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2025.10.09

【薬剤師が解説】夏の疲れを引きずらないで!秋バテの正体と今日から始める対策法

夏バテだけじゃないホ

秋になって涼しくなってきたのに、
・朝起きても疲れが取れない…
・なんとなくやる気が出ない…
・食欲も落ちてきた…
そんな不調を感じたことはありませんか?

実はそれ、「秋バテ」かもしれません。

夏の疲れを引きずったまま、寒暖差の激しい季節を迎えることで、自律神経が乱れ、心身にさまざまな不調が現れるのが秋バテの特徴です。
本記事では「秋バテの原因と症状」「市販薬やサプリの活用法」「予防・改善のための生活習慣」について解説します。つらい秋の不調に悩まされる前に、予防法・生活での注意点を確認して秋を迎えましょう。

秋バテってなに?

秋バテとは、夏から秋への季節の変わり目に現れる体の不調のことです。夏から秋にかけては、日中の気温差だけでなく日中と夜間の寒暖差もあり、体への負担がかかりやすくなります。一般的な夏バテが暑さによる体調不良であるのに対し、秋バテは気温変化や夏場の疲れの蓄積による複合的な症状として現れます。

しかし、原因を知って対策をすることで、秋バテは予防・改善することができます。自律神経が乱れてしまうと、夏バテより辛い症状になることもあるので注意しましょう。

秋バテって知ってた?

主な症状をチェック

秋バテの症状は大きく2つ、「身体的症状」と「精神的症状」に分けられます。

①身体的症状

秋バテの症状は多岐に渡ります。最も多く見られるのが全身の疲労感で、体のだるさなかなか疲れが取れない状態が続きます。

その他にも頭痛肩こり慢性的な関節の痛みめまい立ちくらみを感じるケースもあります。また、手足の冷えや口やのどの渇きといった症状が現れる場合もあります。胃腸症状としては食欲不振が代表的で、胃もたれ胃の不快感を伴うことがあります。下痢や便秘などの腸の不調、吐き気を感じる場合もあります。
このように多種多様な症状が秋バテとされますが、必ずしも秋バテのせいだけでその症状が発生しているというわけではなく、他の病気が隠れている可能性もあるので、長引くようであれば注意してください。

②精神的症状

精神面や神経系では、やる気が出ない無気力感朝起きるのがつらいといった症状が特徴的です。よく眠れない、目が覚めるなどの睡眠障害がみられる方もいます。その他にもイライラしやすい、集中力の低下や抑うつ感を感じるといったケースもあります。
紹介した症状が複数同時に現れることが多く、特に疲労感と睡眠の質の低下は秋バテの代表的な症状です。

心当たりないホ?

秋バテの原因って?

秋バテは複数の要素が重なって起こります。そのため、何が原因と一言で言い表すことは難しいですが、自律神経の乱れには一番注意が必要です。

自律神経の乱れにも様々な原因があります。夏場に冷たいものを摂り過ぎることで起こる「内臓冷え」や、エアコンと外気の温度差による「冷房冷え」などが代表的なものであり、気温や気圧の変化などが重なって自律神経が乱されてしまいます。

また、日照時間の減少による影響もあります。秋になると日照時間が短くなり、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌が減少してしまいます。セロトニン不足はストレスや疲労、イライラ感、不眠などといった症状に繋がるため、日光を浴びることは重要です。

さらに、夏場の疲労蓄積が秋になって表面化することもあります。夏バテで食欲が低下してしまっていた場合には、必要な栄養素が不足している状態が続き、体の回復力が低下します。

自律神経の乱れ、日照時間、疲労の蓄積などが秋バテの根底に存在しています。

自律神経を整えるのが重要だホ!

症状別:市販薬・サプリメントの選び方

適切な市販薬やサプリメントを選択することで秋バテの各症状の緩和が期待できます。ただし、市販薬は一時的な症状緩和を目的とするものであり、根本的な改善にはならないこともあるのでご理解ください。ここでは、主な症状である「疲労・だるさ」「睡眠」「食欲低下」について紹介します。

【疲労・だるさ】の症状がある場合

秋バテによる疲労・だるさには、エネルギー産生(さんせい)をサポートする成分が配合された市販薬がオススメです。代表的な成分としてビタミンB群製剤が挙げられます。B1・B2・B6・B12などが糖質・脂質・タンパク質をエネルギーに変換するのに役立ち、疲労回復や疲労感の改善に効果が期待できます。主な製品として「アリナミンEXプラス」「チョコラBBプラス」などが挙げられます。

その他、L-システイン配合製剤と呼ばれる「ハイチオールCプラス2」等は、アミノ酸の一種であるL-システインが含まれ、体内代謝を活性化し、エネルギー産生酵素の働きを助けて全身倦怠に効果が期待できます。

【睡眠障害】の症状がある場合

市販の睡眠薬に含まれる有効成分にジフェンヒドラミンと呼ばれる成分があります。これは、病院などでよく処方される睡眠薬とは異なるタイプで、抗ヒスタミン作用により効果を発揮します。
薬局で抗アレルギー薬(アレグラやアレロックなど)をもらう際に薬剤師から「眠気に注意してください」と言われたことはありませんか?ジフェンヒドラミン配合の睡眠薬は、この副反応を利用したものとなっており、処方される睡眠薬よりは効果が優しいものであり、依存性も少ないとされています。主な製品として「ドリエル」「リポスミン」などが挙げられます。

ただし、いくら依存性が少ない睡眠薬とはいえ、睡眠薬とはいえ、これらの睡眠薬はあくまでも一時的な使用に留めることが重要であり、数回服用しても改善しない場合は医師に相談しましょう。

また、漢方薬による睡眠改善も期待できます。「加味帰脾湯(かみきひとう)」「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」などが様々あり、体質に合わせた選択が重要です。薬局やドラッグストアで薬剤師や登録販売者に自分の体調を説明して選んでもらうようにしましょう。

睡眠不足の症状があっても睡眠薬に依存しないように注意しよう!

