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2025.04.10

黄砂って何?体への影響と対策を解説

黄砂つらい・・・

春になると、空が黄色っぽく見えたり、車や自転車、洗濯物に黄色い粉がついていたりすることがありませんか?黄色い粉の正体は「花粉」という可能性もありますが、春先は特に「黄砂」である可能性も。

そもそも黄砂とは、遠くの砂漠から風にのって日本にやってくるちりのことを指します。黄砂は私たちの体にも影響を与えることがあり、「花粉症だと思ってたら実は黄砂も影響していた」ということもよくあります。

この記事では、黄砂が何なのか、どのような影響があるのか、どうやって身を守ればいいのかを紹介します。薬剤師の視点も交えて、市販薬や病院に行くタイミングも紹介するので、最後まで読んで、黄砂の季節を乗り切りましょう。

黄砂とは?

「黄砂って聞いたことあるけど、イマイチよくわからない…」という方も少なくないかと思います。ここでは、黄砂がどんなものなのか、どうやって日本にやってくるのかを、簡単に紹介します。砂漠の砂が風に舞って、日本に届いてなぜ悪さをするのでしょうか?

黄砂の正体と発生メカニズム

黄砂は、中国モンゴルを中心とした砂漠や乾燥地帯から、土壌・鉱物粒子が風によって巻き上げられ、偏西風に乗って日本に飛んでくる現象のことです。

黄砂の発生源地では、約90,000マイクログラムの濃度の黄砂が発生していますが、日本に届くころには約120マイクログラム程度の濃度になっていることが多く、黄砂の濃度としては低~中程度になることが一般的です。
黄砂の濃度が低下する理由としては、風に流される中で落下したり、雨に取り込まれて落下したりなどの原因があります。

日本への影響と季節

実は、黄砂は日本に年中飛んできています。特に2月頃から増加し、3月から5月がピークとなります。雪解け後の地面の乾燥植物の成長不足などが関係し、砂が舞い上がりやすい状況となってしまうからです。

日本だけでなく、モンゴルや中国、韓国でも黄砂による被害が出ており、黄砂が濃い地域では、農作物への影響が出たり、交通麻痺などが起こることもあります。日本では黄砂の濃度が低いため、そこまでひどい環境への影響はありませんが、健康への影響が出る可能性があるため注意が必要です。

黄砂が健康に与える影響とは?

黄砂が届き始めると、空が黄色っぽくなったり、車や自転車にうっすらと砂がついていたりするだけでなく、私たちの身体にも変化が起こることがあります。どんなことが起きるのか、どうしてそうなるのか、詳しく見てみましょう。

黄砂による主な症状

黄砂が飛び始める春先は、スギ花粉等が飛来するタイミングと重なるため、身体の不調の原因が黄砂なのかスギ花粉なのかを判断するのが難しくなります。もちろん、両方が影響して症状がより悪化してしまっている可能性もあります。

黄砂による主な症状は、花粉症と似たような以下のようなアレルギー症状ですが、呼吸器疾患に繋がる可能性もあります。代表的な症状として以下が挙げられます。

・眼、肌の痒み
・鼻水、くしゃみ
・喉の違和感
・頭痛
・肌の痒み、蕁麻疹
・気管支喘息の悪化
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)の悪化

特に、アトピー性皮膚炎の方や喘息などの呼吸器疾患の方は黄砂の時期は注意していただきたいです。

体調不良の原因は?

でも、「たかが砂でなぜ体調が悪くなるの?」と感じる方もいらっしゃるかと思います。

そもそも、黄砂は花粉よりも小さな粒子です。粒子のサイズとしては、スギ花粉が約30マイクロメートルであるのに対し、黄砂は約4マイクロメートルほどの小ささです。

黄砂の小さな粒子が鼻や口から入ると、スギ花粉よりも奥まで体内に入り込んでしまい身体の内側を刺激します。場合によっては肺にまで到達することもあります。

さらに、黄砂には砂漠の土だけでなく、大気汚染物質やほこりなどが付着します。それらが一緒に体内に入ることでアレルギー反応が生じます。加えて、花粉によるアレルギー症状を増強することも考えられているため、黄砂の対策には、花粉症対策と似たような準備が重要となってきます。

黄砂から身を守る対策方法

花粉よりも小さな黄砂。完全に防ぐことが難しいのは、花粉症の方であれば想像に容易いことかと思います。ですが、ちょっとした工夫を取り入れることで、黄砂による影響を緩和することができます。ここでは、生活の中で簡単にできる対策法を紹介します。

日常生活でのポイント

主な対策は以下の通りです。

マスクメガネなどの対策グッズを使用
肌の露出を避ける
手洗いうがいの徹底
外から家に取り込まない

まず、「外出時のポイント」です。
基本中の基本ですが、外出時はマスクメガネを着用するようにしましょう。マスクやメガネの着用で、黄砂が眼や鼻、口に入るのを軽減することが可能になります。特に、眼のかゆみや喉の違和感などがある方は実践してみてください。不織布のマスクでも十分ですが、PM2.5に対応しているマスクもあるので、普通のマスクで効果がないという方は積極的に使ってみましょう。

また、アレルギー症状によって肌にかゆみが出る可能性もあります。肌の症状がある方は、長袖を着たり、アームカバーといった露出を避けるアイテムを活用してみてください。

その次に重要なポイントは「外から家に取り込まない」ことです。
帰宅時には、服に付着している黄砂を玄関先で落としてから自宅に入り、その後、手洗い・うがいを行う流れがおすすめです。

