
1
2024.12.25
Contents
【 目次 】
Index
春は暖かくてウキウキする反面、気分がスッキリしないことがありませんか? それは「春バテ」かもしれません。春バテは、春の環境の変化で体や心が疲れてしまう状態のことを指します。新生活や気温の変化といったストレスの影響で引き起こされることが多く、疲労感やイライラ、不眠といった様々な症状があらわれます。
この記事では、春バテがどんなものか、なぜ起こるのか、どうやって防げばいいのかを、薬剤師の視点から解説します。市販薬や病院に行くタイミングも紹介するので、新生活、春を元気に過ごすために、ぜひ最後まで確認してください。
「春バテ」とは聞き慣れない言葉かと思います。「5月病」であれば聞いたことある方もいらっしゃるのではないでしょうか。「春バテ」「5月病」どちらも新生活や春ならではの体や心の不調のことです。
春は新しいことが始まる季節でワクワクがある一方で、知らぬ間に心と体のストレスで体調を崩すこともあります。ここでは、春バテがどんなものかを簡単に紹介します。
夏バテならよく聞くけど…?
春バテは、春の季節特有の体調不良を指します。
主な症状は倦怠感、食欲不振、睡眠障害、頭痛などで、気温や人間関係をはじめとした環境変化が原因と考えられます。
冬から春への移行期に自律神経が乱れ、身体が適応しきれなくなることで起こります。特に、寒暖差が激しい日や花粉症の影響も重なり、ストレスが増加します。
多くの方に何らかの不調が生じていると言われており、規則正しい生活リズムや軽い運動が有効とされています。
春バテが注目される背景には、現代人の生活環境の変化があります。ストレス社会やデジタル機器の長時間使用で自律神経が乱れやすい中、春の気候変動がさらに負担を増大させるためです。SNSやメディアで「春バテ」が取り上げられ、認知が拡大しています。
どうして春バテが起こるのか、気になるかと思います。主な原因は前述しましたが、気温の変化だとされています。
特に近年、冬から春、春から夏の季節の移り変わりが急激に進むため、春が無く気温が一気に上下することが少なくありません。
また、その他にも、進学や就職、異動などさまざま生活の変化によって春バテと言われる状態になってしまいます。ここではそれぞれの原因について紹介します。
「気候と環境の変化」に関する主な原因は次の2点です。
・急激な気温変化
・花粉や黄砂によるアレルギー反応
近年の春は冬の寒さと夏の暑さの差が非常に激しく、体温調整に関わる自律神経が乱れやすい状態となります。
この気温の変化に対して「どっちに合わせればいいの?」と体が混乱してしまい、交感神経(活動的なスイッチ)と副交感神経(リラックスのスイッチ)の切り替えに体がついていくことができず、さまざまな不調が現れてしまうという仕組みです。今はまだ自覚がない人の体にも、知らぬ間にストレスが生じていることもあります。
また、花粉や黄砂の時期でもあり、鼻水や咳、くしゃみといったアレルギー反応も相まって、より一層体にストレスがかかってしまいます。
「生活リズムとストレスの影響」に関する主な原因は次の2つです。
・進学、就職による生活リズムの変化
・新生活のストレス
春は新しい生活が始まる時期です。新しい学校、クラス、職場など新たな人間関係が始まり、プレッシャーやストレスが少なからず毎日発生します。小さなストレスの蓄積が春バテになる1つの原因です。
また、新しい生活が始まるということは生活リズムが変わることも多々あります。今までと違った環境での生活やルーティンの変化も、ストレスに繋がってしまいます。
以上のように、気温の変化とストレスの2つが影響し合うことで「春バテ」を生じさせます。
春は特にストレスを感じやすい季節ってことだホ!
