Lawyers Column

2025.03.26

電子契約書の作り方と情報漏えいリスク対策|安全に導入する方法とは?

契約書もオンラインで

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「電子契約書の作成方法が知りたいけど、何から始めればいいのかわからない」
「無料で導入できるのか?印紙はどうなるの?」
「電子契約って安全?情報漏えいのリスクが心配」

そう思う方もいるかもしれません。
実は、電子契約書の導入には正しい手順とリスク対策が必要です。

無料で始められるツールもありますが、適切な設定をしないと法的リスクや情報漏えいの危険性もあります。この記事では、電子契約書の作り方を5ステップで解説し、安全に運用するための情報漏えい対策や注意点について詳しく紹介します。

電子契約書とは?基本の仕組みとメリット

電子契約書は、紙の契約書をデジタル化し、オンラインで契約を締結・管理できる仕組みです。業務の効率化やコスト削減につながるため、多くの企業で導入が進んでいます。本章では、電子契約書の基本的な仕組みや、従来の契約書との違い、メリットについて解説します。

電子契約書の定義と従来契約書との違い

電子契約書とは、一般に、電子署名タイムスタンプを利用し、オンライン上で法的に有効な形で締結する契約のことを指します。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、電子契約の導入が加速しています。

ペーパーレスにも繋がるホ!

紙の契約書と電子契約書の比較

電子契約書は、電子署名やタイムスタンプを活用し、法的に有効な契約書を作成する手法です。従来の契約書は紙に押印が必要でしたが、電子契約ではオンラインで契約締結が可能になります。

電子契約の法的有効性

電子契約は、電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)により法的に認められています。適切な電子署名を使用し、当事者の合意が確認されることで、紙の契約書と同等の法的効力を持つと考えられます。

電子契約書を導入するメリット

電子契約を導入することで、業務効率化やコスト削減が可能になります。また、リモートワーク環境でもスムーズに契約締結ができ、業務の迅速化を図ることができます。

コスト削減と業務効率化

印刷や郵送の手間がなくなり、業務時間の短縮とコスト削減につながります。特に大量の契約を扱う企業では、大幅な業務効率化が期待できます。

印紙税の削減効果

電子契約は印紙税が不要となるため、従来の紙契約と比較してコストを削減できます。特に高額な契約を締結する企業にとって大きなメリットになります。

遠隔地でも迅速な契約締結が可能

電子契約はオンライン環境があればどこからでも契約締結が可能です。遠隔地の取引先とも即座に契約を締結でき、ビジネスのスピードを向上させます。

契約を結ぶためだけに遠方へ行かなくてもいいのは嬉しいホ!

電子契約書のデメリットと注意点

電子契約は多くのメリットを持ちますが、導入には慎重な検討が必要です。情報漏えいのリスク、取引先の対応状況、導入コストといった課題を理解した上で導入を進めることが求められます。

情報漏えいのリスク

電子契約はデジタルデータで管理されるため、サイバー攻撃や不正アクセスのリスクがあります。セキュリティ対策として、アクセス制限やデータ暗号化、監査ログの活用が必要です。

取引先が電子契約に対応していない場合

一部の取引先が電子契約に対応していない場合、紙の契約書を併用する必要があり、業務の煩雑化が懸念されます。事前に取引先と契約方法を調整することが重要です。

システム導入や運用コストの課題

電子契約システムの導入には初期コストや運用コストが発生します。費用対効果を考慮し、自社の業務に適したサービスを選択することが求められます。

電子契約書の作り方|導入までの5ステップ

電子契約を導入するには、適切な準備と運用が必要です。ここでは、電子契約書をスムーズに導入するための5つのステップを解説します。

ステップ1:契約書のデジタル化に向けた準備

電子契約を導入する前に、まず現在の契約フローを確認し、デジタル化できる部分を特定します。また、紙の契約書と電子契約書の使い分けについて社内でルールを定め、スムーズな移行を進めることが重要です。

場合によっては電子契約書が適さない場合もあるホ

現在の契約フローを確認する

現在の契約締結プロセスを見直し、電子契約に適用可能な業務を特定します。どの段階で契約が発生し、どの部門が関与しているのかを把握することで、適切なデジタル化が可能になります。

電子契約に対応できる契約書の種類を把握

全ての契約が電子化できるわけではなく、法律上、紙の契約が求められる場合もあります。例えば、一部の不動産売買契約や保証契約など、一部の契約は法律で書面交付が義務付けられているため、電子契約のみでは締結できない場合があります。契約の種類ごとに適用法令を確認することが重要です。

