Lawyers Column

2025.07.24

医薬部外品・薬用化粧品・化粧品の違いを薬剤師が解説!

何が違うの?

ドラッグストアや薬局などで商品を手に取った時、「医薬部外品」「医薬部外品」「化粧品」といった表示を目にしたことはありませんか?同じような商品なのに、なぜ異なる表示がされているのか疑問に思ったことがある方もいるかもしれません。

実は、これらの違いを理解することで、あなたの目的に適した商品を選びやすくなります。例えば、ニキビ予防をしたいのか、それとも日常的なスキンケアで肌を清潔に整えたいのかだけでも、選ぶべき商品のカテゴリーが変わってきます。

今回は「医薬部外品」と「化粧品」の違いについて解説します。

「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」の基本的な違い

ここでは「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」の定義や使用目的、どのような基準で販売されているのかについて紹介していきます。

法的な位置づけと効果の段階

「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)によって以下のように定義されています。(以下、引用となります)

・医薬品
次に掲げる物をいう。
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

・医薬部外品
次に掲げる物であって人体に対する作用が緩和なものをいう。
一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であって機械器具等でないもの
 イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
 ロ あせも、ただれ等の防止
 ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

・化粧品
「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚もしくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
(引用おわり)

(引用元:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第2条)

これらの条文をまとめると以下のようになります。

承認・届出の違い

「医薬品」は厚生労働大臣による承認、「医薬部外品」は、厚生労働大臣又は各都道府県知事の承認が必要となります。また、承認が下りるためには、有効成分の濃度品質安全性等の審査が必要になります。一方、「化粧品」は各都道府県知事に届出て受理されれば販売が可能であり、成分の含有量などのチェックはありません

この違いにより、一例ですが、医薬部外品は「ふけ・かゆみを防ぐ」「毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ」などと明確に効果を表示できますが、化粧品は「頭皮、毛髪を清浄にする」「香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える」といった表現に留まります。

よく聞く表現だホ!

安全性の基準

「医薬品」や「医薬部外品」は化粧品よりも厳しい安全性基準が設けられています。使用前には非臨床・臨床試験のデータなどが必要となり、加えて製造から販売まで厳格な品質管理も求められます。一方、化粧品も安全性は重要ですが、医薬部外品ほどの厳格な試験は義務付けられていません。

化粧品と医薬部外品(薬用化粧品)の違いは?

「薬用」と書かれた化粧品を目にしたことはありませんか?医薬部外品の中にも化粧品に分類される製品があり、それが「薬用化粧品」「薬用歯磨き」と名称づけられるものです。つまり、薬用化粧品=医薬部外品と考えて問題ありません。「薬用」という表記は、有効成分が配合されていることを示すマークであり、なんらかの効能効果を持っているということを表しています。

有効成分の有無

「薬用化粧品」は医薬部外品に分類されるため「有効成分が含まれていること」が求められます。また、医薬部外品に分類されるため、その他の医薬部外品と同様に、厚生労働大臣又は各都道府県知事の承認が必要になります。ただ、使用実績のある有効成分の一定基準内であれば、有効性・安全性に関する資料の提出は不要となっています。

一方、化粧品には有効成分の概念がありません。様々な成分が含まれていますが、その効果を医学的に証明する必要はなく、その代わりに効果・効能を謳うことができません。

有効成分の有無は大きな違いだホ!

効果・効能表示の違い

ここでは具体的に、化粧品と医薬部外品(薬用化粧品)ではどのような表現の違いがあるのかについて紹介します。

「医薬部外品(薬用化粧品)」で表示できる効果・効能の一例

・毛髪、頭皮の汗臭を防ぐ
・あせも、しもやけ、ひび、あかぎれ、にきびを防ぐ
・日焼けによるしみ、そばかすを防ぐ
・体臭、汗臭及びにきびを防ぐ

「化粧品」で表示できる効能の一例
※化粧品で表示できる表現は限定的となっており、2025年5月末現在で56項目が示されています。ここでは一例を紹介します。

・香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える
・頭皮、毛髪にうるおいを与える
・肌荒れを防ぐ
・(洗浄により)ニキビ、あせもを防ぐ

このように、化粧品の方がすこしぼんやりした表現となっています。

パッケージでの見分け方と表示の読み方

商品のパッケージで最初に確認すべきは、「医薬部外品」や「薬用」の表示の有無です。これらの表示がある製品は医薬部外品(薬用化粧品)となり、「化粧品」よりも効果が期待できる商品といえます。

その他にも、化粧品と医薬部外品(薬用化粧品)では表示が異なる箇所がいくつかあるので、見分けやすい2つのポイントを紹介します。

ポイント①薬用化粧品特有の外見的な特徴の有無

医薬部外品(薬用化粧品)の場合は、以下の外見的な特徴があります。

・商品名に「薬用」と入っている
・パッケージの目立つ場所に「医薬部外品」の表示がある
・成分表示で「有効成分」と「その他の成分」の2項目に分かれている

これらに該当するものがあれば、その商品は医薬部外品(薬用化粧品)となります。

ポイント②有効成分の記載場所

薬用化粧品では、成分表示の最初「有効成分」が別枠で記載されています。これに対し、化粧品では全成分が配合量の多い順に記載されています。薬用化粧品は医薬部外品に該当するので、有効成分が何かはっきりと記載する必要があります。