春バテになると、体や心にさまざまな症状が現れます。ここでは、よくある症状を紹介するので当てはまるものがあるか確認してみてください。
体に現れる主な症状は以下の通りです。
例:便秘、不眠、眠気、下痢、倦怠感、肩こり、頭痛、めまい、手足の冷え、動悸など
春バテで一番多いのは、体がだるいこと。朝起きてもスッキリしない、なんだか体が重い、すぐに疲れてしまう。頭がボーッとしたり、肩や首が凝ったりすることもあります。寝ているはずなのに日中眠い、食欲の低下や胃痛など、多岐に渡る症状がみられます。
心に現れる主な症状は以下の通りです。
例:イライラ、気分の落ち込み、憂鬱感、不安、孤独感など
春バテは体だけでなく、心にも影響することもあります。普段よりもイライラしやすくなったり、気分が落ち込んだり、集中できなかったり、不安感が強くなったりすることもあります。些細な事ですが全部春バテのサインかもしれません。しっかり生活の改善から行うようにしましょう。
あなたのその不調も「春バテ」のせいかも?!
自律神経の乱れによって生じる「春バテ」ですが、対策として下記2点を工夫することが大切です。
・日常生活の工夫
・生活環境の整備
それぞれの具体的な方法について紹介していきます。生活に取り入れることができるか試してみてください。
生活の中で大切なポイントは4つあります。
・睡眠時間の確保(規則正しい生活)
・栄養バランスのよい食事
・運動やストレッチ
・入浴
何よりも大切なのは規則正しい生活です。
しかし、新しい生活では生活リズムも分からないのが現実問題かと思います。そこで、まずは1番調整しやすい「睡眠時間の確保」から始めてみるのがおすすめです。十分な睡眠時間の確保と質の高い睡眠は心と体の回復に重要です。何よりも最初に、睡眠時間の確保だけは心がけましょう。
続いて栄養バランスについてですが、ビタミンA、B1、C、E、カルシウム、マグネシウムが主に春バテに関わってきます。それぞれの栄養素を多く含む食材は次の通りです。
・ビタミンA:レバー、うなぎ、チーズなど
・ビタミンB1:豚肉、うなぎ、ゴマなど
・ビタミンC:アセロラ、ブロッコリー、キウイなど
・ビタミンE:アーモンド、豆乳、ひまわり油など
・カルシウム:えび、ひじき、パルメザンチーズなど
・マグネシウム:あおさ、わかめ、昆布など
ぜひ食事を摂る際の参考にしてみてください。
また、運動やストレッチ、入浴に関してはリフレッシュ・リラックス効果があります。散歩や短時間の入浴の時間を取ることから始めてみるのもおすすめです。ただし、激しい運動や熱いお風呂などはさらに身体に負担をかけることになるので避けましょう。
できることから始めていこう!
環境面からの春バテ対策は、アレルギー(花粉症、黄砂)対策や温度調整、睡眠環境を整えることが主なものとなります。それぞれ具体的な対策は以下の通りです。
・アレルギー対策:家の清潔を保つ
・温度調整:エアコンの使用や衣服による調整
・睡眠環境:睡眠に集中できる環境整備(空間・光・音・温度・湿度)
はじめに、家の清潔を保つことについてですが、アレルゲン(花粉や黄砂)を室内に取り込まないこと、空気清浄機などで取り除くことの2点が重要となります。
続いて温度調整についてです。冬の室温は18℃以上がWHOのガイドラインでは推奨されています。家にいる場合はエアコンで調整可能ですが、外出時はカーディガンなど上着を1枚活用するようにしましょう。
最後に睡眠環境です。ポイントのみの紹介となりますが、良い睡眠環境の指標は以下の通りです。
・空間:睡眠に必要な物(ベッド、布団)以外は置かない
・光:寝る時→30ルクス以下(参考:蛍光灯の明かりが約500ルクス)
睡眠維持→1ルクス程度(参考:月明りが約0.3ルクス)
・音:40デシベル以下(参考:図書館の静かさ)
・温度:布団の中→33℃前後
室温→26℃前後
・湿度:50%前後
家具の配置を変えたり、室内環境を整えたりすることで睡眠の質が変化することあります。実践してみてください。
以上のように、生活の改善を行いながら、ストレスが蓄積しない環境を作ることが重要です。
春バテだと思って放置していたら、別の病気が隠れていることがあります。ここでは、どんなときに受診すべきか、チェックリスト形式にて紹介します。