ステップ2:電子契約サービスの選定

電子契約サービスにはさまざまな種類があり、自社のニーズに最適なサービスを選ぶことが重要です。無料プランと有料プランの違いを理解し、導入コストや機能を比較検討することが求められます。

主要な電子契約サービスの比較

クラウドサイン、DocuSign、Adobe Signなどの電子契約サービスには、それぞれ異なる強みがあります。

対応可能な契約種類セキュリティ機能操作性などを比較し、自社に適したものを選択しましょう。各電子契約サービスの詳細については、本記事の下部にある「おすすめの電子契約サービス5選」で詳しく解説しています。

無料プランと有料プランの違い

無料プランでは基本的な契約締結機能のみ提供される場合が多く、高度な認証や契約管理機能が制限されることがあります。
有料プランでは、アクセス管理やカスタマイズ機能が充実しているため、ビジネス規模に応じて選択が必要です。

ステップ3:電子署名と認証の設定

電子契約では、契約の真正性を確保するために電子署名認証の設定が不可欠です。適切な電子署名を導入し、契約の法的効力を確保します。

電子署名の仕組みと導入方法

電子署名にはシンプルな電子署名(クリック署名)と高度な電子署名(電子証明書を利用した署名)があります。企業の契約内容や法的要件に応じた署名方式を選択することが重要です。

電子証明書の活用方法

電子証明書を利用することで、契約の真正性署名者の本人確認が可能になります。特に、法的効力を高めるために、電子証明書を活用した契約締結を検討すると良いでしょう。

電子証明書の活用も検討だホ!

ステップ4:契約書の作成と送信

電子契約の運用をスムーズにするためには、契約書の作成から送信までのフローを確立することが必要です。

契約相手に送信する際の注意点

契約相手が電子契約に不慣れな場合、事前に電子契約の仕組みを説明し、スムーズな締結をサポートすることが重要です。また、相手方の電子契約システムとの互換性も確認しましょう。

取引先が電子契約に対応していない場合の対処法

一部の取引先が電子契約を導入していない場合、従来の紙契約との併用が必要になります。両方の方法を適切に管理し、業務の煩雑さを軽減する工夫が求められます。

ステップ5:契約の管理・保管方法

電子契約書を適切に管理することで、将来的なトラブルを防ぎ、業務効率を向上させます。

契約書の電子保管と検索のしやすさ

契約書をクラウドストレージや契約管理システムに保存し、検索しやすい環境を整えることで、業務の効率化が図れます。

長期保存に適した管理方法

電子契約書は長期間の保管が求められるため、適切なバックアップとセキュリティ対策を施し、安全な管理を実現することが重要です。

電子契約の法的効力と印紙税の取り扱い

電子契約の法的効力や印紙税の適用について正しく理解することは、企業にとって重要です。ここでは、電子契約の法的根拠と印紙税の取り扱いについて解説します。

電子契約の法的根拠

電子契約は、電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)に基づき、法的に有効な契約として認められています。電子署名や認証技術を利用することで、従来の書面契約と同等の効力を持つ契約を締結できます。

電子署名法について

電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)は、電子文書による契約の締結を認め、適正な取引の実現を目的としています。これらの法律に基づき、適切な電子署名を利用した契約は、法的に有効とされています。

電子契約の証拠力

電子契約は、電子署名法第3条に基づき、「適切な電子署名が施されている場合、本人の意思に基づいて作成されたものと推定されるため、裁判において証拠能力を有する」と考えられます。

電子署名が適用され、データが改ざんされていないことが証明できれば、紙の契約書と同様に証拠能力を持ちます。特に、認定事業者が発行する電子証明書付きの契約書は、裁判において有効な証拠として認められる可能性があります。

印紙税の適用と優遇措置

印紙税は、契約書が書面で作成される場合に課税されますが、電子契約の場合は課税対象外とされています。これにより、電子契約を導入することで企業はコスト削減が可能になります。

紙の契約と電子契約での印紙税の違い

紙の契約書では、契約内容に応じて数百円から数万円の印紙税が発生します。一方、電子契約は、契約書が電子データのみで管理される場合、印紙税の課税対象にはなりません。ただし、契約締結後に紙に印刷して保管する場合は、印紙税が発生する可能性があるため注意が必要です。これにより、企業は契約業務にかかるコストを削減でき、特に高額な契約において大きなメリットがあります。