その他、日常生活では、洗濯物を外に干したり、窓を開けていたりすることで室内に黄砂が入ってしまいます。もちろん完璧に黄砂を防ぐことはできませんが、こまめな掃除と空気清浄機などの活用によって綺麗な環境を整えることも重要となります。

こんな症状があれば受診を

黄砂によるアレルギー症状は花粉症と似ている場合がほとんどです。ですが、花粉症を持っている方だと、より症状がひどくなるケースがあります。市販薬での対処で長く粘ることはせず、適切なタイミングで医師に相談するのがおすすめです。ここでは、受診前にできることや、どんなときに受診すべきかを紹介します。

受診の前できること

最初に取り組んでいただきたいのは、前述した日常生活でのポイントです。「対策+市販薬」を一緒に心掛けることで、多少のアレルギー症状であれば、改善できる可能性があります。時間をかけて病院と薬局に行く必要がないのは、忙しい人にとってありがたいことかと思います。

市販薬については、花粉症でも用いられる「抗ヒスタミン」「ステロイド含有の点鼻薬」などを使用することで効果が期待されます。花粉症と同様に、完全に治すことは現時点では不可能です。体の中に入ってしまったアレルギー物質(アレルゲン)に対する過剰な反応を抑えることしかできない点には注意が必要です。

以下のケースでは、市販薬での対処ではなく受診の検討を

前述した「主な症状」のアトピー性皮膚炎呼吸器疾患に該当する場合には注意が必要です。特に、息苦しさや、しつこい咳高熱肌荒れが目立つ場合には速やかに受診しましょう。市販薬で対応できるのは軽い症状のみです。市販薬にあまり固執せず、心配な場合には受診することを推奨します。

また、以下のケースに該当する場合は早めに受診を検討しましょう。

・市販薬を開始したのに症状が悪化している
・1~2週間続けても改善しない。症状が気になる
・息苦しさがある
・蕁麻疹や皮膚の痒み、赤みの出現
・花粉症にも悩まされている方

記載内容以外にも、体調が悪いと感じた場合には、遠慮せず受診することをおすすめします。

黄砂の治療と薬は

黄砂で体調が悪くなったとき、どうやって治すのか、どんな薬が役立つのか紹介します。

効果が期待される市販薬は?

花粉症と同様にアレルギー症状を改善することを目的とした市販薬が選択されます。種類としては「抗ヒスタミン」「ステロイド」といったものが挙げられます。

また、症状に応じて、目薬飲み薬塗り薬点鼻スプレーと使い分けられます。眼の痒みには目薬。全体的なアレルギー症状(痒み、鼻水、くしゃみなど)には飲み薬。肌の痒みには塗り薬。鼻水・鼻づまりには点鼻。喉の違和感にはスプレー。といったように使い分けになります。

あくまで一例ですが、黄砂の症状を緩和する効果が期待される主な市販薬は以下の通りです。

・飲み薬
成分名:フェキソフェナジン塩酸塩(商品名:アレルビなど)

・点鼻薬
成分名:ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(商品名:エージーアレルカットなど)

・塗り薬
成分名:ジフェンヒドラミン塩酸塩(商品名:新レスタミンコーワ軟膏など)

市販薬を使用する場合には「いつから症状があるか」「市販薬をどれくらい使っているか」を意識して、受診する際に伝えるようにしてください。

一般的な治療法と薬の種類

残念ながら黄砂を完全に治す方法はありません。いわゆる対症療法(病気の症状を和らげたり、一時的に楽にするための治療法)で、花粉症と同様に、アレルゲン対策と医薬品使用による症状の最小限化が治療の目的となります。

市販薬と同様に、病院で処方される薬の種類としては「抗ヒスタミン」「ステロイド」が中心となります。効果も市販薬より期待されますが、市販薬より副作用に注意が必要となります。指示を守って使用しするようにしましょう。

また、喘息やアトピーの場合には、その症状が悪化することを防ぐために、治療薬が変更になったり、上乗せされたりすることもあるので、いつもと違う病院に行く場合には、お薬手帳やアプリで使用中の薬を伝えるようにしてください。

まとめ:黄砂シーズンを快適に乗り切るために

黄砂は完全に治すことができるものではありません。花粉症の症状を悪化・増悪させることもあると言われていますが、ちょっとした準備を行うだけで影響を軽減することも可能です。

また、喘息やアトピーの症状が悪化してしまう可能性もあります。そのような方はなるべく早めに受診するようにしましょう

何よりも大切なことは「対策を行う+医薬品の使用」という2軸で治療を行うことです。1つからでいいので、アレルギー対策を実践してみてください。

また、市販薬の取り扱いがある薬局やドラッグストアで「花粉症で使われるアレルギーの飲み薬、点鼻、塗り薬ある?」と質問してもらえたら、容易におすすめ商品を知ることができます。ですが、長期間(目安:2週間以上)症状が続いているにもかかわらず、ダラダラと市販薬を使い続けることはやめましょう。

是非、黄砂だけでなく、花粉症で悩んでいる方も実践して、快適な生活のために役立ててください。

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トリス(薬剤師T)

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元MR、現在は調剤薬局薬剤師とWebライター
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