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2024.12.06
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Lawyers Column
2024.12.03
薬も飲みすぎ注意!
【 目次 】
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当たり前ですが、医薬品にはメリット(期待する効果)とデメリット(副作用)の両面が存在します。
単独では気にならない副作用・有害事象でも複数の医薬品を一緒に使う(併用)することによって副作用が強く現れてしまうことがあります。
今回は「●種類以上から注意が必要」といったポリファーマシー(多剤併用)の原因と注意すべきポイントについて紹介します。
複数の薬を飲むことを「ポリファーマシー」って呼ぶんだホ!
「ポリファーマシー」という言葉を聞いたことがありますか?「Poly」+「Pharmacy」の組み合わせで「多くの医薬品」を意味します。似た言葉として「多剤併用」「多剤処方」があります。
ご高齢の患者さん同士の会話に耳を傾けてみると「歳だからこれくらい飲んでても普通」「あなた今何種類飲?まだ3つ?」なんて会話が聞こえてくることがあります。
ご本人も理解していますが、多く飲めば良いわけではないのが医薬品です。メリットもあればデメリットもあります。
多くの薬を服用することにより副作用などの有害事象が起こることを「ポリファーマシー」と言います。治療上必要な場合に複数の医薬品を服用することは問題ありません。ただし、不適切に漫然と使用している場合には注意が必要となります。受診の仕方や自己調整によってポリファーマシーにならないように注意しましょう。
余談ですが、有害事象は「薬物との因果関係がはっきりしないものを含め、薬物を投与された患者に生じたあらゆる好ましくない、あるいは意図しない微候、症状、または病気のこと」を指します。
薬の飲みすぎも注意が必要なんだホ
では具体的に何錠、何種類の医薬品を服用している場合に注意が必要となると思いますか?
早速回答ですが「5~6種類以上」から注意が必要と考えられています。5~6種類なんてあっという間に越えてしまうと思ったのではないでしょうか。
あくまで1例です。
処方の良し悪しは関係なしに、「座骨神経痛で花粉症のBさんが風邪で受診」というケースを考えてみましょう。
・座骨神経痛に対して 神経痛に医薬品(A)
疼痛に医薬品(B)
医薬品(B)による胃痛防止の医薬品(C)
・花粉症に対して 医薬品(D)
・風邪に対して 咳止めの医薬品(E)
痰切りの医薬品(F)
以上で6種類になります。持病のある方の場合は簡単に5種類を越えることができてしまいます。
日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」が参考とされ厚生労働省が2018年に作成した「高齢者の医薬品適正使用の指針 総論編」が作成されています。
具体的な内容は、高齢入院患者で薬剤数と薬物有害事象との関係を解析した報告では、6種類以上でリスクが増加していました。また外来患者で薬剤数と転倒の発生を解析した研究では、5種類以上で転倒の発生リスクが高かったことが示されていました。
有害事象以外に転倒にもポリファーマシーは影響する可能性があります。そのため、必要な薬剤かどうかをしっかり医師に判断してもらいながら治療を続けるようにしましょう。
ちょっと病気が重なるだけでもこんなに薬が増えるんだホ…!
医薬品を併用することによって効果増強を期待するケースもありますが、意図しない相互作用が生じる可能性があります。効果が強まりすぎてしまい副作用や毒性が生じるケース。減弱してしまい効果が発揮されないケースなど様々なことが考えられます。それぞれのケースについて具体例を踏まえて紹介します。
吸収を妨げるケースには便秘でよく使用される「酸化マグネシウム」が含まれます。日常的に服用している方も多いので注意が必要となります。薬物同士が結合し吸収されない場合や体内環境の変化により吸収されない場合などがあります。
代表例としては便秘・制酸剤などとして使われる酸化マグネシウムと抗生物質のクラリスロマイシンの併用があります。吸収が阻害されてしまうため効果が期待できません。対処法としては薬剤どちらか変更するか、数時間ずらしての服用が必要となります。
医薬品は代謝されることで排泄されます。代謝酵素が阻害されると代謝がされず、体内に薬が残ったままになってしまいます。
一方、代謝酵素が誘導されると効果減弱のリスクがあります。代謝が阻害される代表例は睡眠薬のスボレキサントと抗生物質のクラリスロマイシンの併用があります。クラリスロマイシンが睡眠薬の代謝を阻害することで効果が強く現れてしまう可能性があり、添付文書上は「併用禁忌」となっています。
また、代謝酵素を誘導する代表例には抗結核薬リファンピシンがあります。リファンピシンは医薬品の代謝に強く関わる代謝酵素を誘導するため、他の薬剤が代謝されてしまうため、併用する場合には注意が必要です。
