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2025.06.11
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ニュースで目にする機会も多い熱中症ですが、経験したことはありますか?もしかしたら熱中症の一歩手前だったかも?という経験はありませんか?
熱中症は毎年多くの方が受診、緊急搬送され、最悪の場合には命に関わることのある病気です。また、屋外の暑さだけでなく、室内での熱中症も多く発生しています。しかし、熱中症は正しい知識と対策を知ることで十分な予防が可能です。今回は、自分自身や家族の熱中症対策に役立つ実践的な情報をお伝えします。

熱中症はあらゆる場面で起こる可能性があります。また、どんな状態になると危険なのか知っておくことで、熱中症が重症化する前に手を打つことができるようになります。ここでは「熱中症のメカニズムと原因」「重症度」について見ていきましょう。
熱中症は、高温多湿な環境下において、体温調節機能がうまく働かなくなることで発症する病気です。人間の体は通常、汗をかくことや皮膚からの熱の放散によって体温を一定に保っています。しかし、外気温や湿度が高すぎると、これらの体温調節機能が追いつかなくなり、体内に熱がこもってしまい、身体にさまざまな影響をおよぼします。
熱中症は「環境・身体・行動」という3つの要因が関係しあって起こる病気です。それぞれの要因は以下の通りです。
環境要因
・気温・湿度が高い
・風が弱い
・強い日差し
・締め切った室内
・エアコン、扇風機等の未使用
身体的要因
・高齢者や乳幼児
・肥満
・糖尿病、心疾患、腎疾患などの慢性疾患
・下痢やインフルエンザでの脱水状態
・二日酔いや寝不足による体調不良
行動要因
・激しい運動
・長時間の屋外作業
・水分補給の不足
・通気性の悪い衣服の着用
特に重要なのは、熱中症は屋外だけでなく、室内でも発症するということです。近年、エアコンを使用していない室内での熱中症が増加しており、外出時だけ注意するのではなく、家庭内での対策も欠かせません。
特に子供や高齢者・ペットがいるご家庭は我慢せずエアコンを使用しよう
日本救急医学会熱中症は重症度によって「Ⅰ~Ⅳ度」の4段階に分類されます。
Ⅰ度は現場での応急処置により対応可能な状態です。主な症状として、めまいや立ちくらみ、筋肉のこむら返り、大量の発汗が見られます。これらの症状は比較的軽微ですが、放置すると悪化する可能性があるため早急な対応が必要です。
Ⅱ度は、医療機関への速やかな受診が必要な状態です。頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感といった症状に加え、集中力や判断力の低下、身体に力が入らないなどの症状が現れます。
Ⅲ度は、入院を含む集中的な治療が必要な危険な状態です。意識障害や痙攣などの症状が現れ、多臓器不全を引き起こす可能性もあります。直ちに救急車を呼ぶことが重要です。
Ⅳ度は、40℃以上の高体温、より意識レベルが低下した状態であり、早急な集中的な治療が必要な状態です。
暑さにやられただけ、と軽視しないのが大切だホ!