【食欲低下】の症状がある場合

秋バテによる食欲不振には、胃腸機能を改善する胃腸薬がオススメです。胃腸機能を改善する健胃消化薬の多くは、オウバクやセンブリなどの生薬の苦味成分が味覚を刺激し、反射的に胃液分泌を促進させます。これにより胃の運動が活発になり、食欲低下の改善が期待できます。主な製品として「大正漢方胃腸薬」「第一三共胃腸薬プラス」などが挙げられます。

また、消化を助ける「消化酵素」の働きを補う薬である「消化酵素配合薬」は、ビオヂアスターゼ・リパーゼ・プロザイムなどの酵素が炭水化物・脂肪・タンパク質の消化を直接的に助け、胃もたれや膨満感を軽減して食欲回復を促します。主な製品として「ベリチーム酵素」「タナベ胃腸薬」などが挙げられます。

胃粘膜保護薬の「スクラルファート」は、胃粘膜に保護膜を形成し胃酸刺激を軽減、胃の不快感改善により食事への意欲を回復させます。主な製品として「スクラート胃腸薬」が挙げられます。
六君子湯(りっくんしとう)などの漢方薬は、複数の生薬が相互作用し胃腸機能を総合的に改善、自律神経バランスも整えます。

生活面での秋バテ対策は…?

根本的な秋バテ対策は生活習慣の改善にあります。ここでは「食事」「睡眠」のポイントについて紹介します。取り入れられることからやってみてください。

食事のポイント

季節の変わり目で体調を崩しやすい秋バテ。予防には栄養バランスの整った食事が重要となります。
重要な栄養素は「ビタミンB」「タンパク質」「鉄分」「ビタミンC」です。特に意識したいのがビタミンB群で、豚肉や玄米、豆類から摂取できるビタミンB1は、糖質をエネルギーに変換し疲労回復を促進します。

また、筋肉の修復に必要なタンパク質は、肉類・魚類・卵・大豆製品から良質なものを選びましょう。鉄分不足による貧血も秋バテの原因となるため、牛肉やレバー、ほうれん草から摂取し、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が向上します。柑橘類やキウイに含まれるビタミンCは抗酸化作用で活性酸素を除去し、疲労の一因である酸化ストレスを軽減する可能性があります。

その他、自律神経の乱れで血行が悪くなるため、生姜やにんにく、根菜類など体を温める食材を積極的に取り入れ、胃腸の働きを活性化させることも大切です。

バランスの良い食事を心がけよう!

睡眠のポイント

良質な睡眠は秋バテ回復の基本となります。良質な睡眠をとるには睡眠環境を整えることも重要です。寝室の環境として「光・音・温度・湿度」の4点をまずは調整しましょう。明るさは0.3~1ルクスが推奨されています(目安として、月明かりが約0.5~1ルクスとされています。)

次に音ですが、音環境については40デシベル以下が推奨されており、これは図書館に相当する静かさです。

また、温湿度については室温は26℃程度、湿度は50%前後が良いとされています。

その他にも、睡眠改善のストレッチや入浴の工夫、睡眠前の過ごし方について様々な対策があります。気になる方は「睡眠障害対処12の指針」と検索してみてください。

こんな時は受診をしましょう

市販薬で対応してもなかなか改善しない場合や悪化してしまうこともあるかと思います。睡眠障害食欲不振疲労感1週間以上継続している場合は受診するのがおすすめです。そのほかにも、日常生活に支障があるほどの不調が見られる場合も受診するようにしてください。仕事や家事ができないレベルのだるさ立ちくらみめまいが頻繁に起こる場合、体重の急激な減少(1ヶ月で5%以上)が見られる場合は、秋バテではなく別の疾患が隠れている可能性があります。

また、精神症状が強い場合や長期間続いている場合には受診が必要です。強い不安感や恐怖感、気分の極端な落ち込み、幻覚や妄想などの症状が現れた場合は、精神科心療内科で相談するようにしてください。

まとめ

秋バテは現代人に多く見られる症状で、適切な対策により改善が可能です。秋バテは夏場の疲労蓄積急激な気候変化により自律神経が乱れることで起こる複合的な症状であることを認識しましょう。夏バテと同様に長期間続くことがあるため、早期の対策が重要になります。

症状別の適切な市販薬選択では、今回取り上げた「疲労・だるさ」「睡眠障害」「食欲低下」について、症状に応じた市販薬を選択できるようにしましょう。ただし、これらは対症療法であることを理解し、根本的な改善のために生活習慣の見直しを並行して行うことが大切です。秋バテを解消するには、生活習慣を改善することが基本であり、市販薬やサプリメントは補助であることを忘れないでください。栄養バランスの取れた食事、規則正しい睡眠、適度な運動が根本的な改善につながります。

特に、季節の変わり目は体調管理により注意を払い、体の変化にアンテナを張り無理をしないようにしてください。

最後に、専門家への相談を躊躇しないことも重要です。症状が長期間続く場合や日常生活に支障がある場合は、早めに医療機関を受診してください。また、市販薬の選択に迷った際は、薬剤師や登録販売者にご相談いただくことをオススメします。今回ご紹介した対策を参考に、体調管理に努めていただき、健やかな秋をお過ごしください。

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トリス(薬剤師T)

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元MR、現在は調剤薬局薬剤師とWebライター
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