身近な痛み止めにも注意が必要な場合があります。薬を体外に排出するのを妨げられることで体内に薬が残り、副作用を起こしてしまうことがあるので注意が必要なケースがあります。代表的な例には、抗リウマチ剤のメトトレキサートと痛み止めや解熱、抗炎症に用いられるNSAIDs(ロキソニンなど)の併用があります。メトトレキサートの腎排泄が阻害されることによって、腎機能の低下やメトトレキサートの副作用が強く現れてしまう恐れがあります。医師が意図的に処方している範囲内であれば問題ありませんが、痛み止めは市販薬にも存在するので注意が必要は組み合わせとなります。
薬局で薬をもらう際に「タバコは吸いますか?」「グレープフルーツジュースは飲みますか?」と質問されたことはありませんか?医薬品は食品や嗜好品の影響も受けることがあるため注意が必要です。
まず、タバコですが喫煙は代謝酵素を誘導します。気管支喘息などに使われるテオフィリンに影響することが知られており、期待した効果が得られない可能性があります。受動喫煙の場合も影響を受ける可能性があるので周囲の方の協力も重要です。
続いて、グレープフルーツジュースです。グレープフルーツジュースは代謝酵素を阻害する果実として有名です。添付文書に併用注意と記載されている医薬品は少なくありません。期待された効果が得られない可能性があるので注意してください。タバコもグレープフルーツジュースも治療に影響するので医師や薬剤師に確認された場合は適当に返答せずに教えてください。
しかし、これらはあくまで代表例となるので、他にも多数存在します。現在服用している医薬品がある場合は医師・薬剤師にお伝えするようにしてください。
忘れずに自己申告が必要だホ
きっちり服用して治療を受けているのに不用な薬が増えてしまう主な原因は「複数医療機関・診療科の受診」と「処方カスケード」が考えられます。別の病院やクリニック、薬局に行くのは悪いことではありません。「各診療科の先生にしっかり見てもらいたい。」「近くの薬局に行きたい。」と思うのは当たり前です。では、具体的にどのような理由から処方が増えてしまうのか紹介していきます。
1つ目のポリファーマシーに繋がるケースは「複数の疾病で様々な病院・薬局に通う」ことです。この場合に注意が必要なのが薬の重複と相互作用です。同じような薬が処方されることで効果(副作用)が強く出てしまうリスク。前述した相互作用が発生してしまうリスクがあります。しっかりと治療中の疾病や処方薬を医師に伝えているのであれば回避できることもありますが、正確に伝えるのは難しいかと思います。
重複してしまう理由の1つに同じ薬が様々な診療科で処方されるケースがあります。代表例として抗アレルギー薬です。花粉症の薬として内科から、鼻炎の薬として耳鼻咽喉科から、痒み止めとして皮膚科からといったように処方されるケースがあり、治療中の疾病について話をしない場合は重複のリスクが潜んでいます。
処方カスケードとは次のような流れになります。
(例)
・医薬品Aの副作用で便秘気味になる
↓
・症状改善のため他院で医薬品Bを追加
↓
・医薬品Bの副作用である吐き気・悪心が発現
↓
・症状改善のため…
医薬品の副作用を改善するために、医薬品が追加されていくような流れを「処方カスケード」と呼びます。
よくある有害事象には次のようなものがあります。
【主な有害事象】:ふらつき・めまい・物忘れ・気力低下・眠気・食欲低下・尿閉(おしっこがでにくい)・便秘など。
最初の医薬品Aを変更するだけで解決することもあります。かかりつけ医やかかりつけ薬局で治療中の疾患・使用薬を把握しながら治療を進めることがオススメです。
かかりつけ医を持つこともポリファーマシーを回避する手段の一つになりますが、調剤薬局でも実践できる回避方法があります。それは医薬品情報の「一元管理(お薬手帳の活用)」です。
大切なポイントは3つです。
①お薬手帳を1人1冊持つ
②複数薬局を利用する場合は必ずお薬手帳を提示する
③かかりつけ薬局を探し、毎回同じ薬局を利用する
①~③のどれか1つで構いません。実行してみてください。
最近では「マイナ保険証」が普及していますが、まだまだ「お薬手帳」の情報には敵わない状態です。
また、お薬手帳を病院・診療科ごとにお薬手帳を作っている方がいます。見やすいのは分かりますが、飲んでいる薬を1冊で分かるように分けずに1冊にまとめるようにしてください。
今回は、ポリファーマシーについて紹介しました。
医薬品は「5~6種類以上」から有害事象が生じる可能性があります。必要な薬を複数飲んでいるのであれば問題ありません。不安だからと言って、自己判断で薬を中断するのは危険です。必ず「医師」「薬剤師」に確認するようにしてください。
また、ポリファーマシーを回避するためにも「1人1冊お薬手帳」を作成してください。個人的ですが、アプリのお薬手帳よりも紙のお薬手帳の方が服用中の薬を医師や薬剤師も確認しやすいのでオススメです。
万が一に備えて、お薬手帳のシールや薬剤情報の書かれた紙をスマートフォンの写真に保存することも重要となります。
是非、皆様の「かかりつけ」にしても良いという信頼のおける病院・クリニック・薬局を探して一元管理できる環境を作ってみてください。
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