた解約書類
本人確認書類はコピーでも問題ありません。上記の書類を送付後、受け取った取引所が解約の手続きを進めます。
デジタル遺産によって遺族の負担を減らすために、次の生前対策が有効です。
・不要なサービスを解約する
・デジタル遺産のアカウントを親族に伝えておく
・遺言書を書く
対策方法について見ていきましょう。
クレジットカードやネット銀行などのデジタル遺産の種類が多いほど、残された遺族は手続きに苦労するため、生前に不要なサービスを解約しておきましょう。
また解約するだけでなく、必要なアプリをスマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスで一括管理できるようにしておくと、遺族が調べる手間が少なくなり、手続きをしやすくなります。
デジタル遺産のアカウントを、亡くなる前に親族に伝えておきましょう。
メールアドレスやパスワードなどアカウントへのログイン情報を、リストにして渡しておくと遺族が手続きをスムーズに進められます。
デジタル遺産や不動産など、すべての遺産の分割方法を定めた遺言書を作っておくことも手段のひとつです。
遺言書には、自分で作成する自筆証書遺言と、公証人と呼ばれる専門家に作成を依頼する公正証書遺言の2種類があります。自筆証書遺言は無効になりやすく、改ざん・紛失のリスクがあるため、公正証書遺言を作成しましょう。
遺言書に書き忘れてしまった遺産が後から見つかることを考え、予備的にどのように分配するのかを記しておくと、遺産分割トラブルを防げます。
デジタル遺産は、親族が頭を悩ます手続きのひとつです。
手続きが完了しなければ、残された遺族がサブスクリプションサービスの費用を払い続けたり、相続税の申告漏れでペナルティを受けたりする可能性があります。
生前に不要なサービスの解約やデジタル遺産のアカウントを親族に伝えておきましょう。また親族で話し合ったうえで遺言書を作成しておくと、遺産分割で揉めずに済みます。
生前対策を考えている方は、もめ事を減らすために相続の専門家である弁護士への相談をおすすめします。弁護士探しで迷っている方は、お悩みポストで相談できる弁護士ネットをご利用ください。さまざまな相続手続きに詳しい弁護士からのアドバイスを受けられます。
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