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Lawyers Column

2025.01.14

オーバードーズは医薬品のリスクを高めます

依存は怖いホ…

オーバードーズって何?

オーバードーズ(Over Dose)は文字通り「用法用量(Dose)を超えて(Over)の使用」することを指します。中でも、意図的に多量の医薬品を摂取してしまうこととした近年取り上げられています。

医薬品は医師の診察で必要な薬剤が処方され、薬剤師によって問題ないことが確認されたうえでお渡しされます。さらに、患者さんが指示に従って適切に使用することによって効果を発揮します。不適切な使用は期待される効果が得られないだけでなく「体に重大な悪影響」を及ぼしてしまう可能性もあります。

近年、市販の風邪薬や処方される睡眠薬を過剰に摂取し、救急搬送されたり、死に至ってしまったりするケースも報告されています。

間違い以外のオーバードーズは要注意

1度の単なる飲み間違えであれば、そこまで気にする必要はありませんが、服用後に普段と異なる状態になってしまう場合は医師・薬剤師に電話で相談するようにしてください。

特に注意が必要なのが、意図的(自傷や快楽目的)に医薬品を多量に摂取する場合です。精神的な背景への対応が必要となる場合が多くあり、オーバードーズを繰り返してしまうことがあるので、本人だけの問題ではないことがあるので周囲の方の協力が必要です。

オーバードーズは単なる薬の過剰摂取というだけでなく、心理的な問題や薬物乱用の一環としても考えられるため、早期の介入が重要です。薬を適切に使用することはもちろん、薬を使用する背景に潜む問題を見つけ出し、対処することが不可欠です。

オーバードーズの原因は?

SNSやインターネットから「オーバードーズをすると気持ちよくなれる、気分が晴れる」といった情報だけを鵜呑みにして実行してしまう若者が増加傾向にあります。オーバードーズを行う主な理由としては以下が挙げられます。

心理的要因

ストレスや不安、孤独感など、精神的な苦痛を和らげるために薬を過剰に摂取するケースがあります。心理的要因として虐待や親との関係性、いじめや受験などの学習面といった様々な「生活環境」や「人間関係」によってもたらされます。特に、オーバードーズは10代の若年者を中心に広がっており、過剰摂取が一時的な逃避手段とされることもあります。

誤解や誤使用

薬の効果を早く得たい、または強く感じたいという理由から自己判断で用量を超えて服用することがあります。医薬品のデメリットを考えずに使用してしまうケースです。例えば、鎮痛薬を「痛みを完全に取り除くため」「眠れないから睡眠薬を多く服用する」といった例があります。

インターネットやSNSの影響

SNSを通じて誤った薬物使用法が拡散されるケースが増えています。「〇〇を多く飲むと気分が良くなる」といった誤情報が原因で、安易に市販薬・医薬品を不適切に使用する人もいます。中には、対象医薬品を販売・譲渡しているケースもあります。

オーバードーズを防ぐためには、薬を正しく使用することはもちろん、社会全体で誤情報を排除し、心理的なサポートを提供する仕組みを整えることが重要となってきます。また、許可なく医薬品を譲渡・販売することは違法です。絶対に行わないでください。

薬物乱用と一緒?

オーバードーズは薬物乱用という大きな氷山の一角です。薬物乱用と言われて思い浮かべるのは、「覚醒剤、大麻、コカイン、LSD、MDMA」といったいわゆるドラッグ(薬物)のことではないでしょうか。薬物乱用は「ルールや法律からはずれた目的で使用すること」とされています。

一方で、オーバードーズは冒頭で記載した通り、「用法用量(Dose)を超えて(Over)使用薬物を摂取すること」を意味し、薬物乱用の一部分を表しています。

やってることは違法薬物と同じ?

違法薬物を使用することで幻覚や妄想、人格変化など様々な悪影響があることは有名ですが、合法的に手に入る医薬品でも用法・用量を守らない場合には、身体的・精神的な害をもたらす危険性があります。

重要なのは、薬物乱用もオーバードーズもどちらも健康を損なう行為であり、避けるべきものだということです。医薬品でも使い方を誤れば違法薬物のような症状や依存が現れる可能性は十分にあるので注意してください。

市販薬なら大丈夫?

市販薬は医師の処方箋がなくても購入できるため、安全だと思っていませんか?ニュースやSNSなどで既にご存じかと思いますが、乱用の対象となっている主な市販薬として以下の6種類が挙げられます。

①咳止め
②風邪薬
③解熱鎮痛剤
④鎮痛薬
⑤抗アレルギー薬
⑥カフェイン製剤

いずれも処方箋が不要で、インターネットでも購入できます。違法薬物よりも簡単に入手できるため、オーバードーズによって知らぬ間に「薬物乱用」に足を踏み入れてしまっている可能性があります。

市販薬でオーバードーズの一例

身近な存在の市販薬ですが、過剰に摂取すれば体に悪影響を及ぼしてしまいます。
例えば、咳止め薬に含まれる成分であるデキストロメトルファンは、多量に摂取すると幻覚や興奮状態を引き起こすことがあります。

さらに、市販薬の使用で注意すべき点は、複数の薬を同時に使用した場合の成分の重複です。例えば、異なる製品に含まれるアセトアミノフェンを同時に摂取することで、意図せず過剰摂取になってしまうリスクがあります。

医薬品を安全に使用するためには…

当たり前のことですが、

・医師や薬剤師の指示を守る
・登録販売者に相談する
・自己判断で用量を変更しない
・不確かな情報に基づいて行動しない
・飲み忘れた際の対応を確認する

これらの基本的なルールを守ることで、意図的なオーバードーズ以外は簡単に防ぐことができます。その他にも心配なことがあれば、自己判断で薬を使用する前に確認してください。安全に使用するためにも「使用中の医薬品」を共有しながら、受診・市販薬の購入するようにしましょう。

オーバードーズは一度だけでも影響がある?

