個人事業主のM&Aの進め方とは?目的や種類をわかりやすく解説! | ふくろう情報局 | 弁護士ねっと – きっと見つかる あなたの弁護士 –

Lawyers Column

2024.12.13

個人事業主のM&Aの進め方とは?目的や種類をわかりやすく解説!

M&Aのお勉強!

個人事業主にとって、自身が引退した後に事業をどうするのか、という点はいろいろと悩んでしまうポイントではないでしょうか。事業を畳むのか、それとも誰かに継いでもらうのか。事業の将来を見据え始めた経営者の方へ向けて、本記事では、事業継承の際に話題にのぼりがちな「M&A(エムアンドエー)」について、メリットやデメリット、さらには実際にM&Aを行う場合の流れなどを分かりやすく解説しています。ぜひご自身の事業継承・事業展開の参考にしてみてください。

まずは知るところから始めよう!

M&Aとは

そもそもM&A(エムアンドエー)とは、「合併」を意味する「Mergers」と「買収」を意味する「Acquisitions」の略称で「合併・買収」を意味し、一般には、2社以上の企業を一つに統合したり(合併)、ある企業が他の企業の株式や事業を買い取ったりする方法(買収)を指します。

M&Aの目的

M&Aを実施する目的は、主に以下の3つです。
・事業拡大
・新規参入
・後継者不足の解消

様々な理由からM&Aを実施することもありますが、お互いが何らかのメリットを享受できるような目的に基づいてM&Aが行われることがほとんどです。

お互いが気持ちよくM&Aを進められるようにしよう

事業拡大

M&Aの目的1つ目は、事業の拡大です。これは主に企業を買収する側のメリットになります。自社と同業の企業を買収した場合、その事業に対するノウハウや技術をより深く広く手に入れることができるので、市場内でのシェア拡大や事業のさらなる発展が見込めます。

また、他業種の企業を買収したケースでも、これまでとは違う分野へ業務を広げることが可能となるので事業拡大のチャンスになるでしょう。

新規参入

M&Aの目的2つ目は、新規参入が容易になることです。新規参入に関するコストは膨大なものになるので、自社でゼロから立ち上げるよりは、ある程度その事業で地位を持っている企業や、その事業に対するノウハウが蓄積されている企業を買収してしまった方がより効率的に新規参入を行うことが可能です。

後継者不足の解消

M&Aの目的3つ目は、後継者不足の解消です。この目的は主に、売り手企業(買収される)側が享受するメリットです。少子高齢化の影響や、「家業を継がない」・「継ぐのは必ずしも身内でなくてもよい」などのように社会全体で価値観が多様化していることもあり、後継者不足に悩む経営者が多く見られます。

「せっかく築き上げた事業を自分の代で終わらせたくないが、継ぐ相手はいない…」という悩みから、M&Aを選択する経営者も増えています。

M&Aの種類

M&Aには、一般に、以下のとおり多数の手法があります。

・合併(吸収合併、新設合併)
・買収(株式譲渡、株式交換、株式移転、第三者割当増資(新株引受)、事業譲渡)
・会社分割(吸収分割、新設分割)
・資本提携

もっとも、個人事業主のM&Aの場合には、個人事業主は法人格がないため、一般に「事業譲渡」の手法により事業を承継することになります。

また、個人事業主が事業を法人化(法人成り)して会社形態となり、株式譲渡などの手法で事業承継を行うといった手法も考えられます。

状況によって適切な方法で進めるんだホ!