薬用化粧品の成分表示例

上記の2つのポイントを踏まえ、薬用化粧品と化粧品では実際にどのように表示が異なるのか違いを見てみましょう。先ほどもお伝えしましたが、医薬部外品(薬用化粧品)では【有効成分】と【その他の成分】の2項目になっています。化粧品では【全成分】として配合量が多い順に記載されており、1%以下の成分に関しては順不同となっています。

「医薬部外品(薬用化粧品)」の成分表示例は以下の通りです。
【有効成分】グリチルリチン酸2K
【その他の成分】水、エタノール、BG、グリセリン…
※有効成分が別枠で記載されている

「化粧品」の成分表示例は以下の通りです。
【全成分】水、BG、グリセリン、PEG-60水添ヒマシ油、カニナバラ果実エキス…
※配合量が多い順番に記載

今度お店でチェックしてみよう!

注意すべきポイント

ドラッグストアやオンラインショップ等で様々な謳い文句がありますが、よく勘違いされやすい3つの文言があります。それは「薬用成分配合」「医師監修」「〇〇医推奨」です。

・「薬用成分配合」と書かれた化粧品:薬用成分が入っていても承認を受けていない場合は医薬部外品ではありません。

・「医師監修」「〇〇医推奨」:よくある広告表現ですが、この表現があるからと言って効果や安全性が保障されるものではありません。

医薬部外品には「医薬部外品」「薬用〇〇」といった表記がされています。特に「薬用成分配合」と書いてあると効果があるように見えます。「薬用成分配合」と書いてあっても、基準よりも配合量が少なく効果が無かったり、逆に配合量が多すぎて副作用が出てしまったりする可能性もあるので注意しましょう。

パッケージの内容を信じすぎないよう注意だホ!

目的によって医薬部外品と化粧品を使い分けよう

医薬部外品の化粧品(薬用化粧品)には有効成分があり、期待される効果があります。ここでは、医薬部外品と化粧品を選ぶ際に注目してほしい点を紹介します。

【予防・改善】したい場合には「薬用化粧品」

ふけ・かゆみやニキビ、シミ・そばかす対策のような具体的な悩みがある場合は、薬用化粧品を選ぶことをおすすめします。個々の成分の有効性等については触れませんが、各症状に適した有効成分が含まれる医薬部外品を使用することが望ましいです。

【日常ケア】なら「化粧品」

特別な肌悩みがなく、日常的な保湿や洗浄、日焼け止め、美化といった目的の場合は化粧品で十分です。

注意事項と副作用について

医薬部外品も化粧品もいいことばかりではありません。経験がある方もいらっしゃるかも知れませんが、身体に合う・合わないが存在します。それぞれ使用する際に注意してほしい点について取り上げます。

医薬部外品(薬用化粧品)使用時
・有効成分による刺激やアレルギー反応の可能性を考慮する
・使用開始時は少量から試す
・赤み、かゆみ、刺激感が出たら使用を中止する
・複数の薬用化粧品を同時使用する際は成分の重複に注意する

化粧品の使用時
・香料や防腐剤によるアレルギー反応
・過度な洗浄による皮膚バリア機能の低下

薬用化粧品には有効成分が配合されているため、化粧品よりも副作用のリスクが若干高いということです。いずれにおいても新しい製品を使用する場合にはパッチテストを行いアレルギー反応が無いかチェックしてから使用することをオススメします。

合わないと感じたらすぐに使用を中止するホ!

まとめ

医薬部外品(薬用化粧品)と化粧品の違いについて紹介してきましたが、ドラッグストアや薬局でどちらの商品か見分けることはできそうですか?最後に医薬品・医薬部外品・化粧品の大まかな使い分けを簡単にまとめます。

・疾患の改善・治療→医薬品(病院・クリニック受診)
・具体的な予防・衛生効果を求める→医薬部外品(薬用化粧品)
・日常的なケア(保湿や洗浄、美化など)→化粧品

重要なのは、どちらが優れているかではなく、自分の目的と肌状態に合った商品を選ぶことです。薬用化粧品だから必ず効果があるわけでも、100%安全というわけでもありません。

商品選びで迷った際は、パッケージの表示をよく確認し、必要に応じて薬剤師や登録販売員に相談してください。どのような目的で使用するのか。どのような状態になりたいのか伝えるようにしてください。適切な商品選びが、あなたの美容と健康をサポートする第一歩になります。

こちらの記事もおすすめ!

*

Writer

*

トリス(薬剤師T)

薬局で知りたい・聞きたい情報を発信中

元MR、現在は調剤薬局薬剤師とWebライター
YMAA認証(薬機法医療法 広告遵守 個人認証)

https://pharmacist-t.com/
https://x.com/pharmacistT89

About

*

⽇常⽣活や仕事で直⾯しがちなトラブルの解決⽅法や対策を、弁護⼠ねっとのマスコットキャラクターであるふくろうとともに楽しく学べるコンテンツ。法律に詳しくない⼈も理解できる記事づくりを⽬指しています。その他にも、掲載弁護⼠へのインタビュー記事なども随時更新!弁護⼠選びの参考にしてみてください。

どんどん更新していくよ!

*