オーバードーズは一度だけでも悪影響を引き起こす可能性があります。薬の種類や摂取量によって異なりますが、主な症状としては次のようなものが挙げられます。

・中枢神経の抑制や興奮による意識障害(幻覚、興奮状態、思考力・判断力の低下など)
・呼吸困難
・臓器障害(特に肝臓や腎臓への影響)
・離脱症状(強い不安感、痙攣、動悸、吐き気など)
・最悪の場合、死に至る可能性。

実際にあった事件

実際のオーバードーズの内容について厚生労働省が「わが国における 市販薬乱用の実態と課題」の中に事例を公開しています。

「母親が好きなのに、関係がうまくいかない。」ためにオーバードーズ、違法薬物を使用してしまったケースを簡単に紹介します。

Aさん(17歳)は両親が離婚し、母親から身体的虐待を受けていました。精神を安定させるためにリストカットや家出、喫煙、飲酒をするようになっていきます。
家出の際に、友人から「イヤなことを忘れられる」「ぐっすり眠れる」と市販薬のオーバードーズを教わり実行してしまいます。オーバードーズすると、幻覚が見えるようになっていきました。
そんな中、友人から「変わった煙草がある」と大麻を勧められ使用してしまいます。オーバードーズと同様に頭がフワフワする感覚があり、市販薬のオーバードーズと大麻に依存してしまうようになってしまいました。

その他にも、若年層を中心に、市販薬の過剰摂取による救急搬送事例が増加しています。特に、SNSで拡散された「大量に飲むと気分が良くなる」という誤情報を信じ、咳止め薬を過剰摂取した結果、意識障害や幻覚症状に陥るケースが報告されています。

また、処方薬の抗不安薬や睡眠薬を意図的に大量摂取し、自殺未遂に至った事例もあります。

オーバードーズの現状と対策

オーバードーズの現状は…

オーバードーズをはじめとした事件に共通する背景として、前述したストレスや孤独感、経済的な問題などの心理的要因が挙げられます。特に、若年層においては、家庭内問題や学校でのいじめが引き金となる場合が多いとされています。

「過去1年以内に市販薬の乱用経験がある」という高校生は60人に1人という調査結果もあり、2クラスに1人は経験したことがあることになります。また、小学生による事案も発生しており、簡単に実行できてしまうのが現状となっています。

現在、ドラッグストアや薬局では濫用の危険性がある市販薬を販売する際に以下のような規制があります。
・購入者が若年者(高校生、中学生など)である場合、氏名及び年齢
・他の薬局、店舗での濫用などの恐れのある医薬品の購入などの状況
・必要と認められる数量(1包装)を越えて購入しようとする場合、その理由

今後の対策は…

オーバードーズを防ぐための取り組みとして、学校や地域社会での薬物乱用防止のための授業や観劇、学校薬剤師による講演などが行われています。また、前述したドラッグストアや薬局の市販薬販売の規制強化も検討されています。市販薬のオンライン購入も踏まえ改正案も出てきています。大まかにポイントは以下の通りです。

【今後の方向性】
・20歳未満の者に対しては複数個・大容量の製品の販売を行わない
・対面やオンラインでの情報提供を原則とする(20歳以上の小容量1個を除く)
・20歳未満は身分証の提示などにより氏名・年齢の確認と記録、保管を行う
・直接手に触れない方法で販売を行う(空箱の陳列など)

また、安易に購入できる状況だけでなく、心理的なサポート体制の不足も指摘されています。カウンセリングや支援センターの利用を促進する必要も指摘されています。

具体的には、24時間対応の電話相談や、オンラインカウンセリングの普及も重要となります。さらに、社会全体で薬物使用に関する正しい知識を普及させることが重要です。SNSやインターネット上で広がる誤情報を排除し、信頼性の高い情報を提供する取り組みが重要です。

特に、若年層に向けた啓発活動として、アニメや動画コンテンツを活用した教育プログラムが注目されています。

以上のように、「販売の規制」「医薬品に関する知識習得」がオーバードーズ対策として今後行われていくことになりそうです。

抱え込まずに相談を

本人だけでなく、ご家族もオーバードーズに悩んでいるかと思います。適切な相談先を利用することが重要で、電話以外の相談窓口も登場しており、電話はちょっと…という方はLINEやチャットで相談することもできます。

匿名で相談できる「あなたのいばしょ」。10代20代の女性のための「bond project」など様々なサイトが厚生労働省の「まもろうよ こころ」というHPに掲載されているので、ぜひ確認してみてください。また、地域で開催される薬物乱用防止講座や、自助グループへの参加も有効です。

同じ悩みを持つ人々と繋がることができるため、孤立感の軽減に繋がります。オーバードーズは1人で抱え込むべき問題ではありません。早めに適切な支援を受けることで、回復への道が開けます。

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元MR、現在は調剤薬局薬剤師とWebライター
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