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2024.12.25
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【 目次 】
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他社との取引を開始する際に、取引に関する契約を締結するのはもちろんですが、契約前などに「秘密保持契約(NDA)」の締結も求められる場面があります。
最近では、副業やフリーランスといった働き方が増えたことで、企業と個人が秘密保持契約を締結する場面も多く見受けられるようになりましたが、秘密保持契約とは具体的にどのような契約なのでしょうか。
本記事では、フリーランスで働く人が知っておきたい、秘密保持契約の基礎について解説します。
秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)とは、企業が取引先や協力企業・協力者と情報を共有する際に結ぶ契約です。
ビジネスにおいて、外部の人と合同でプロジェクトを進めることはよくあります。その際、自社が持っている事業の構想や技術に関する情報を、他社など外部の人にも共有せざるを得ない場面が多く出てきます。
秘密保持契約はこうした場面で用いられ、主として、非公開の情報・秘密情報が他に流出するのを防ぐために「ここで知りえた情報は外部に漏らさない」といった内容の「秘密保持義務」を取り決めるものです。
秘密保持契約の主な目的は以下の通りです。
・秘密情報の保護
・不正競争の防止
・知的財産権の保護
・信頼関係の構築
秘密保持契約と聞くと、悪いことを言いふらすなという口止めのように感じる人もいるかもしれませんが、あくまでも企業秘密やノウハウをむやみに外部に流出させないための仕組みであることを理解しておきましょう。
情報の取り扱いには注意だホ!
秘密保持契約は、以下のように様々なビジネスシーンで活用されます。
新規事業の共同検討の場面
例:IT企業AとB社が新しいアプリケーション開発について話し合う際
業務委託や外注先とのやり取り
例:広告代理店が顧客の秘密情報を含む広告キャンペーンを外部クリエイターに依頼する場合
製品開発や技術提携
例:自動車メーカーが新型エンジンの開発について部品サプライヤーと協議する場合
M&A(企業買収・合併)の交渉
例:大手企業がベンチャー企業の買収を検討し、財務情報などを精査する場合
顧客情報や営業ノウハウの共有
例:フランチャイズ本部が加盟店に対して顧客管理システムへのアクセスを許可する場合
従業員との契約
例:研究開発部門の新入社員と秘密情報保護について取り決める場合
これらの場面で秘密情報が漏洩すると、競争優位性の喪失、信用失墜、収益機会の逸失など、深刻な影響を被る可能性があります。
また、技術的な秘密情報が漏洩してしまうと、特許権が取得できなくなったり、競合他社に模倣されてしまうというような重大な弊害が生じかねません。そのため、秘密保持契約の締結は非常に重要な意味を持ちます。
うっかり喋っちゃうことがないように…
秘密保持契約は、以下のポイントに基づき構成されています。
1.契約当事者の明確化
契約を締結する当事者を明記します。当事者は正確に記載する必要があるため、特に法人の場合は正式な法人名や代表者名を明記しましょう。
2.秘密情報の定義
何を秘密情報とするかを、具体的に契約書の中で特定します。
例:プロダクトAに関する技術仕様、プロジェクトBに関する事業計画、C社が保有する全顧客リストの内容、など
3.開示範囲と目的
どの情報を、どのような目的で開示するのかを限定します。目的を明確にすることで、無用なトラブルを避けられます。
4.秘密保持義務の内容と期間
受領者(秘密情報を受領する側)が履行すべき秘密情報の管理レベル・方法や秘密保持義務の期間を定めます。
5.例外事項
秘密情報にあたらない内容や、契約違反にならない内容について定めます。
例:公知の情報、第三者から正当に入手した情報、など
これらの要素を明確に定めておくことで、将来的なトラブルを未然に回避することができます。
秘密保持契約を締結する際には、いくつかの注意すべきリスクが存在します。以下に具体的なポイントを挙げて解説します。
秘密情報の範囲が広すぎると、契約違反のリスクが高まります。
また、範囲が広くあいまいになるほど、人によって情報の取り扱いに関する認識に差が生じ「これは秘密保持契約の範囲外だと思っていたから自社(受領者側)でマネしてしまった」などのトラブルも発生しやすくなります。
トラブルを防ぐために、秘密情報の定義は可能な限り具体的に記述し、以下のように例を挙げて分かりやすく記述すると安心です。
×「本契約に基づき開示された技術情報および営業情報」
〇「プロジェクトXXに関連する設計図面、開発コード、顧客リスト、営業戦略」
後になって「これも契約の範囲だから」と言われないように!