ストレス度をチェックしてみましょう。日本臨床内科医会が作成している「わかりやすい病気のはなしシリーズ19、自律神経失調症」にストレス度についてのチェックリストがあります。以下引用となります。
●からだのチェック
・よく頭痛がする、頭が重い
・胸が圧迫されるようで苦しい
・よく肩がこる
・めまいがする
・腰が痛い
・全身がだるい感じがする
・のどがつまる感じがする
・手足がしびれる
・手足が震える
・下痢や便秘になりやすい
●心のチェック
・これから先の自信がない
・朝、気分がすっきりしない
・朝、早く目が覚める
・根気が続かない
・なんとなく不安でイライラする
・仕事にとりかかる気分になれない
・物事がなかなか決断できない
・人に気軽に会えない
・集中力がなくなる
・ふと死にたくなる
引用:一般社団法人日本臨床内科医.”あなたのストレス度をチェックしてみましょう”.わかりやすい病気のはなしシリーズ19「自律神経失調症」.2002-02,https://www.japha.jp/doc/byoki/019.pdf,9ページ
以上20項目です。
当てはまるものが【10個以上】の方はかかりつけ医に相談し、適切な治療を受けてください。【5~9個】の方も要注意です。ストレス対策をし、規則正しい生活を心掛けましょう。【5個未満】の方でも、気がかりな事があればかかりつけ医や近くのお医者さんに相談してみましょう。
なお、かかりつけ医がない場合、精神症状が強ければ「心療内科」や「精神科」、便秘や下痢などの症状が強い場合には消化器内科など症状に応じた診療科の受診も検討してみてください。
自分では気づいていないけどストレスを感じてるかも…
「春バテ」は正式な病名ではありません。今まで紹介したようなさまざまな心と体の症状が現れます。基本的には生活習慣を見直したり、時間が経過したりすることで改善してしまうことがほとんどです。市販薬を使用する場合は1~2週間を目安に使用し、改善しない場合は受診するようにしましょう。
ここでは、サプリメントや医薬品を使った治療について紹介します。
「春バテ」や「5月病」での心や体の疲労に漢方薬が使用されるケースがあります。よく使用される漢方薬の一例を紹介します。
・補中益気湯:体力虚弱で、胃腸の働きが衰えて、四肢倦怠感が著しいなど
・半夏厚朴湯:気分がふさぎ、喉や食道に違和感がある場合など
・柴胡加竜骨牡蛎湯:比較的体力があり、動悸、不眠、イライラなど
・抑肝散加陳皮半夏:虚弱な体質で、神経の高ぶりがある場合など
ただし漢方薬については注意も必要です。漢方薬は体質や状況に応じて使用される漢方が異なります。市販の漢方薬を購入される場合は、薬剤師や登録販売者に状況を説明して選んでもらうようにしましょう。
前述した「ビタミンA、B1、C、E、カルシウム、マグネシウム」が摂取できるように心がけましょう。それぞれの1日摂取量の目安は以下の通りです。それぞれ年齢・性別で異なりますが、ここでは大まかな数値として記載します。
・ビタミンA:650~900µg
・ビタミンB1:1.1~1.4㎎
・ビタミンC:100㎎
・ビタミンE:5.5~7.0㎎
・カルシウム:650~800㎎
・マグネシウム:270~370㎎
サプリメントを購入される際には、成分をよく見て購入するようにしましょう。過剰に摂ればいいものでもありませんので注意してください。
春バテは、春の変化で体や心が疲れてしまっている状態です。生活習慣の改善が予防と対策の基本です。睡眠時間の確保や栄養バランスを考えた食事、環境整備をすることが重要になります。時間経過で改善することもありますが、全て「春バテのせいだ!」と決めつけず、気になる症状がある場合は早めに受診しましょう。
Category記事カテゴリー
Ranking人気の記事
About
ふくろう情報局とは?
⽇常⽣活や仕事で直⾯しがちなトラブルの解決⽅法や対策を、弁護⼠ねっとのマスコットキャラクターであるふくろうとともに楽しく学べるコンテンツ。法律に詳しくない⼈も理解できる記事づくりを⽬指しています。その他にも、掲載弁護⼠へのインタビュー記事なども随時更新!弁護⼠選びの参考にしてみてください。