印紙税が不要な契約と必要なケース

電子契約が印紙税の課税対象外となるのは、電子的に締結され、書面が存在しない場合です。ただし、電子契約後に書面を印刷して保管する場合、その書面が課税対象となることがあります。税務処理の際には、電子データのみを正式な契約書として扱うことが求められます。

電子契約書の情報漏えいリスクと対策

電子契約は利便性が高い一方で、情報漏えいや不正アクセスのリスクを伴います。ここでは、主なリスクと安全に運用するための対策について解説します。

情報漏えいの主なリスク

電子契約は利便性が高い一方で、サイバー攻撃や内部不正による情報漏えいのリスクが伴います。適切なセキュリティ対策を講じなければ、契約情報が流出し、企業の信用が損なわれる可能性があります。

外部攻撃による情報流出

ハッカーによるサイバー攻撃やフィッシング詐欺を通じて、電子契約のデータが流出する危険性があります。

特に、不正アクセスやマルウェア感染によるデータ改ざんが発生すると、契約の真正性が損なわれる恐れがあります。セキュリティソフトの導入や適切なアクセス制御を実施することで、外部攻撃のリスクを低減できます。

内部不正による契約データの持ち出し

企業内部の従業員が意図的または過失によって契約データを持ち出すリスクも考慮する必要があります。

アクセス権限の適切な管理、監査ログの導入、社内ポリシーの整備によって、内部不正のリスクを軽減できます。特に、重要な契約データには多要素認証を適用し、不正アクセスを防ぐ仕組みが必要です。

安全に運用するためのセキュリティ対策

電子契約のセキュリティを確保するためには、多要素認証、データ暗号化、監査ログの活用などの対策を導入することが不可欠です。

多要素認証とアクセス制御

多要素認証を利用することで、IDとパスワードだけでなく、生体認証やワンタイムパスワードを組み合わせた強固な認証が可能になります。アクセス制御も重要で、特定の従業員のみが契約データにアクセスできるよう設定することで、情報漏えいのリスクを軽減できます。

データの暗号化とバックアップ対策

電子契約データの暗号化により、不正アクセスによるデータ流出を防ぐことができます。また、バックアップを定期的に実施することで、万が一のデータ消失に備えることができます。特にクラウドストレージを活用したバックアップは、災害時にも迅速にデータ復旧が可能となるため有効です。

監査ログの活用による不正防止

監査ログを活用することで、誰が・いつ・どの契約書にアクセスしたのかを記録することが可能です。これにより、不正行為の抑止効果が期待でき、万が一の情報漏えい時にも原因究明が容易になります。適切な監視体制を整えることで、内部不正のリスクを最小限に抑えることができます。

電子契約を導入する際には、サービスの比較が重要です。各サービスには特徴があり、企業のニーズに合ったものを選択することで、業務効率を向上させることができます。ここでは、特に人気のある電子契約サービス5つを紹介します。

クラウドサイン

クラウドサインは、日本国内の企業に広く採用されている電子契約サービスです。シンプルな操作性と法的要件を満たした電子署名機能が特徴で、企業規模を問わず利用されています。

また、弁護士ドットコムが提供しているため、信頼性が高く、法的リスクの少ない契約締結が可能です。契約の進捗管理や承認フローの設定も充実しています。

DocuSign

DocuSignは、世界的に利用されている電子契約サービスで、多国籍企業やグローバル展開する企業に最適です。電子署名の法的有効性が高く、各国の電子署名法に対応しています。

また、多言語対応やワークフローの自動化機能を備えており、企業の業務効率を大幅に向上させることができます。セキュリティ対策も万全で、GDPRやISO 27001などの国際基準に準拠しています。

freeeサイン

freeeサインは、中小企業や個人事業主向けの電子契約サービスとして人気です。会計ソフトfreeeとの連携機能があり、契約から会計処理までの一元管理が可能です。操作が簡単で、専門的な知識がなくても利用しやすい点が特徴です。

また、コストパフォーマンスが高く、低価格で導入できるため、小規模事業者に適しています。

Adobe Sign

Adobe Signは、Adobeが提供する電子契約サービスで、PDFとの高い互換性が特徴です。電子署名のセキュリティレベルが高く、企業向けの高度な認証機能を備えています。

また、Microsoft 365やSalesforceとの連携が可能で、業務フローの効率化を図ることができます。企業のコンプライアンス対応も強化されており、特に大企業や公的機関での利用が進んでいます。