秘密情報の使用目的が明確に記述されていることを確認しましょう。使用目的を限定しないと、意図しない用途に情報が利用されてしまうリスクがあります。
例えば「製品開発に関する打ち合わせのためにこの情報を開示する」といった具体的な目的を明示することで、情報の適切な取り扱いが促されます。
秘密保持期間が設定されているかについて確認しましょう。
期間を設定しないと、いつ秘密保持義務が消滅するのかが明確にわかりませんので、事業の妨げになるというような弊害が生じます。
ちなみに、秘密保持期間は一般的に「1年から5年程度」と設定されることが多いですが、関わる事業の内容や情報の陳腐化の速度によって適切な秘密保持期間が異なります。
事業の内容などから勘案し「この秘密保持期間は適正か?」という視点で確認するとよいでしょう。特に、技術情報などの価値が長期間持続するものに関しては、5年以上の期間を設定するケースもあります。
ここからは、フリーランスで仕事をしている人に焦点を当てていきます。
フリーランスで働く人がクライアントと秘密保持契約を結んだあとに、意図せず契約違反をしてしまい、トラブルに発展することがあります。どんなトラブルが起こりがちなのかチェックしておきましょう。
フリーランスにとって、ポートフォリオを提出したり、実績として自身の過去の成果物を提示する場面はよくあります。
しかし、その際に「自分の成果物だから」といって安易に自分が作成した記事やチラシ・ホームページやシステムなどを外部に共有してしまうのは危険です。
内部の事情を知っている人だからこそ作ることができた内容があったり、成果物に関して説明する際に、その会社との業務を通して知りえた業界の裏知識や独自の技術などを意図せず外部に話してしまったりして、秘密保持契約違反とされることがあるからです。
フリーランスにとって、外部から受注した業務の中で作った成果物は “自分のものであって自分のものではない” という認識を常に意識しておくと安心できるでしょう。
ポートフォリオへの利用可否を事前に確認すると安心だホ!
競業避止義務は、同業他社への転職や同業他社での副業を制限するものであり、主に在職中の人や退職後の人に対し、企業側が設定します。
しかし、秘密保持契約の中に競業避止義務が含まれる場面があるので、フリーランスの人も注意が必要です。
そもそも、職業選択の自由は憲法で保障されていますから、競業避止義務が認められるとしても限定的な範囲に留まります。それにもかかわらず、例えば「今後一切、当社の同業他社や類似サービスを提供している企業との契約を認めない」など、法外に長く、かつ厳しすぎる競業避止義務が設定されている場合があります。
秘密保持契約の中身をちゃんと読み、過剰な競業避止義務が設定されていないか、また、競合にあたる分野を明確にしてもらうなどの対策が必要です。
上記のようなトラブルに発展することを避けるためにも、秘密保持契約の交渉は慎重に進める必要があります。
相手から提示された契約内容をそのまま受け入れてもよいですが、自分に負担がかかりすぎないよう必要に応じて交渉を行う場面も出てくるでしょう。
ここでは、交渉を有利に進めるためのコツについて解説していきます。
クライアント側が言う「秘密情報」が具体的に何なのか、何を指すのかを、例を出しながらきちんと定義してもらうようにしましょう。また、秘密情報の範囲が広すぎる場合は、その場で契約せずに、第三者に確認してもらうなどの対策を行いましょう。
いくら対策を講じていても、悪意なく秘密保持契約に抵触してしまうこともあるかもしれません。万が一に備えて、違反した際に自分に課されるペナルティや具体的な損害賠償額、罰金について明確にしておくのも安心です。
先に確認しておくと安心できるホ!
秘密保持契約の内容について交渉する場合、交渉の内容を記録しておくことをおすすめします。メッセージのやり取りであれば、スクリーンショットをとっておいたり、電話・打合せでのやりとりであれば録音などが効果的です。
秘密保持契約の内容については、別途契約書として明確になるはずですが、自分の身を守るためにも、対策は二重・三重にしておくと、後々のトラブル防止に役立ちます。
契約書の内容に不安がある場合は、弁護士に内容について相談するのもおすすめです。「弁護士へ相談する」というと大ごとに捉えられがちですが、たった一度の相談で、この先の不安が解消されると考えれば、弁護士への相談は効率的でしょう。無料法律相談などを活用し、ぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか。
弁護士ねっとの「無料相談サービス」もおすすめだホ!
秘密保持契約は、ビジネスにおける信頼関係を築くための重要な契約です。締結時には、契約内容を慎重に確認し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。適切な契約と運用により、安心してビジネスパートナーと協力できる環境を構築しましょう。
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