事業譲渡

事業譲渡とは、事業の全部または一部を譲渡(売却)する手法です。事業譲渡では、契約に基づき譲渡対象となる事業(人材、設備や施設、権利(取引先や顧客)など)を選択して譲渡(売却)することができます。もっとも、事業譲渡の場合は、権利・義務を買い手へ引き継ぐためには、債権者、従業員や取引先などの個別に承諾を得た上で手続を進める必要があります。

事業の法人化(法人成り)

法人化(法人成り)とは、個人事業主として事業を行う人が会社を設立し、その事業を引き継ぐことです。

銀行口座や各種取引先との契約、国や自治体の許認可などは個人事業主として個人名義となるため、事業譲渡の場合には、各々の契約の引き継ぎや同意の取得、銀行口座の開設や許認可の取得や変更などの諸々の手続きが必要になります。

他方で、事業の法人化(法人成り)をすることで、例えば、株式譲渡などの手法により、銀行口座、契約や許認可などをそのまま引き継ぐなど事業承継を比較的スムーズに進めることが可能になります。

日本での状況

M&Aを視野に入れていても、実際日本でどれくらいの会社がM&Aを行っているのか気になるところですよね。ましてや、個人事業主でもM&Aの対象なのか不安になる人も多いはず。

しかし、結論から申し上げますと、日本内でのM&Aは活発であり、成約件数も増えているのが現状です。
・少子高齢化による後継者不足や人口の減少
・シームレスな人・モノの動きによる海外志向・海外展開が主流になったものの、日本国内のみで展開している(日本のみで展開せざるを得ない)ため事業が縮小している

これらの理由で、今後も日本でのM&Aの件数は増加すると見込まれています。

さらには、将来M&Aで買収されることで初期投資を回収することを目的として起業するスタートアップ企業も多く、ますますM&A市場は活発になるでしょう。

M&A市場が活発になれば、自社を売却する際により広い選択肢の中から売却先を選べることにもつながり、より満足度の高いM&Aの成約が期待できます。

M&Aを行う際の流れ【法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関に依頼する場合】

ここからは、実際に個人事業主がM&Aを行う場合の流れをご紹介します。M&Aの方法として、個人でつながりのある企業に直接依頼する方法もありますが、多くの場合は法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関を活用し、法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関からのアドバイスや情報をもとにより良い売却先を選定する流れが一般的です。

ここで紹介する流れはあくまでも一例となるので、実際にM&Aを行う際には一部流れが異なる可能性がありますが、『もしM&Aを行ったら…?』という際の参考としてぜひご覧ください。

方針を決める

M&Aの最初の一歩は、M&Aの方針や目的について考えることです。

・なぜM&Aを行うのか
・最低売却金額はいくらにしたいのか
・売却後の経営者、役員、従業員の待遇

など、どのようにM&Aを進めて、どのような結果になることを望んでいるのかを事前にまとめておくことで、その後のステップである相手探しや交渉を、スムーズかつ一貫性をもって行うことが可能になります。

方針を決める際、最も望ましいのは経営者の意向や考え、想いを反映させて決めていただくことですが、『1人では決めるのは不安…』といった場合には、次のステップで登場する法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関に相談しながら決めるとよいでしょう。

法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関に依頼する

M&Aの方針がある程度固まったら、個人事業主のM&Aを得意とする法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関に相談・依頼をしてみましょう。そもそも、M&Aは事業継承・事業発展のための手段の中の一つでしかないので、全員が全員、M&Aを行うことが最適というわけではありません。

そのため、経営者である自分が一番事業のことを分かっているとは思いますが、自分だけの判断より、数多くのM&Aに関する相談を受けてきたアドバイザーからの客観的な意見を聞いてみて判断するほうがより広い視野で自身の事業について考えることができるでしょう。

また、専門家に依頼することのメリットは、M&Aを決定した後の交渉の場面でも見られます。M&Aはひとつの事業・企業が動くため、当然のことながら金銭や権利などが絡んできます。

自分の希望する価格や条件に相手が納得してくれなかった場合、個人で直接やり取りをしていたら自分が買収先企業と交渉をしなければなりません。M&Aには専門的な知識や考えが必要になるので、あなた自身の負担軽減のためにも、専門家に依頼したほうがスムーズなM&Aが達成できるでしょう。

分からないことはプロに聞くのが一番だホ!