GMOサイン

GMOサインは、日本国内で広く利用されている電子契約サービスの一つで、日本の法制度に準拠した安心のサービス設計が特徴です。無料プランがあり、導入コストを抑えながら電子契約を試せる点が魅力です。

また、契約相手に合わせて「電子署名型」と「ハンコ型」の2種類の契約方式を選択できるため、業種や取引先の状況に応じて柔軟に運用することができます。

電子契約書導入の成功ポイント

電子契約を成功させるためには、取引先の対応状況、法的要件、セキュリティ対策の3つのポイントを押さえることが重要です。これらの要素を事前に検討することで、スムーズな導入と運用が可能になります。

取引先の対応状況を事前に確認する

電子契約を導入する前に、取引先が電子契約を受け入れるかを確認することが不可欠です。
すべての企業が電子契約に対応しているわけではなく、特に中小企業や一部の業界では紙の契約書を重視するケースがあります。

そのため、契約先と事前に交渉し、電子契約の利便性や法的有効性について説明することが大切です。また、必要に応じて電子契約と紙の契約を併用するなど、柔軟な対応を検討しましょう。

法的要件を満たす運用を確立する

電子契約を導入する際には、電子署名法に規定される法的要件を満たすことが重要です。契約の真正性を確保するために、適切な電子署名やタイムスタンプを利用し、改ざん防止措置を講じる必要があります。

また、契約書の保存方法にも注意が必要であり、契約期間中および法的に求められる期間、適切に保管できるシステムを導入することが求められます。

法務部門や専門家と相談しながら、企業のコンプライアンスに沿った運用体制を整えましょう。

セキュリティ対策を強化する

電子契約はデジタルデータで管理されるため、適切なセキュリティ対策を講じることが不可欠です。不正アクセスを防ぐために、多要素認証(MFA)を導入し、重要な契約データへのアクセスを厳格に管理することが求められます。

また、契約データの暗号化を行い、外部からのハッキングリスクを低減することも重要です。さらに、定期的な監査やアクセスログの確認を行い、不正なアクセスや情報漏えいのリスクを未然に防ぐ体制を整えましょう。

まとめ|電子契約を安全かつ効率的に活用する方法

電子契約は、業務の効率化やコスト削減に貢献する一方で、適切な管理と運用が求められます。契約の法的有効性を確保し、安全なデータ管理を行うことで、電子契約のメリットを最大限活用できます。

電子契約のメリットを最大限活用する

電子契約は、契約締結の迅速化印紙税の削減業務負担の軽減といったメリットがあります。
特に、遠隔地との契約締結が容易になり、郵送や対面契約の必要がなくなるため、業務効率の向上につながります。

また、契約書の検索や管理がクラウド上で可能になることで、業務の可視化と効率化が可能です。ただし、導入時には適切なワークフローの設計や社内ルールの整備が必要となるため、計画的に進めることが重要になります。

長期的な契約管理とセキュリティ対策

電子契約の運用を長期的に成功させるためには、契約データの適切な管理とセキュリティ対策を継続的に強化することが求められます。

契約書を長期間保存する際には、法的要件を満たすデータ保存システムを導入し、適切なバックアップを行うことが重要です。

また、契約データへのアクセスを制限し、定期的な監査を実施することで、内部不正や情報漏えいのリスクを低減できます。これらの対策を実施することで、安全かつ効率的に電子契約を活用することが可能になります。

まずは自社の契約プロセスを見直し、電子契約の導入目的や適用範囲を明確にしましょう。その上で、法的要件を満たし、セキュリティ対策が充実した電子契約サービスを選定し、安全かつ効率的な運用を進めていくことが重要です。

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Writer

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ビジネス戦略ライター |Yusuke LAULEA

大手企業で現役の管理職を務めるビジネス戦略ライター。理論だけでなく、実務レベルで役立つ情報を発信中!
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Supervision

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弁護士法人コスモポリタン法律事務所

杉本 拓也

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⽇常⽣活や仕事で直⾯しがちなトラブルの解決⽅法や対策を、弁護⼠ねっとのマスコットキャラクターであるふくろうとともに楽しく学べるコンテンツ。法律に詳しくない⼈も理解できる記事づくりを⽬指しています。その他にも、掲載弁護⼠へのインタビュー記事なども随時更新!弁護⼠選びの参考にしてみてください。

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