熱中症と言われるとどのような症状を想像しますか?汗がダラダラ流れている様子?運動していないのに息が上がっている様子?フラフラと倒れてしまう様子?人によって思い描く熱中症のイメージが異なるように、熱中症では多様な症状が現れます。ここでは熱中症の症状について見ていきましょう。
熱中症の初期症状を早期に発見することは、重症化を防ぐために極めて重要です。しかし、これらの症状は日常的な体調不良と似ていることが多く、見逃されがちです。以下に、熱中症の一般的な初期症状例を紹介します。しかしこれらはあくまでも参考程度にとどめ、初期症状がなくなってからも身体に不調が残る場合は、医療機関の受診も検討してください。
身体的な症状
・めまい、立ちくらみ
・大量の発汗、または逆に汗が出なくなる
・筋肉の痛み、こむら返り
・手足のしびれ
・気分が悪い、胸がムカムカする
・倦怠感
精神的・認知的な症状
・集中力、判断力の低下
・いつもと違う行動
・反応が鈍い
体温に関する変化
・体が熱い
・皮膚が赤くなる
・皮膚が乾燥する(発汗が止まった場合)
目立った異変が起きづらいからこそ、「なんかいつもと違う…」の違和感を大切に!
熱中症の初期症状を他の体調不良と見分けるためには、重要なポイントがいくつかあります。「環境との関連」「症状の現れ方」「体温の変化」の3つのポイントを確認してみましょう。
暑い日の屋外活動後や、エアコンのない室内での作業後、車内での待機後などに症状が現れた場合は、熱中症の可能性が高くなります。
熱中症は比較的急激に症状が現れ、数分から数時間で進行することが多いです。風邪などの他の疾患とは異なり、徐々に悪化するのではなく、短時間で状態が変化します。
体温も重要な指標で、普段より体温が高い、皮膚が熱く感じられる、顔が赤くなるなどの体温上昇のサインは熱中症の重要な手がかりとなります。
夏場は特に自分や周りの人の様子に気を配ろう
特に注意してほしいのは、脳や神経系に影響を及ぼしている可能性がある症状です。意識レベルの変化は最も重要で、呼びかけに全く反応しなかったり、呼びかけに対する反応が遅くなったり、普段と違う受け答えをしたり、ぼんやりした状態が続いたりする場合は、脳への影響が始まっている可能性があります。
また、吐き気や嘔吐は、体温調節中枢の障害や脱水の進行を示す重要なサインです。特に、水分摂取ができない状態になると急速に脱水が進行し、危険な状態になる可能性があります。
加えて、汗の異常も見逃してはいけない症状です。大量の発汗の後に突然汗が止まった場合も要注意です。さらに、筋肉の異常として、手足に力が入らなくなったり、筋肉の硬直や痙攣(けいれん)が起こったりする場合は、電解質バランスの異常や中枢神経系への影響を示しており、速やかな対応が必要です。
異変を感じたら救急車を呼ぶことも視野に入れておくんだホ!

熱中症の人を見かけた際にどのような対応ができるでしょうか?状況によっては救急車を呼ぶ必要もあります。ここでは、「軽症」から「中等症以上」の対応方法について確認していきましょう。
Ⅰ度の熱中症では、適切な現場での応急処置により回復が期待できます。やるべきことは「環境の改善」「体の冷却」「水分・電解質の補給」です。順を追って紹介します。
①最優先で行うことは「環境の改善」です。まずは患者を涼しい環境に移しましょう。エアコンの効いた室内への移動が理想的ですが、それが困難な場合は日陰で風通しの良い場所を選びます。車のエアコンを利用することも効果的です。
②次に「体の冷却」です。衣服を緩めたり脱がせたりして、体からの熱の放散を促します。特に効果的なのは、首、脇の下、太ももの付け根といった太い血管が皮膚に近い部分を冷やすことです。これらの部位を冷やすことで、効率的に体温を下げることができます。濡れタオルで体を拭いたり、うちわや扇風機で風を送ったりすることも有効です。
③最後に「水分・電解質の補給」ですが、これは意識がはっきりしており、嘔吐がない場合に限って行います。経口補水液が最も適していますが、スポーツドリンクでもOKです。塩分も同時に補給することが重要です。
④対処後も状態を確認し、体温、意識レベル、呼吸状態を定期的に確認し、症状の改善または悪化の有無を注意深く観察します。30分程度様子を見て、改善しない場合や悪化する場合は受診しましょう。
中等症以上の症状が見られる場合は、現場での応急処置と並行して、速やかに医療機関への搬送を手配する必要があります。意識障害がある、体温が40℃以上、呼びかけに対する反応が鈍い、歩行困難、痙攣(けいれん)を起こしている、嘔吐が持続しているといった症状では、直ちに救急車を呼びましょう。
救急車到着までの間も、軽症時の対応に加えて、より積極的な対応を行います。氷嚢(ひょうのう)の使用や冷水での冷却など、より効果的な冷却方法を試みます。意識レベルを細かく確認し、呼吸・脈拍の観察も重要です。嘔吐に備えて体を横向きにするなど、誤嚥(ごえん)を防ぐ体位の確保も必要です。様々な対応をしながら救急車の到着を待ちましょう。
良かれと思って行った処置が、かえって症状を悪化させる場合もあります。よくやってしまいがちな、特に注意してほしい3つの行動を紹介します。
塩分を含まない水だけを大量に摂取すると、血液中のナトリウム濃度が低下し、水中毒を引き起こす可能性があります。経口補水液やスポーツドリンクの摂取が望ましいですが、近くにこれらがない場合は塩分も同時に補給することが大切です。
極端な例を挙げると、例えば体を冷やすために氷水に体全体を浸けたり、氷を直接肌に当てたりするような急激な冷却は、血管の急激な収縮を引き起こし、循環障害を招く可能性があります。段階的で効率的な冷却を心がけましょう。
意識レベルが低下している患者に無理に水分を摂取させることは、誤嚥性肺炎のリスクを高めるため危険です。意識がはっきりしない場合は、経口での水分摂取は控え、速やかに医療機関での治療を受けることが重要です。
助けるつもりが逆効果にならないよう注意だホ!