相手を選ぶ

M&Aの方針や法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関が決まったら、いよいよ相手探しのステップです。法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関から提案してもらうほか、今はM&Aを専門とするマッチングサイトもあるので、いろいろな場所でM&A先を見つけてみましょう。

相手を選ぶ際のポイントは個人によって様々ですが、基本的に以下のポイントを抑えておくことがおすすめです。

・相手先企業の事業規模や成長性、業績
・買収目的
・社風

事業継承・事業拡大を望んでM&Aを行ったにも関わらず、相手先の企業が倒産してしまったり思ったように事業の拡大が望めなければ、せっかく築き上げてきた事業が無駄になった気持ちになりますよね。

また、社風についてはM&Aの後の従業員の負担などに主に関わってきます。従業員を抱えた状態でM&Aを行う場合、新しい会社の社風があわないことが原因で従業員が辞職する事態になってしまっては、本来M&Aの先に望んでいた事業の拡大にも繋げることができません。

自分一人しか従業員がいない場合は社風は自分に合うかどうかで決めることができますが、複数の従業員を抱えている場合は、今の自社の雰囲気と似ているか、自社の従業員がM&A後も続けられそうかどうか、という点も経営者としてしっかりと見極めることが重要です。

社風の見極めも会社選びの重要ポイントだホ

基本合意

M&A先の会社を選んだら、続いて、M&Aの条件交渉に進み、必要に応じて、おおまかなM&Aの条件を含んだ基本合意書を取り交わします。基本合意書では、譲渡価格や譲渡スキーム(事業譲渡など)、従業員の処遇などM&A交渉において売主・買主間で取り決めた契約内容の骨子となる基本条件を合意事項とすることが一般的です。

買収側のデューデリジェンスの実行

『デューデリジェンス』(Due Diligence)は、簡潔に言うと自社の状況を買収先企業が調査するいうことです。

基本合意に至るまでにある程度の情報はお互いに得ている状態となっていますが、このデューデリジェンスで行われるのは、もっと深く詳細な調査です。「本当にこの企業を買収しても問題ないか?自社にデメリット・不利益をもたらす可能性はないか?」という買収先企業の不安を解消し、潜在的なリスクを正確に把握し適切な意思決定をするために、買収する企業が弁護士などに依頼して調査を行います。

デューデリジェンスが行われる場合、買収される企業側は必要な資料の提示や情報提供などで、調査に協力します。

条件交渉・契約の締結

デューデリジェンスが終了したら、デューデリジェンスの内容・評価をもとに最終的な売却金額やM&Aの条件を決定します。内容によっては法律の専門家や事業承継(M&A)サポート機関を挟んで交渉を行い、両者が買収価格や条件面で納得できたら、最終的な契約を結びます。

クロージング

M&Aにまつわる手続きが完了し、正式に経営権が移転し、譲渡対価の支払いを完了することを一般に「クロージング」と呼びます。クロージング以降は、M&Aの内容に沿って事業が継承・展開されていきます。

経営承継円滑化法による支援

事業承継には、様々な検討すべき事項がありますが、国は事業承継税制や経営承継円滑化法による支援、事業承継補助金を設けるなど事業承継を積極的に行うよう様々な対策や支援を行っていますので、これらを積極的に活用することをお勧めします。

サポート体制についても要チェック!

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M&Aで明るい未来を手に入れよう

後継者不在や事業の停滞など、経営をしているといろいろな問題に立ちはだかることも多いですよね。しかし、1人で何とかしようとするのではなく、他社と協力することでもっとよい形で事業を続けられることもたくさんあります。

M&Aと聞くと大ごとのような気がしてしまうかもしれませんが、日本でもポピュラーになりつつある今、賢い経営判断のために、まずは相談から始めてみてはいかがでしょうか。

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AZMORE国際法律事務所

松尾 裕介

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