日常生活のちょっとした工夫で熱中症は予防できます。外にいる時だけでなく、普段から注意したいことも存在します。ここでは「日常生活での予防」「リスクが高い人の注意点」について紹介します。
熱中症の予防について「水分補給」「環境調整」「服装の工夫」「生活リズム」の4つの観点から見ていきましょう。
当たり前ですが、最も基本的で重要なのは適切な水分補給です。1日1.5〜2リットルの水分摂取を目標とし、のどが渇く前に飲むように心がけましょう。起床時と就寝前、毎食のタイミングでの摂取は最低限行い、外出時もこまめに水分を補給しましょう。
室温は28℃以下、湿度は60%以下を維持するよう心がけ、エアコンを積極的に使用してください。直射日光を避けるために、カーテンやすだれも活用してください。薬局で患者さんのご自宅に伺うと扇風機だけで乗り越えようとしている方がいます。我慢だけはしないようにしてください。
通気性や吸湿性の良い素材を選び、ゆったりとした服装を心がけます。帽子や日傘の使用により、直射日光を避けることも効果的です。冷却タオルや保冷剤、モバイル扇風機などの冷却グッズの活用もおすすめです。
生活リズムの管理も熱中症予防には欠かせません。十分な睡眠時間を確保し、規則正しい食事を取ることで、体調を良好に保ちましょう。また、暑さに徐々に慣れる暑熱順化(しょねつじゅんか)も重要です。暑熱順化とは、適度なウォーキングや入浴を通して ”汗をかく習慣” をつけることで、体温調整機能を正常に維持させ、熱中症に対するリスクを抑える行動です。
冒頭の身体的要因にも記載しましたが、「高齢者」「乳幼児・小児」「慢性疾患(糖尿病や心疾患など)」の方は熱中症のリスクが高く、より注意が必要となります。
高齢者の方は、体温調節機能の低下、のどの渇きを感じにくくなる、腎機能の低下などにより、熱中症のリスクが高くなります。定期的な水分摂取の習慣化、家族や周囲の方による声かけ、エアコン使用の徹底が重要となります。
乳幼児や小児は、体重に対する体表面積が大きく、体温調節機能が未熟なため、特に注意が必要です。保護者による継続的な観察、こまめな水分補給、適切な服装の選択が重要です。ベビーカー内の温度にも注意しましょう。
糖尿病、心疾患、腎疾患、高血圧などの慢性疾患をお持ちの方は、リスクが高くなります。主治医との相談、服薬の継続、体調管理の徹底、無理な活動を避けることが重要です。
家族の体調にも気を配ろう!

熱中症は適切な知識と対策により十分に予防可能です。日常生活のちょっとした工夫が熱中症予防で重要になります。家族や周囲の方に熱中症対策について共有し、安全で安心な夏を過ごしましょう。
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